2020年7月13日(月)14時より、東京都千代田区の衆議院第2議員会館にて、「ヒト胚ゲノム編集について広範な研究者・市民の参加による討議の場を設置に関する要望書」提出後の報告及び記者会見が開催された。
冒頭、主催の神野玲子氏より、「『ヒト胚ゲノム編集について広範な研究者・市民の参加による討議の場を設置に関する要望書』は、ゲノム問題検討会議で出した。200名以上の方々の参道を得ている。本日は、ゲノム問題検討会議代表の島薗進先生、柳原病院の上林茂暢医師、そしてジャーナリストの天笠啓祐氏の3人で記者会見をさせていただく」と挨拶があった。
続いて、会見に訪れていた福島瑞穂参議院議員から、以下のような発言があった。
「ゲノム編集について、国会の色々なところで質問をしてきたが、結局、遺伝子組み換えとゲノム編集は別物であると厚生労働省は言っている。だが、その境界線については回答もないままである。
ゲノム編集に関する『表示』についても、強制ではなく、厚生労働省も消費者庁に対し、一万歩譲ってゲノム編集を認めるとしても、その表示を義務化するべきだという話もうまく通っていない。
ゲノム編集食品の流通をどうやって止めるか、ゲノム編集についてどうやって多くの人に知ってもらうのか、先生方、皆さんと一緒に頑張っていきたい」
続いて島薗進氏が次のように、参加者の意識喚起をうながした。
「2012年に、クリスパー・キャス9 というゲノム編集の新しい方式が採用され、従来よりもはるかに容易にゲノム編集ができるようになって以降、現在、動植物のほうのゲノム編集も急速に展開しており、ゲノム編集を施した食品というものがすでに市場に出回っている。
これをこのまま放っておいていいのかという大きな問題がある」
また、上林茂暢氏は、ゲノム編集について、2つの問題点を強調し、その1つ目として、「生物系の技術は、一般の工学系の技術に比べ、安全性についての議論がもっとシビアになされなくてはならない」と述べた。
その上で上林氏は、次のように指摘した。
「科学的な認識の段階では問題は起こらないが、何か物理的な操作を行うとなると、生命というのは非常に多くの因子が相互に複雑に絡み合っているため、それが時間とともに変化する。そしてゲノムの場合、その変化は将来の世代に及ぶ。
それが一般の工業技術とは違う」
上林氏は2つ目の問題点として、「ゲノム編集技術がもたらす予想外の問題は、人間生活と社会との接点で起こるということ。つまり、ゲノム編集によって、『家族』などの従来の人間生活に変化がもたらされる」と訴えた。
さらに、天笠啓祐氏からも2つの重要な問題点が指摘された。
一つは、「ゲノム編集技術が誕生して以降、この技術の影響を一番受けているのは一般市民であり、その市民の意見が聴かれる場もない。つまり、無視されている」ということ。
そして、もうひとつは「オン・ターゲット(ゲノム編集で切断して遺伝子を壊す箇所)の問題であり、編集で壊された遺伝子の周辺で大きな変化が起きているが、「人間の受精卵を使った研究で、オン・ターゲットの異常を示したケーズが実は半分もあった。つまり、『新しい技術は新しい問題を生む』」ということだ。