ナチスドイツの「T4作戦」を連想させる、相模原障害者施設殺傷事件! 安倍総理はこの事件を強く批判して、障害者と家族を安心させるメッセージを出すべきでは? 2016.8.10

記事公開日:2016.8.10取材地: テキスト動画
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(取材:ぎぎまぎ 文:IWJテキストスタッフ・花山格章)

特集 戦後史上最大のヘイトクライム・相模原殺傷事件
※8月21日テキストを追加しました!

 「日本に在住する誰もが、あの日の朝のニュースに自分の耳と目を疑った」──。

 日本障害者協議会代表の藤井克徳氏は、相模原市の障害者施設「やまゆり園」で起きた凄惨な殺傷事件について、「この事件による心の傷は、関係者はもちろん、日本中のすべての障害者に及んでいる」と力を込めた。

 2016年8月10日、東京都千代田区の日本外国特派員協会にて、NPO法人日本障害者協議会代表の藤井克徳氏の記者会見が行われた。7月26日未明、障害を持つ人たちが暮らす施設に元職員の男が侵入、入所者を殺傷して警察に出頭するという事件が起きた。犠牲者は19人、負傷者は27人に上る。そして、被疑者の男が以前から「重度障害者は安楽死させるべき」と主張していたことが明らかになり、社会には大きな衝撃が走った。

 この事件に対して、藤井氏は障害者に寄り添う立場から意見を述べていった。

 「容疑者の言動から、今回の事件は優生学思想と関係しているのではないか。私が、まず連想したのが、ナチスドイツ時代に展開された『T4作戦』だ。これは『価値なき生命の抹殺作戦』とも言われ、ドイツ国内だけで20万人以上の障害者が虐殺された」

 その上で藤井氏は、この事件は日本社会の現状と関係している、と指摘。「現代社会は、市場万能主義が幅をきかせている。こうした風潮が、規制緩和や自己責任論という形で、障害者の世界にも影を落としているのだ。福祉関係の労働条件はきわめて劣悪で、障害者を支える現場では、専門性の劣化とともに、慢性的な職員不足からくる余裕のなさによって、職場の人間関係が希薄になっている」

 今回の事件に対し、安倍総理は「政府も真相解明に全力を挙げる」とコメント、菅官房長官も再発防止策を検討するとしたが、藤井氏は、「多くの障害者たちが、ナイフの刃先が自分たちにも向けられているように感じて、不安になっている。まだ、遅くはない。政府から、国民、障害者およびその家族へ『心配ない』という強いメッセージを出してほしい」と注文した。

記事目次

■ハイライト

障害者施設殺傷事件による心の傷は、関係者だけでなく、すべての障害者に及ぶ

 藤井氏は、神奈川県相模原市で起こった障害者施設「やまゆり園」での殺傷事件について、「誰もが、あのニュースに自分の耳と目を疑ったと思う。私たちは、改めて19人の同胞の死を悼み、そして27人の負傷者の1日も早い回復を祈っている。心の傷は、やまゆり園の関係者はもちろん、日本中のすべての障害者に及んでいる」と話す。

 「事件から2週間あまりが経ち、私の手元には(障害を持つ当事者や家族から)多くの意見が寄せられているが、それらは3つの衝撃に集約できる。第1は、たくさんの死亡者を伴う現地からの生々しい報道への衝撃。元職員とはいえ、自分たちを守ってくれるはずの人物が容疑者であったことが、衝撃を増幅させている。

 第2は、この事件の前(2016年2月)に、容疑者が衆議院の議長宛てに出した手紙に、『障害者は生きていても仕方がない。安楽死させた方がいい』とあったことへの衝撃だ。まるでナイフの刃先が、自分たちにも向けられているような感じだ。

 第3は、精神障害者の間に走っている衝撃。『容疑者には精神科病院の入院歴がある』と報じられたことで、精神障害者の多くが、自分たちへの偏見や差別が増すことを恐れている。また、措置入院制度の見直しが取り沙汰されていることも、精神障害者の隔離政策が一層進むのでは、という不安につながっている」

今回の事件で連想されるナチスドイツの「T4作戦」。障害者は「価値なき生命」なのか!?

 藤井氏は、「まず、強調したいのは、この事件があまりに残忍で卑劣であること。防衛することができない多数の重度障害者を標的とし、防備体制の薄い深夜に襲いかかった。私たちは、容疑者の行為を絶対に許すことはできない」と語気を強めると、次のような見解を述べた。

 「もっとも大事なことだが、容疑者の言動から、今回の事件は優生学思想と関係しているのではないか、ということ。私が、今回の事件でまず連想したのが、ナチスドイツ時代に展開された『T4作戦』だ。この作戦は『価値なき生命の抹殺の容認作戦』とも言われ、ドイツ国内だけでも20万人以上の障害者が虐殺された」

 ドイツでは、2010年11月のドイツ精神医学精神療法神経学会の総括を契機に、T4問題に向き合いつつある。藤井氏は、昨年来、ドイツに足を運び、人権や障害の観点から、「T4問題」に光を当て続けてきたという。

 「その矢先に、今回の事件が起きた。問題は、容疑者がなぜ、こうした考え方に至ったのかである。繰り返してはいけない『T4作戦』が、こうした形で、日本で表面化したことは戦慄である。まだまだ闇の多い事件だが、真相究明を進める必要がある」

市場万能主義が幅をきかせる日本社会。それが、自己責任論という形で障害者福祉の分野にも影響

(…会員ページにつづく)

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「ナチスドイツの「T4作戦」を連想させる、相模原障害者施設殺傷事件! 安倍総理はこの事件を強く批判して、障害者と家族を安心させるメッセージを出すべきでは?」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    ナチスドイツの「T4作戦」を連想させる、相模原障害者施設殺傷事件! 安倍総理はこの事件を強く批判して、障害者と家族を安心させるメッセージを出すべきでは? http://iwj.co.jp/wj/open/archives/324764 … @iwakamiyasumi
    未だメッセージはない。つまり、そういうことだ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/899187882652385280

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