「今は戦争の渦に巻き込まれるかの境目だ」〜『あしたのジョー』ちばてつや氏も「共謀罪」に危機感!沖縄ではすでに共謀罪が先取り!?〜日本ペンクラブのシンポジウムで表現者らが警鐘! 2017.4.7

記事公開日:2017.4.24取材地: テキスト動画
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(文:原佑介)

 政府与党がゴールデンウィーク明けにも衆院通過を目指す共謀罪法案(テロ等準備罪)。衆院法務委員会での審議が始まり、回を重ねるごとに同法案の「ボロ」が出始めている。

 これまで政府は「一般の人は処罰対象にならない」と繰り返し強調し、正当性をアピールしてきたが、2017年4月21日の衆院法務委員会では、盛山正仁法務副大臣が「一般の人が(共謀罪の捜査の)対象にならないということはないが、ボリュームは大変限られたものになる」などと述べ、一般人が処罰対象になることを認めた。

 また、20日に放送された『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)のコーナー「そもそも総研」では、自民党法務部会長を務める古川俊治参院議員が共謀罪法案について、「テロなんて言ってませんよ、この法律だって」「いろんな意味でですよ、テロだけじゃないですね」と断言し、政府が名づけた「テロ等準備罪」が建前に過ぎないことを告白している。

 何のために必要なのか、立法事実さえ明らかでないこの法案。国会審議が始まったというのに、いまだに処罰対象も曖昧なままだ。このままでは「平成の治安維持法」と呼ばれるこの法案が、国民の人権を侵害し、監視社会を招く懸念は拭えない。

▲日本ペンクラブ主催「共謀罪は私たちの表現を奪う」の登壇者たち

 4月7日、東京都・文京シビックセンターで日本ペンクラブがシンポジウム「共謀罪は私たちの表現を奪う」を開催。日本ペンクラブ会長の浅田次郎氏や漫画家のちばてつや氏らが登壇し、表現者の立場から共謀罪法案の危険性を訴えた。

■ハイライト

  • 発言 浅田次郎氏(作家、日本ペンクラブ会長)/雨宮処凛氏(作家)/内田麟太郎氏(絵本作家、日本児童文学者協会理事長)/江成常夫氏(写真家)/金平茂紀氏(テレビキャスター)/香山リカ氏(精神科医、作家)/ちばてつや氏(漫画家)/長谷部恭男氏(早稲田大学教授、立憲デモクラシーの会)/森絵都氏(日本ペンクラブ常務理事、作家)/ビッグ錠氏(漫画家)/森達也氏(作家、映画監督)/田近正樹氏(日本雑誌協会人権・言論特別委員会、日本書籍出版協会出版の自由と責任に関する委員会)/山口勝廣氏(写真家、日本写真家協会専務理事)/中島京子氏(作家)
  • 司会 山田健太氏(日本ペンクラブ常務理事・言論表現委員会委員長)
  • タイトル 共謀罪は私たちの表現を奪う
  • 日時 2017年4月7日(金)18:30〜20:30
  • 場所 文京区シビックセンター(東京都文京区)
  • 主催 日本ペンクラブ

第一次世界大戦は「言論や表現の自由が制限された頃から戦争が始まった」日本ペンクラブ・浅田次郎会長が訴える

 『蒼穹の昴』や『壬生義士伝』などの作品を著書に持ち、『鉄道員(ぽっぽや)』では直木賞を受賞した小説家の浅田次郎氏は、この日のシンポジウムで、ペンクラブの成り立ちについて語った。

▲日本ペンクラブ会長・浅田次郎氏

 「第一次世界大戦が終わり、なぜ戦争が始まったかを考えたとき、言論や表現の自由が制限された頃から戦争が始まったのではないか、という考えが生まれた。ペンクラブは、『これからは平和のために言論・表現の自由を守っていこう』ということで世界中にできあがった組織です」

 そのうえで浅田氏は、「共謀罪は日本ペンクラブには看過できない大問題だ」と訴える。

 「人間には命があり、いずれ死ぬ。しかし、作った法律は死なない。法律を作った人たちが『きちんとやっていく』といくら言っても、人間が死ねば法律が生き残り、私たちの子や孫の代にどう使われるかはまったくわからない」

 浅田氏は共謀罪の恣意的な運用や拡大解釈への懸念を示し、「今の国会(での議論)が大切だ」と注視を呼びかけた。

共謀罪は特別危険な法律!「報道特集」金平茂紀氏、「沖縄で起きていることは共謀罪を先取りした予行演習だ」

 「共謀罪は、長い記者生活でも特別危ない法律だと肌身で感じている」

 TBS『報道特集』のメインキャスター・金平茂紀氏も共謀罪法案を強く警戒する。

▲TBS『報道特集』メインキャスター・金平茂紀氏

 共謀罪法案は捜査機関に「フリーハンド」を与え、監視社会を招く。そう指摘する金平氏は、「言論の自由、報道の自由が侵される可能性は十二分にある」と述べ、中央公論や朝日新聞社などの言論・出版関係者約60人が「ソ連に友好的だ」などとして治安維持法違反で逮捕された「横浜事件」について、「他人事ではない。繰り返してはいけない」と警鐘を鳴らした。

 さらに金平氏は、沖縄の米軍基地反対運動のリーダー・山城博治氏が鉄線を切った容疑で逮捕され、152日間にわたって拘束されていた事件に言及する。

 「この逮捕と同時に、全国の10数カ所で家宅捜索が行われた。警察はPCや携帯電話、ハードディスクなどの記録機器を一斉に押収した。交信記録を調べ、誰とどれくらい連絡をとっているかを読み取って、今、山城さんの裁判の証拠として提出している。つまり、運動は『山城を首謀者とする一大犯罪集団だ』というイメージが頭でできあがっている」

 金平氏は、「沖縄で起きていることは共謀罪を先取りした予行演習だ。息苦しいどころじゃない」と断じた。

 山城氏は2017年4月19日、東京の参議院議員会館で市民集会に参加し、「私の起訴状には『共謀』という言葉がいっぱい出てきている」と明かしている。IWJのアーカイブをご覧いただきたい。

「今は戦争の渦に巻き込まれるかの境目だ」〜『あしたのジョー』ちばてつや氏も危機感を表明!

 日本漫画家協会理事長で『あしたのジョー』などを代表作に持つ漫画家・ちばてつや氏は、表現弾圧に対して危機感を募らせる。

▲日本漫画家協会理事長で『あしたのジョー』作者、漫画家・ちばてつや氏

 ちば氏は現在、文星芸術大学(栃木県宇都宮市)で教授として学生に漫画を教えているが、「ここ数年は漫画、アニメーションなどが取り締まり対象の先鋒になっている」と話す。

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