「核抑止というものは『神話』にすぎないと思います」――。
国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN<アイキャン>)のベアトリス・フィン事務局長は、国会議員との討論集会「核兵器禁止条約と日本の役割」の中でそう断言した。
この集会は2018年1月16日、東京都千代田区の衆議院第一議員会館にて行われ、フィン事務局長の他、佐藤正久外務副大臣と、与野党あわせて10の政党・会派からそれぞれ代表の国会議員が出席し意見を述べた。
トランプ大統領と金正恩委員長が、核攻撃をちらつかせてお互いに挑発し合うなど、世界は今「キューバ危機以来の緊張」とも言われるほど、核戦争の脅威が叫ばれている。日本に対しても在日米軍基地や原発施設への攻撃の可能性が指摘されているが、フィン事務局長はこの集会で、核兵器は戦争の抑止につながらないと繰り返し訴えた。
▲衆議院第一議員会館にて行われた討論集会「核兵器禁止条約と日本の役割」
核廃絶を訴えるICAN事務局長の面会を断った安倍総理 「憲法9条は核の保有も使用も禁止していない」と閣議決定も!
ICANは、2017年7月に国連で122カ国の賛成多数で採択された「核兵器禁止条約」の成立に尽力したとして、2017年のノーベル平和賞を受賞した。
この核兵器禁止条約は、核兵器の全面廃止と根絶を目標に、史上初めて核兵器の使用や威嚇などを法的に禁じたものだが、核保有国とアメリカの「核の傘」に依存する日本や韓国、NATO諸国などが不参加を表明した。
フィン事務局長は来日中、安倍晋三総理との面会を求めていたが、安倍総理は日程の都合を理由に会おうとしなかった。このため、広島・長崎の被爆者らからは「がっかりした」、「大変残念だ」などと落胆の声が上がった。
もともと、安倍総理は国会などで「核なき世界」を実現すると発言しているが、その一方で、2016年4月には『憲法9条は一切の核兵器の保有および使用をおよそ禁止しているわけではない』と閣議決定するなど、核廃絶とは明らかに矛盾する言動を行ってきた。
「核抑止というものは『神話』にすぎない」!「核軍縮のリーダーになる偉大な機会」!~ICAN ベアトリス・フィン事務局長
安倍総理は核兵器禁止条約について、「我が国のアプローチと異なるものであることから、署名、批准を行う考えはない」として、世界で唯一の戦争被爆国であるにも関わらず、この条約への署名を拒否している。
こうした日本の姿勢に対して、フィン事務局長は「日本にとって、核軍縮のリーダーになる偉大な機会だと思います。(中略)核戦争の人的、経済的、社会的コストを直接知る唯一の国だから、まさに日本こそが道徳的権限を持っているのだと思います」と述べ、核兵器禁止条約の署名を強く呼びかけた。
東京での日程に先駆けて、広島と長崎を訪問し被爆者らと交流したフィン事務局長は、その印象を次のように語った。
「これらの都市(広島、長崎)において、私たちは人類が成し得る最大の悪を見ました。しかし一方で、その記憶を引き継いでいらっしゃる方々、そしてその決意と情熱を見ました。これは人類ができる最大の善だと思っています。これらの都市を『破壊の都市』から『希望の都市』へと転換した努力に誇りを持っていただきたい」
▲ベアトリス・フィン事務局長
フィン事務局長は、北朝鮮の核開発が進む現状を「非常に危険な状態です。日本にも現在、核攻撃の照準が定められている」とした上で、「今まで、核抑止では北朝鮮の核開発は阻止できませんでした。つまり、核抑止というものは『神話』にすぎないと思います」と述べ、北朝鮮の核の脅威に対して、核抑止で対抗していくのではなく、「核兵器を禁止していくことが重要である」と強調した。
また、フィン事務局長は、核廃絶に向けて新たな流れが出てきているとして、世界の動向を次のように述べた。
「核兵器禁止条約が実際に批准されますと、核兵器保有国に対しても大きな影響を与えることになります。安全保障を核兵器に依存することは、『恥ずかしいこと』という流れになってきている」
その上で、「核兵器を非合法化していくことが、これからの世界の流れになっていくと思います(中略)核兵器禁止条約は将来に向かっての日本の道筋だと思います」と指摘した。
「核廃絶という崇高な目的を掲げるものであっても、この条約に参加すれば、米国による核抑止力の正当性を損なう」!~佐藤正久外務副大臣
こうしたフィン事務局長の指摘に対して、佐藤正久外務副大臣は日本政府の基本的な立場として、「核兵器禁止条約が目指す『核廃絶』というゴールは共有している」とした上で、日本政府が核兵器禁止条約に署名しない理由を次のように説明した。
「核兵器禁止条約が、いかに核廃絶という崇高な目的を掲げるものであっても、この条約に参加すれば、米国による核抑止力の正当性を損なうことにもつながります。これは日本国民の生命や財産が危険にされても良いということと同じと考えています。日本政府としては、我が国のアプローチと異なる核兵器禁止条約に署名することはできません」
▲佐藤正久外務副大臣
また、北朝鮮が「核で日本を沈める」などと挑発している現状をふまえて、「我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しい」と強調した上で、「日米同盟のもと、米国の抑止力の維持は不可欠であると考えております」と述べ、フィン事務局長が「神話」と呼んだ、米国の「核の傘」による安全保障政策を、日本政府としては堅持する考えを示した。
自民・公明・希望は条約への署名に慎重意見! 自民・武見政審会長「抑止力を含めた我が国の防衛体制を整えないと、国民の命を守れない」
続いて、各政党の代表者から発言が行われた。初めに自民党の武見敬三参議院政策審議会長から発言があった。
ノーベル平和賞ICAN事務局長が国会議員と集会 「核抑止力で北朝鮮の核開発は阻止できなかった!核抑止は『神話』である!」~ベアトリス・フィンICAN事務局長来日~討論集会「核兵器禁止条約と日本の役割」 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/409712 … @iwakamiyasumi
核の傘から抜け出たときが日本の独立の始まり。
https://twitter.com/55kurosuke/status/958221544995528704