米退役軍人の会(VFP)メンバーが南スーダンへの「駆けつけ警護」に警鐘 「(戦地では)いったい誰が味方なのか、誰が敵なのかを判断することは非常に難しい」 2016.11.19

記事公開日:2016.12.9取材地: テキスト動画
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(取材・文:須原拓磨)

 南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)で、「駆けつけ警護」の任務が新たに付与された陸上自衛隊派遣部隊の先発隊が11月20日、青森空港を出発した。IWJは、当日行われた壮行行事と出発の模様を中継したので、以下のURLからぜひ御覧いただきたい。

 この出発前日の19日、永田町の議員会館前では、「安倍政権の暴走止めよう!自衛隊は戦地に行くな!11・19国会議員会館前行動」と題し、南スーダンへの派兵に反対する抗議集会が行われた。

■ハイライト

  • 国会議員からの挨拶 民進党/日本共産党/社会民主党/自由党
  • 市民団体などの挨拶 ベテランズ・フォー・ピース (Veterans For Peace, VFP)/山田正彦氏(TPP阻止国民会議、元農林水産大臣)/田中さちお氏(沖縄一坪反戦地主会関東ブロック)/川上詩郎氏(日弁連憲法問題対策本部、弁護士)/元山仁士郎氏(高江のヘリパッド建設に反対する若者有志の会)/志葉玲氏(ジャーナリスト)/さようなら原発1000万人アクション/安全保障関連法に反対する学者の会/エキタス (AEQUITAS)
  • 行動提起

民進党・初鹿明博衆院議員「PKO参加5原則自体を見直さないと、自衛隊員の安全は守れない」

 民進党の初鹿明博・衆院議員は、「PKO参加5原則(※)、明らかに私は壊れていると思います。今の状態で停戦合意がされているというんだったら、PKO参加5原則自体を見直さないと、自衛隊員の安全は守れない」と安倍政権を非難。「国連の職員を襲っている、それは政府軍の側ですよ。政府軍にむかって駆けつけ警護で、日本の自衛隊が武器を持って攻撃するんですか、防護するんですか。そうなったら、それは『戦争』と言うんですよ」と憤りを示した。

※(注)PKO五原則

1)紛争当事者の間で停戦合意が成立していること(→実際には、合意は事実上破綻、南スーダンは内戦状態)
2)当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊へのわが国の参加に同意していること。
3)当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
4)上記の基本方針のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は、撤収することができること。
5)武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。

▲民進党の初鹿明博・衆院議員

▲民進党の初鹿明博・衆院議員

 南スーダン政府軍による残虐な殺戮、レイプ、強奪事件については、IWJが追跡検証レポートとして報じているので、参照されたい。

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米退役軍人の会(VFP)メンバーが語る戦地のリアル「たくさんの普通の家庭を襲撃した。その時の高齢者や女の子たちの叫び声が、今でも耳に残っている」

 この抗議行動には、米退役軍人の会・ベテランズ・フォー・ピース(VFP)のロバート・ファニング氏とマイケル・ヘインズ氏が登壇。ファニング氏はアフガン戦争へ、ヘインズ氏はイラク戦争への従軍経験を持つ。

 9.11の数ヶ月後、陸軍に志願したというファニング氏は、「私たちは、『自由と民主主義のために戦っている』と教えられました。しかしながら、現地で私がみたこと、私がやっていたことは全く逆でした」と、当時を振り返った。

▲VFP(米退役軍人の会、ベテランズ・フォー・ピース)のロバート・ファニング氏

▲VFP(米退役軍人の会、ベテランズ・フォー・ピース)のロバート・ファニング氏

 ファニング氏は、「9.11以降、戦闘で亡くなった方々のほとんどは、まったく戦争に関係のない一般市民の人たちでした」と話し、「アフガン戦争で目の当たりにしたのは、どうしようもないほどの極貧の状態。つまり、今現在、南スーダンの人たちがおかれている状況とそっくりだったんです。(戦地では)いったい誰が味方なのか、誰が敵なのかを判断することは非常に難しい」と、戦場の悲惨さを訴えた。

 「大量破壊兵器を阻止すること」、「テロリズムと戦うこと」を目的に、イラク戦争の現場へ向かったというヘインズ氏は、「皆さんご存知だと思いますが、そのどちらも嘘だったんです」とスピーチ。「たくさんの普通の家庭を襲撃した。その時の高齢者や女の子たちの叫び声が、今でも耳に残っています。夜、寝ようとすると、その叫び声が耳に響いてきます」と、イラク戦争への従軍がもたらした「傷あと」を赤裸々に語った。

▲VFP(米退役軍人の会、ベテランズ・フォー・ピース)のマイケル・ヘインズ氏

▲VFP(米退役軍人の会、ベテランズ・フォー・ピース)のマイケル・ヘインズ氏

 重ねてヘインズ氏は、「私は、自衛隊は今、南スーダンにいるべきではないと思います」と主張。「PKO5原則は、全て無視されています。停戦協定など存在しません。300人ほどの自衛隊が20人ほどの邦人を保護するために、南スーダンに送られています。その20人を先に避難させるのが、よろしいのではないでしょうか」と、自衛隊の南スーダンへの「駆けつけ警護」実施を厳しく批判した。

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