世界的な原発回帰への対抗を訴える講演会が、2023年4月20日、東京都新宿区の飯田橋セントラルプラザにある東京ボランティア・市民活動センターで行われた。
冒頭で主催者であるATTAC Japan(首都圏)運営委員の稲垣豊氏が同団体の活動を紹介。ATTACは「市民を支援するために金融取引への課税を求めるアソシエーション」の英文頭文字で、アジア通貨危機の際、投機マネーへの課税の呼びかけがフランスでスタート。新自由主義的グローバリゼーションに抗する活動を進めている。
最初に講演した崎山比早子氏は、元国会東電福島原発事故調査委員会委員で、現在は3・11甲状腺がん子ども基金代表理事を務める。
崎山氏は、国会事故調の報告書で自身が訴えた、再稼働の資金や労力があれば、事故収束に使うべきという提言と、まったく逆のことが行われていると指摘した。
その上で、汚染水を止める重要性と方策、使用済み核燃料取り出しの難しさ、ペデスタル(原子炉圧力容器の土台)崩壊による原子炉・核燃料プール倒壊の危険性、汚染土再利用や汚染物焼却による汚染物質拡散の問題、甲状腺がんの検査の「過剰診断」という指摘への批判などを、詳しく論じた。
次いで講演したコリン・コバヤシ氏は、1970年に渡仏した造形作家で、反戦、反核反原発、反差別運動に関わり、現在フリージャーナリスト、著述家、映像作家として活動している。著書に『国際原子力ロビーの犯罪 チェルノブイリから福島まで』など。
コバヤシ氏は、「国際原子力ロビー」すなわち「原子力を推進しようとする世界の利益共同体」が、「チェルノブイリと福島事故の矮小化と否定」をしようと決断していると指摘した。そして、ロビーを構成するIAEA(国際原子力機関)、UNSCEAR(放射線影響に関する国連科学委員会)、ICRP(国際放射線防護委員会)、WHO(世界保健機関)・REMPAN(放射線緊急医療準備・支援ネットワーク)等が相互に関係して、原発推進に好都合な放射能防護の基準を決める有様を明らかにした。
また、チェルノブイリ後に始まった「放射能被曝受忍論」にもとづく隠蔽戦略「エートス・プロジェクト」を紹介した。このプロジェクトは、汚染地住民の自己責任に任せて治療をせず、居住し続けることを推進する事業で、福島県でも実施された。
さらに、フランスが核エネルギーを「国の誇り」とし、マクロン大統領が原発を推進する「原発大回帰」の様子を解説した。
続いて、高エネルギー加速器研究機構名誉教授の黒川眞一氏がコメントした。黒川氏は、福島事故当時の福島市中心部の放射線濃度に関して、モニタリングポストの実測データの100分の1の低いデータを示した、ATDM(大気拡散シミュレーション)の数値をもとに、UNSCEARが「福島の被曝線量は小さい」と過小評価したと指摘。また、福島でエートス・プロジェクトを進めた安藤量子氏の著書を引いて批判した。
次いで、福島県伊達市議会議員の島明美氏による、伊達市民の被曝データを使用した「宮崎早野論文」の捏造等の問題に関するコメントが代読された。
続いて、司会を務めたジャーナリストの藍原寛子氏が、自ら取材した福島事故後の国際原子力ロビーの動きについて発表した。
講演について、詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。