【IWJ追跡検証レポート・後編】反政府軍のみならず政府軍がレイプ・略奪・殺戮の南スーダン! 隣国では国連平和維持軍までが住民にレイプを! 「駆けつけ警護」で自衛隊は何を守り、誰と戦うのか!? 2016.11.18

記事公開日:2016.11.18 テキスト独自
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(文:本田望、城石エマ 記事構成・文責:岩上安身)

 「戦争ビジネスに加担している銀行は、名指ししてはずかしめていく」

 米人気俳優のジョージ・クルーニー氏が、南スーダンの情勢に危機感を表明している。その姿が、世界中の注目を集めている。

 サルバ・キール大統領派とリエク・マシャール元副大統領派との対立が続く南スーダンは、2013年12月以来、事実上の「内紛」状態にある。この内紛で数万人が犠牲になり、兵士によるレイプ、略奪、暴行が後を絶たない。

 2015年8月26日には、キール大統領とマシャール元副大統領とのあいだで和平合意が締結された。しかし、2016年7月には首都のジュバで大規模な武力衝突が発生し、JICA(国際協力機構)関係者93名がチャーター機でケニアに退避する事態に発展した。正確な数字は公開されていないものの、この衝突によって、市民を含む百数十人から数百人が死亡したという。

 「和平合意」は事実上破綻したも同然である。なぜ南スーダンの情勢は、ここまで悲惨さを極めるのか。

 2016年9月12日、ワシントンで記者会見を開いたクルーニー氏らは、自身の立ち上げた調査団体「セントリー」の内部調査で、対立するキール大統領とマシャール副大統領、双方の側近将軍たちが、戦争犯罪によって金銭的な利益を得ていることを突き止めた、と発表した。

 戦争の主導者が戦争で利益を得続ける限り、戦争終結は遠のくばかりである。クルーニー氏は、戦争犯罪の資金源になっていると知りながら、南スーダンで金融取引を続ける国際金融機関に向けて、「名指しする」と警告を発した。

 クルーニー氏らの「セントリー」は、南スーダンの実情を映像で公開した。IWJは、同団体の許可を得た上で、動画に日本語字幕をつけたので、ぜひ、ご参照いただきたい。また、本稿では、同団体から提供を受けた写真素材を、「セントリー提供」と注記して、随所に用いている。

 南スーダン情勢を見れば、戦争が継続していることは一目瞭然であり、本来なら、日本の自衛隊はこのような場所へ派遣されるはずではない。PKO政策Q&A(注)には、「紛争当事者の間で停戦合意が成立していること」と明記されているからである。

(注)PKO五原則

1)紛争当事者の間で停戦合意が成立していること
2)当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊へのわが国の参加に同意していること。
3)当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
4)上記の基本方針のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は、撤収することが出来ること。
5)武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。

 だが日本政府は、明らかに事実誤認としか言いようのない理屈を並べて、南スーダンが「紛争下」にあることを認めまいとしてきた。

 10月11日の参院予算委員会で答弁に立った安倍総理は、ジュバでの7月の武力衝突をめぐり、「『戦闘行為』はなかったが、武器を使って殺傷、あるいは物を破壊する行為はあった」と、およそ理解に苦しむ発言をした。

 また、10月8日に南スーダンを現地視察した稲田朋美防衛相は、7時間の滞在ののち、「(ジュバ市内は)7月の衝突がありましたが、落ち着いている」と記者団に述べた。

 そうした現実を現実としてありのままに認めない、現実否認の詭弁を積み重ねたあげく、ついに11月15日、南スーダンPKOに派遣する自衛隊に「駆けつけ警護」の新任務を付与することを閣議決定してしまった。

 駆けつけ警護の新任務を付与される「青森陸上自衛隊第9師団普通科第5連隊」については、IWJは青森中継市民・外川鉄治記者による、貴重な青森現地からのレポートとしてアップしているので、ぜひお読みいただきたい!

 日本政府の閣議決定の翌日16日、国連の潘基文事務総長は、南スーダンについて「大規模な残虐行為が発生する非常に現実的な危険」があるとする声明を発表した。日本政府の危機認識と180度違う。

 声明の中では、「国連の平和維持部隊は南スーダン国内での大量殺戮を阻止できない」とまで、述べているのである。

 安倍政権の述べている「戦闘行為はない」「落ち着いている」は、もはや誰の目にも詭弁・虚言としか映らない。

 「駆けつけ警護」とは、「警護」とは名ばかりで、実際には戦闘行為に参加することにほかならない。南スーダンの現状を見れば、自衛隊員が銃撃戦などに巻き込まれ、生命を危険にさらされるであろうことは、容易に想像がつくはずである。

 なぜ日本政府は自衛隊の「駆けつけ警護」の実施に向け、ここまで必死になるのだろうか?

