南スーダン・自衛隊員の殉職が「改憲」の説得材料に使われる可能性~ジャーナリスト・布施祐仁氏らが安倍政権の詭弁をけん制、改正PKO法「極めて危険」 2016.1.12

記事公開日:2016.1.30取材地: テキスト動画
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( 取材:阿部洋地、文:IWJテキストスタッフ・富田充)

※1月30日テキストを追加しました!

 2015年9月19日に成立した安全保障関連法で、国連平和活動(PKO)に関する法律を、自衛隊の武器使用基準を緩和する方向に変えた安倍晋三政権。その安倍政権が重ねる「南スーダンに紛争はない」との強弁に、激しく異議を唱える講演が、2016年1月12日、東京都内で行われた。

 「南スーダンに紛争が続いていることを認めたら、PKO派遣中の自衛隊を撤退させなければならないからだ」と、ジャーナリストの布施祐仁氏は説明する。本当は紛争が起こっていることを知りながら、同国に自衛隊を派遣し続ける安倍政権を、厳しく批判する発言だ。

 集会では、日本国際ボランティアセンター(JVC)代表理事の谷山博史氏も登壇。自身がNGOメンバーとして体験したアフガニスタン戦争の実相に照らしつつ、紛争地で陸自隊員の武器使用基準が緩和されることが、いかに危険であるかを、「怖くてしょうがない中で(自衛隊は)活動しなければならず、それが過剰な反撃や攻撃を招く」などと話した。

 布施氏からは、憲法改正のアクセルを踏む安倍総理が、南スーダンでの陸自隊員殉職を改憲の説得材料に使う可能性がある、との言及も。布施氏は、「(仮に安倍総理が)『憲法9条の制約がなければ、当該自衛隊員は躊躇せずに引き金を引き、自分の生命を守れた』と主張したら、それは問題のすり替えだ」と強く訴えた。

記事目次

■ハイライト

  • 1部 講演「NGOが経験してきた紛争現場のリアリズム~アフガニスタン・イラク・南スーダンから」 谷山博史氏(日本国際ボランティアセンター代表理事)
  • 2部 講演「海外派遣に伴う自衛官の真のリスクについて」 布施祐仁氏(ジャーナリスト)
  • 3部 対談「自衛隊の『駆け付け警護』の危険と、自衛隊員のおかれている現実」 谷山博史氏+布施祐仁氏+千葉泰真氏(SEALDs)/司会 前川史郎氏(「原水協通信」編集長)

誤爆を認めない米軍 一線を画さないと反政府勢力の標的になるNGO団体

 アフガン戦争でイスラム原理組織のタリバンの巻き返しが鮮明になってきた2008年8月。谷口氏は、イランとの国境にあるシンダント県アジザバード村に、米軍が「タリバンが存在する」との理由から大規模な空爆を行い、全村が破壊された時の様子を伝える画像を映し出しながら、次のように解説した。

 「100人近くの無実の村人が巻き込まれて死んだ。アフガン政府はこれを大変遺憾に思い、当時のカルザイ大統領はその空爆を激しく非難した。同国国会が、現場に調査団を派遣し調べさせたところ、誤爆であったことが確実になった」。

 ナンガハル県ハシュカミナ村でも、同年6月に、JVCが医療活動をしていた現場付近が米軍によって空爆され、38人の村人が死んだという。谷山氏は、「結婚式で集まった人たちが被害に遭ったのだが、米軍はその事実を認めようとせず、『タリバンがいたから空爆した』の一点張りだった。赤十字国際委員会が調査し、誤爆であると認定しても、だ」と指摘した。
  
 この件でJVCは、落とされた簡易爆弾の破片を拾い集めて専門家に調べさせ、「米軍によるもの」とのお墨付きを得る。その上で、破片を米軍に突きつけたところ──米軍はようやく、自分たちの行為だったと認めたという。

 「米軍は、演習だったと説明し、以来、この地域で演習がなされることはなくなった」とする谷山氏は、さらにこう語った。

 「われわれは米軍に対し、アフガンのNGOだったら言えないことを言ったわけだが、それが私たちの身の安全を守ったのだ。もしも、JVCが(地元住民からの情報収集などの面で)米軍と連携していたとして、それがバレたらわれわれは、間違いなくタリバンをはじめとする反政府の武装勢力の標的になっていた」。

一度でも引き金を引けば「紛争当事者」に

 谷山氏からは、地上では米軍が強襲作戦を繰り広げたとの話もあった。

 「タリバンが潜伏している、との情報を得ると、米兵らがその場所に突入していくのだが、これによってまた、村民の間に犠牲者が生まれた。自分たちの家屋に土足でずかずか踏み込んでくる米兵らの姿は、アフガンの人たちに『米軍への強い敵意』を植えつけた。(英国の国際問題を扱うシンクタンク)センリス評議会が(2008年に)発表した報告書によれば、アフガン人の外国軍に対する意識は、『自分たちを守るのではなく攻撃する存在』だ」。

 谷山氏は、アフガンでは米軍の軍事展開で紛争が解決したわけではない、と力を込める。「2014年末には、アフガンで治安維持活動を行ってきた、北大西洋条約機構(NATO)が指揮する、国際治安維持部隊の主要部隊が撤退済み。2016年末には、残っている部隊のすべてが撤退する計画だが、駐留米軍の撤退については見直しのプロセスに入っている。アフガンでは、すでにイスラム国(IS)の浸透も目立つ」。

 ISの浸透は、その場所で紛争が解決していないからこその事象である、と谷山氏は指摘する。「すでにアフガンには、シリア同様の展開が起こる兆しが現れている」とし、21世紀の戦争は、こうした「対テロ戦争」が主流になる以上、ドロ沼化のシナリオが用意されやすいと力説した。

 谷山氏は、中東紛争地への自衛隊派遣は、たとえ後方支援が目的であっても「戦闘」に巻き込まれる可能性が高いと警告する。

 「主要な戦いはすぐに終わっても、そこから先が非常に長くなることを肝に銘じてほしい。武装勢力が住民の中に紛れ込んで活動するため、前線と後方の区別はつかない。つまり、怖くてしょうがない中で(自衛隊は)活動しなければならず、それが過剰な反撃や攻撃を招いてしまう。現地で、陸自の隊員が一度でも引き金を引けば、その隊員が属する陸自部隊は『紛争当事者』となり、攻撃の対象にされる」。

もはや、PKOに「平和な色彩」はない 南スーダン「誤射」の責任は自衛官個人に

(…会員ページにつづく)

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