アジア全域で2000万人という膨大な犠牲者を出した、日本の侵略戦争。このアジア・太平洋戦争は、「大東亜共栄圏建設のための聖戦」という嘘にまみれた「大義」を掲げつつ、それに反して、戦果を極端に水増し、悲惨な「全滅」の事実を隠蔽するという、嘘とデタラメにまみれた戦争だった。
この嘘とデタラメの中心を担ったのが、戦時中に大日本帝国が行っていた大本営発表である。著述家で近現代史研究者の辻田真佐憲氏による最新刊『大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争』(幻冬舎新書)は、「プロパガンダの究極形態」とも言うべき、この大本営発表の知られざる実態に迫った一冊だ。
2016年11月25日、岩上安身は「プロパガンダの研究シリーズ」の一環として、辻田氏に2回目となる単独インタビューを敢行。大本営発表の実態について詳しく話を聞いた。
- インタビュー 辻田真佐憲氏(文筆家、近現代史研究者)
- タイトル 岩上安身による『大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争』著者・辻田真佐憲氏インタビュー
- 日時 2016年11月25日(金)16:00〜
- 場所 IWJ事務所(東京都港区)
「皇軍の神髄を発揮せんと決意し、全力を挙げて壮烈なる攻撃を敢行せり」――悲惨極まりない全滅を「玉砕」という美談に捏造した大本営発表
日米の戦局が完全に逆転した1942年6月のミッドウェー海戦を機に、大本営発表のデタラメさは加速度を増してゆく。そして最終的には、敵空母の撃沈数では73隻(約7.6倍)、敵戦艦の撃沈数では39隻(約10.75倍)もの水増し発表が行われた。
1943年5月12日、アリューシャン列島にあるアッツ島の日本軍2,600人が、上陸してきたアメリカ軍に突撃を行い、全滅した。大本営発表は、この悲惨な全滅を「玉砕」と言い換え、まるで美談であるかのように喧伝したのである。アッツ島「玉砕」に関する大本営発表は、以下のようなものだった。