 稲田防衛相は、防衛装備品を受注する、川崎重工業、三菱重工業、IHIなど複数の防衛産業株式を、夫名義で大量に保有していたことが発覚しており、インサイダー取引の疑いすら出ている。

 積極的に海外の戦争に参加することで、防衛費を増やし、防衛産業株を吊り上げてみずからの私服を肥やしたい――そんな思惑が透けて見えはしないか。閣僚の利益のために、自衛隊員の生命が危険にさらされるようなことがあってはならない。

 南スーダンの「戦地のリアル」を、ぜひ、この検証レポートでお確かめいただきたい。

記事目次

武器禁輸措置はなし、戦闘状態は悪化、政府は国連を敵視…知られざる南スーダン情勢の「悪条件」

 安倍政権が南スーダンへの「駆けつけ警護」を閣議決定した2016年11月、国連は11月12日と16日の複数回にわたって、南スーダンで「対立が激化している」と警告している。

 南スーダンで展開される紛争の現状は、どのようなものだろうか?

 今年7月の南スーダンの首都ジュバで起きた襲撃事件については、計画的な犯行の異様さが伝えられる。

 「兵士たちは全部屋を損壊させ、広範囲の略奪で25台以上の車を手に入れた・・・。暴虐の度合いの高さ、武装した兵士たちの数の多さ、盗まれた品目の多さ、秩序だった施設破壊の手法を鑑み、本件の犯行はかなり統率が取られたもので、気まぐれでなされた暴力・略奪ではない」

 ジュバの襲撃については、以下の記事で詳しくまとめているので、ぜひご参照いただきたい。

▲紛争の続く南スーダン(セントリー提供)

▲紛争の続く南スーダン(セントリー提供)

 南スーダン政府が武器弾薬に莫大な資金を注ぎ込んでいる可能性も報じられている。「国連制裁監視団」の報告書には、南スーダン政府が2機の戦闘機と、トラック2台分の小火器弾薬を購入したこと、さらに弾薬製造工場を国内に建設できるかを検討中であることが記されていたという。

 南スーダンは社会福祉などの資金を武器調達に使用しているため、経済が崩壊している状態であるという。

 こうした事態を前に、国連は無力に近い。

 国連平和維持軍は7月のジュバ襲撃の際、兵士が暴虐の限りを尽くした現場からわずか1.6kmの地点に駐屯していながら、4時間ものあいだ、現地住民らの救助要請に応じなかった。その後、9月14日に国連安保理は平和維持軍の増派を決めたものの、南スーダン側が増兵の際には、国連平和維持軍の数や、出身国、所持する兵器について南スーダンの承認を得なければならない、と主張した。

 これに対し安保理議長は、国連平和維持軍の増兵が阻止されれば、武器禁輸措置を実施する可能性がある、と述べたものの、ロシアや中国は国連の武器禁輸措置のための決議を阻止するものとみられている。

 つまり、南スーダンでは、いまだに有効な武器禁輸措置は取られず、戦闘状態は悪化し、政府が国連を敵視するという悪条件揃いなのである。

ジュバ襲撃の調査に乗り出した国連・潘基文事務総長

 そもそも国連平和維持軍とは、いったいどういう存在なのか? 私たちは「平和を守るためのパトロールをする部隊」くらいに受け取っており、部隊が駐留すれば平和が保たれ、一般市民たちの安全が確保されるのだろう、と思いなしてきた。

 しかし、実情は大きく異なるようだ。非武装の一般市民を守るための部隊ではなかったのか?

 「駆けつけ警護」のため南スーダンに行った自衛隊は、戦闘行為に巻き込まれる可能性が非常に高い。戦争の極限状態に置かれた自衛隊は、近隣で現地兵の性的暴力の現場に直面した時、どのような判断を下し、どのような行動をとるのだろうか?

 国連平和維持軍が救援要請に応じなかったという証言を受け、国連の潘基文事務総長は2016年8月23日、事実関係の調査に乗り出した。調査は、オランダの退役少将パトリック・カマート(Patrick Cammaert)氏を独立調査団長に任命し、本格的に開始された。

▲潘基文国連事務総長が調査に乗り出したことを伝える(国連ホームページより)

▲潘基文国連事務総長が調査に乗り出したことを伝える(国連ホームページより

 潘事務総長の声明によると独立調査団は、ジュバの国連施設避難民保護エリア内外での市民に対する暴力や性的暴行に関する報告を精査し、国連南スーダン派遣団がこうした事態を未然に防ぎ、市民を守るために当時の資源や能力で適切な対応を取ったのかどうかを判断する。調査結果は開始から1ヶ月以内に潘事務総長に提出され、公表される予定である。

▲国連独立調査団長に任命されたパトリック・カマート(Patrick Cammaert)氏(2001年)

▲国連独立調査団長に任命されたパトリック・カマート(Patrick Cammaert)氏(2001年)

 9月9日、カマート氏が率いる調査団は現地に到着した。

ジュバだけではない、南スーダン全土に広がる深刻なレイプ被害

 レイプ被害が深刻なのは、ジュバだけではない。スーダンとの国境近くにある北部のユニティ州でも多数の被害報告がされている。

 2015年10月22日付のAFP通信によれば、現地の女性たちに聞き取り調査をした結果、女性の拉致やレイプは政府軍や政府軍と同盟関係にある民兵などによる組織的なものであることがわかっている。州によっては、拉致され、レイプされ、奴隷労働に従事する女性が数千人に上るという。

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