国会が内閣の監督機関になるのか? それとも下請け機関になるのか? 立憲主義の存立かけて小西洋之参院議員が国を相手取り「憲法53条違憲国家賠償等請求訴訟」を東京地裁に提訴! 2018.9.14

記事公開日:2018.10.8取材地: テキスト動画
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(取材・文:上杉英世)

 9月14日午後3時30分、小西洋之参院議員が、「憲法53条違憲国家賠償等請求訴訟」を東京地裁に提訴した。午後3時45分からは、司法記者クラブで記者会見が行われ、原告の小西議員と、弁護団から伊藤真弁護士、賀川進太郎弁護士、星野大樹弁護士が出席した。

 昨年の6月に野党が臨時国会召集を要求したにもかかわらず、安倍内閣がそれを3ヶ月以上も放置したことが、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」とうたった憲法53条に違反するとして、今年に入って、すでに二つの訴訟が提起されている。

 2月26日には、立憲民主党の高井崇志(たかし)衆院議員が原告となり、国に対し110万円の損害賠償を求めて、岡山地裁に提訴した。

 続いて5月28日には、伊波洋一参院議員、糸数慶子参院議員、現在は沖縄県知事選を闘っている玉城デニー衆院議員ら、5人の沖縄選出国会議員が、同上の件を憲法違反であるとした上で、「20日以内に国会を召集する義務がある」ことを国に対して確認する訴訟を那覇地裁に起こしている。

 今回の訴訟の弁護団に加わっている賀川弁護士は、2月に提起された岡山での訴訟の担当弁護士でもある。その賀川弁護士が、岡山地裁ですでに始まっている公判について、報告をおこなった。賀川弁護士によると、国側は「憲法53条後段には、(臨時国会召集の)法的義務はない」と主張しているほか、「高度な政治的判断は司法の場になじまない」という、統治行為論を持ち出して、原告の主張に対して正面から争うことを避けているという。

 賀川弁護士の報告を受けて伊藤弁護士は、「統治行為論は、世界各国ではすでに過去の遺物となっている」として、統治行為論を国側が持ち出してきたことについて、「実は『しめしめ』と思っている」「その欺瞞性を、法廷の場で真正面から争える」と、法廷での論争に強気の意欲を見せた。

 岡山、沖縄に続き、3番目の訴訟の原告として立ち上がった小西議員は、「集団的自衛権を行使できる」とした安倍政権の根拠が、「個別的自衛権を認めた『昭和47年政府見解』の、恣意的な読み替え」であることを暴露するなど、安倍政権の進める憲法破壊に対し、真正面から論陣を張って闘い続けてきた。

 また「イラク日報隠蔽問題」や森友疑惑に関しても、小西議員は省庁の組織的隠蔽への鋭い追及をおこなってきた。4月には、その小西議員に対し、現役自衛官幹部が「国民の敵!」と罵倒するという事件も起きている。

 今回の提訴の根拠となる憲法53条後段の、内閣に臨時国会の召集義務を課した条文について、小西議員は「国会が内閣の監督機関になるのか、それとも内閣の下請け機関になるのか、その分水嶺というべき条文だと思う」と語った。

 そして「国会においては、私たち野党議員は、安倍総理を監督する立場にある。つまり、国民の信託を受けて、内閣の行政運営が適切であるかどうかを監督する立場にある」と強調した。内閣の恣意的な判断で臨時国会が召集されないということは、国会議員としての仕事ができないということであり、日本の議会制民主主義と立憲主義の存立をかけて提訴に及んだと、決意を述べた。

 岡山、那覇に続いて東京で訴えを起こしたことについて、賀川弁護士は、国民の不断の努力での憲法保持をうたった憲法12条を引き合いに出し、「放置していたら、憲法の理念はどんどん侵害されてしまう。ひとつでも多くの裁判所で、違憲訴訟がおこなわれたらいいと思う」と述べた。

 今回、小西議員が提訴した「憲法53条違憲国家賠償等請求訴訟」には、一票の格差を根拠に2017年衆院選の無効を訴えた「一人一票裁判」を伊藤真弁護士と共に闘った、久保利英明弁護士と升永英俊弁護士を含む、7名の弁護士が弁護団を結成して臨む。

 公文書改竄という犯罪に手を染めていたことまで発覚しながらも、国会での森友疑惑追及から逃げ切り、自民党総裁選でも安倍総理の勝利がほぼ確実視されるなど、安倍政権は、事実上の独裁政権と化しつつある。

※9月20日に自民党総裁選の投開票がおこなわれ、安倍晋三氏が自民党の第25代総裁に決定し、第4次安倍改造内閣が10月2日に発足した。

 なお9月7日には、元参議院議員・平野貞夫氏と山口紀洋(としひろ)弁護士が、「日本の権力を私物化するために、国の統治機構を破壊し、憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として、現憲法からその根本的原理を抹消することを策謀した」として、安倍総理を内乱予備罪で刑事告発した。

 政権への包囲網を形成するかのような、各地での憲法53条違憲訴訟、そして内乱予備罪での現役総理への刑事告発。安倍「独裁」政権に抗するこれらの法的反撃に、IWJは注視していきたい。

 なお、小西洋之議員に対しては、これまでに岩上安身が何度もインタビューをおこなっている。下記記事も、ぜひ御覧いただきたい。

■ハイライト

  • 会見者 小西洋之氏(原告、参議院議員)/伊藤真氏(弁護士)/賀川進太郎氏(弁護士)/星野大樹氏(弁護士)
  • タイトル 「憲法53条違反国家賠償請求訴訟」提訴に関する記者会見 ―原告:小西洋之参議院議員、弁護団:伊藤真、升永英俊、久保利英明弁護士ら
  • 日時 2018年9月14日(金)15:30〜(東京地裁入廷)/15:45〜(記者会見)
  • 場所 東京地方裁判所前/東京霞が関・司法記者クラブ(東京都千代田区
  • 告知 今井一氏ツイート

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「国会が内閣の監督機関になるのか? それとも下請け機関になるのか? 立憲主義の存立かけて小西洋之参院議員が国を相手取り「憲法53条違憲国家賠償等請求訴訟」を東京地裁に提訴!」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    国会が内閣の監督機関になるのか? それとも下請け機関になるのか? 立憲主義の存立かけて小西洋之参院議員が国を相手取り「憲法53条違憲国家賠償等請求訴訟」を東京地裁に提訴! https://iwj.co.jp/wj/open/archives/431412 … @iwakamiyasumi
    国の根幹を問う一大事。これを報じない大手メディアは報道機関か、政府広報か。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1049420331746656256

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