「合意ではありません。要望を、それぞれが受け止めたことになりますので」――立憲民主党・福山哲郎幹事長の「野党共闘」に対する歯切れは悪かった。
2017年10月7日、東京・大手町の会議室で、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)」が、立憲民主党、日本共産党、社民党の3党に「衆議院議員総選挙における政策要望書」を手渡した。10月22日投開票の衆院選へ向けて、市民と野党4党(民進、共産、自由、社民)の共闘を進めていた市民連合が、一連の民進党の解体と自由党の分裂を受け、あらためて3党に市民と野党の共闘を要請したものだ。
共闘に積極的な共産・社民両党は、すでに候補者の一本化に向けて合意ずみ。しかし、希望の党から出馬する「かつての仲間」に対する遠慮、あるいは支援の約束を取りつけた連合への配慮からか、福山幹事長からは「共闘」への前向きな言葉は出なかった。福山幹事長は、立憲民主党への参加表明会見でも、「希望の党へ行った仲間も応援したい」と発言している。
立憲民主党は、元民進党の候補者が出馬を予定する選挙区には候補者を立てていない。福山幹事長はこれを「枝野原則」と呼び、「各政党が選挙に際してどう候補者を立てるかは、それぞれのご判断ですから」と繰り返した。
その一方で共産党は、前述の社民党との合意に加え、立憲民主党候補者の出馬予定選挙区から自党の候補予定者を取り下げることを表明。結果、248の小選挙区で「野党共闘」(あるいは連携)の構図ができあがった。
市民連合の山口二郎・法政大学教授は、「共産党がそういう英断をしてくれたので、『野党協力による候補者一本化ができた』と市民には受け取れる。政党側はそれぞれ高次の政治的判断で、なるべく候補者を絞るという努力をした結果だ」と、評価した。
市民連合は、今回の総選挙で自民、公明、希望、維新を「与党とその補完勢力」と位置づけ、これら改憲勢力が3分の2以上の議席を占めることに危機感を抱いていると表明。改憲勢力側が選挙公約に「9条改憲」を打ち出していることから、各党への質問も憲法9条に集中した。
9条と並び、あるいはそれ以上に危険な「緊急事態条項」については、まだまだその危険性が浸透しているとは言い難い。市民連合の「政策要望書」にも「9条・安保法制・共謀罪」についての文言はあるが、緊急事態条項への言及はない。IWJが「緊急事態条項」について質問をしても、社民・吉田忠智党首は、自民党の選挙公約の中に「緊急事態対応」(「緊急事態条項」から名称を変更)が盛り込まれていることを認識してもいなかった。
また、共産党小池書記局長は、「9条よりも、ということではなく、9条と並んで危険性はある」と答えるにとどまった。
IWJは、「緊急事態条項」の危険性について繰り返し報じてきている。ぜひ、以下のページをご確認いただきたい。
「各党それぞれの高次な政治判断により」!? 248小選挙区で候補者一本化に成功!!「9条改憲阻止」の一方「緊急事態条項」の危険性は浸透せず!? http://iwj.co.jp/wj/open/archives/400181 … @iwakamiyasumi
緊急事態条項こそが本丸なのに、なぜ気付いてくれないのか?
https://twitter.com/55kurosuke/status/916579058602803201