2020年9月21日(月)、午後2時かより、東京都江東区亀戸の亀戸文化センター(カメリアプラザ)にて、セブン-イレブン東大阪南上小阪(みなみかみこさか)店オーナーの松本実敏(みとし)氏とコンビニ関連ユニオン執行委員長であり、セブン-イレブン・ジャパン本部社員でもある河野正史氏、2名による記者会見が行われた。
2020年9月2日、公正取引委員会(以降、公取委)が実施したコンビニ各社の実態調査にもとづく報告書が発表され、大きな反響を呼んだ。この報告書は、コンビニオーナーに対する「24時間年中無休」の強制について「優越的地位の濫用」にあたり得る非常に大きな問題だと結論づけている。
また、この報告書では、ドミナント(特定地域に集中出店させる戦略)について、はじめて「『ぎまん的顧客誘引』および『優越的地位の濫用』に該当する場合がある」との画期的な見解が出され、さらには、コンビニ大手8社に対し、こうした問題について、自主的な改善を勧告しており注目を集めている。
会見の冒頭、河野氏は「労働組合として、この公取委の報告書をどういうふうに受け止め、どのように今後の活動に活かせばよいかについて考えており、この報告を活かすも殺すも、私たち現場の労働者の運動にかかっている。そのことを皆さんに知って欲しくて、会見の場を設けさせてもらった」と述べた。
河野氏はさらに、次のように語った。
「昨年の7月11日に東日本橋一丁目店のオーナーであった齋藤敏雄さんが自殺した。それを受けて、9月から毎月の月命日に、多くのオーナーさんや組合員を募って、東京の公取引委におもむき、本部の『優越的地位の濫用』や『欺瞞的顧客誘引』など、具体的な内容について、係官と面接をし、1年間ずっと話を進めてきた。
そんな中で、公取委は全国の1万5000店近いオーナーさんの生の声を300ページ近い報告書にまとめてくれた。公取委が本当にお店さん、オーナーさんの立場に立って、公正に調査をしてくれたことに感謝している」
次に、オーナーの松本氏から、現在、松本氏がセブン-イレブン本社と争っている訴訟の経過等について報告・説明があった。
この訴訟は、人手不足を理由に自店舗での深夜営業を中止した松本氏に対し、セブン-イレブン・ジャパンが店舗明け渡しを求める一方、松本氏は店主としての地位確認などを求めて争っているもので、8月14日に第1回口頭弁論が大阪地裁にて開かれている。
- 意見陳述要旨(コンビニ関連ユニオン)
松本氏は、「セブン-イレブン本部は、もう契約を解除したから『元オーナー』であると思っているが、まだ裁判は決着していないので、 私はまだ自分がオーナーであると思っている」とした上で、自身の裁判の経過と会見開催の目的を以下のように訴えた。
「現在、本訴と仮訴訟とが並行して進んでいる。仮訴訟の結審は終わっているが、まだ判決が出ていない状態で、その前に本訴の提訴が入り、第1回の裁判で私が陳述をし、それに反してセブンイレブン側も陳述を行った。
この裁判の勝ち負けが重要なのは当然のことだが、それよりも何よりも、私が今までやってきたことと、本部がやっていることと、すべてを公開していきたいと考えている。この裁判によって、本部がどのようにしてオーナーを潰していくのか、また、公式に潰すのか、圧力で潰すのかという点も含め、皆さんにこれからどんどん報告していきたい。このたびの会見もその報告の一部だ」
また、「公取委のこのたびの勧告について、これだけ話題になっていても、忙しいオーナーさんたちの中には、公取委が何を発表したのかまだ知らない人もたくさんいるのではないか」とも述べ、そうした現状について、SNSや手紙を使って、他のオーナーたちとの連絡網を構築したいとの考えを表明した。
続いて、各社記者との質疑応答となったが、IWJからは、第1回の裁判での松本氏の意見陳述の内容について、「セブン-イレブン本部社員による商品の無断、および過剰発注の現状」、そして、「コンビニの利用客(消費者)の実態」について、説明を求めた。
松本氏は次のように答えた。
「本部社員の無断発注については、今まであまり報道されてこなかったが、最近はよく報道されるようになった。私もオープンした当初、『おでんセール』というのがあり、『おでんセールにおでん3000個とって下さい。どこのお店もとってます』ということで、勝手に発注を入れられそうになって、結局その担当者を本部に言って変えてもらったことがあった。
私は昔から声を出していたので大丈夫だったが、これが本当に声を出さない人であれば、3000個取さられていると思う。
私たちオーナーの客は、普通にお店に来るお客さんだが、本部の客は誰なのかといえば、それはオーナーであり、店舗です。(中略)この慣行がなければセブン-イレブンもここまで発展していなかったかもしれない」
また、「本部からと同じような圧力が実はお客様からもある。私は本部にも声を出しますし、お客様にも従業員にも『ダメなものはダメ』とはっきり言う。そうすると、大概のお客様は『本部に言うぞ』となります。それで、『本部に言うぞ』となれば、今までのオーナーさんは多分、『申し訳ありません。言わないでください』と言って折れていたのだと思う。三波春夫の『お客様は神様です』という言葉が、『お客は何をしても許される』と曲解されており、私はそこにコンビニの闇が潜んでいると思っている」と持論を展開した。
8月14日の第一回裁判において、松本氏とセブン-イレブン側の陳述は真正面から衝突した。9月2日の公取委によるコンビニ各社の実態報告書の内容が松本氏の追い風となる可能性もあるが、今後の裁判の行方を注視していきたいと考える。