築地市場移転先の豊洲開場予定日まで3ヵ月! 10年以上問題を追及してきた、仲卸業者の中澤誠氏と一級建築士の水谷和子氏が「移転NO」を訴える!(聞き手・IWJ記者 高橋敬明 城石エマ) 2016.7.23

記事公開日:2016.7.23取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・富田充)

※9月8日テキストを追加しました!

 「誰が知事に就任しても、11月7日の豊洲開場は延期せざるを得ない」――。築地市場の仲卸業者で、東京中央市場労働組合執行委員長を務める中澤誠氏は、何度もこう言明した。

 舛添要一前知事の後任を決める東京都知事選が1週間後に迫った2016年7月23日、中澤氏は都内でIWJの取材に応じ、改めて、築地市場の江東区豊洲への移転が抱える問題について論じた。

 今回、中澤氏がことに力説したのは、11月7日にオープンする新市場「豊洲市場」の物流難。肝心の環状2号線の開通が遅れざるを得ない以上、「豊洲市場への買い出しの車は、かなりの遠回りを強いられることになる」。中澤氏は、そんな不便な新市場に客が集まるとは思えない、と話す。

 中澤氏は、この日、豊洲市場の設計の悪さについても訴えた。水産仲卸部、同卸部、青果部が、築地市場のように合理的に配置されていないとし、豊洲市場では客の「買い回り」がしづらいと指摘。耐荷重不足の問題も取り上げた。

 中澤氏とともに取材に応じた、「守ろう!築地市場パレード実行委員会」メンバーで、一級建築士の水谷(みずのや)和子氏は、豊洲市場の土壌汚染問題の深刻さを粘り強く訴えた。不十分な汚染対策の前段には、東京都と民間業者の「合作不正」があると糾弾。

 「土壌汚染対策法(土対法)上、汚染されている区画として扱わねばならないのに、汚染されていない区画に振り分けられたものが、305もある。その305区画は未対策のまま、施設が建てられてしまった」

 そう述べた水谷氏は、施設内の空気調査で判明した、重大視すべきベンゼン汚染の実態などを紹介した。

■イントロ

  • タイトル 築地市場問題に関して中澤誠さん、水谷和子さんへインタビュー(聞き手 IWJ記者・高橋敬明、城石エマ)
  • 日時 2016年7月23日(土)16:00〜18:00
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

宇都宮健児氏の移転問題精通を高く評価~「小池百合子氏は『票取り』のために、築地をネタにした印象がある」

 7月30日に投開票が行われる都知事選が話題に上ると、中澤氏は、鳥越俊太郎氏に野党共闘候補の座を譲った宇都宮健児氏の、築地市場移転問題への精通ぶりを讃えた。鳥越氏がしんぶん赤旗のインタビューに、「移転延期は当然、土壌汚染の問題がある」「(11月という)繁忙期の移転は無理」と答えていることに触れた上で、次のように述べた。

 「(ひるがえって宇都宮氏は)前回(2013年2月)の都知事選で落選後も、市民有志の立場で移転問題を勉強し続けた。昨年の集会で久しぶりに会った時には、関連記事などを収めたぶ厚いファイルを手にしてきた」

▲東京中央市場労働組合執行委員長・中澤誠氏

▲東京中央市場労働組合執行委員長・中澤誠氏

 これに同意する水谷氏は、「宇都宮氏は、豊洲の土壌汚染について深い認識を持っている。彼が出馬を断念しなければ、『移転問題』はもっと大きな選挙争点になっていると思う」と、無念さをにじませた。

 主要3候補の中で最初に築地市場を訪れ、「いったん立ち止まることが重要」と移転延期の可能性に触れた小池百合子氏については、「逃げ道を用意しつつの政治家的発言かな、という印象だ」と中澤氏。市場関係者の反応については、「あの築地訪問が、支持率を押し上げたとは思えない。移転問題に関し、今まで何もやっていない点は、やはり見落とせない」ときっぱり。

 水谷氏も、「小池氏はもともと自民党都連の幹部だった人で、変わり身が早い。(移転問題をめぐる)取ってつけたような発言には不自然さを覚える向きが、市場関係者の間に多いのではないか」とのコメントを口にした。

▲一級建築士・水谷和子氏

▲一級建築士・水谷和子氏

「築地の閉場なしに環状2号線の開通工事はできない。環状2号線が開通しなければ豊洲は機能できない」

 改めて、移転問題のポイントは何か? 中澤氏は開口一番、「豊洲市場には客が集まれない」と語り、11月7日の開場予定を強い調子で否定した。

 「客が集まれない」とはどういうことか。

 豊洲市場の物流の生命線となるのは、新橋~豊洲間の環状2号線である。しかし今、環状2号線の開通は遅れている。豊洲方面から築地市場にかかる橋は、すでにでき上がっているが、そこから先の地下に潜る工事は、築地市場が立ち退かないと実施できないのだ。中澤氏は、この遅れが豊洲市場にとって致命的であると指摘する(中澤氏は虎ノ門までを指摘しているが、虎ノ門~新橋間は2014年3月に開通済み)。

▲環状2号線(赤線)の完成予定図。白点線(新橋―豊洲)は未完成を示す(※虎ノ門―新橋は2014年3月に完成)。

▲環状2号線(赤線)の完成予定図。白点線(新橋―豊洲)は未完成を示す(※虎ノ門―新橋は2014年3月に完成)。

 「環状2号線が開通しなければ、豊洲市場の物流は成り立たない。開通するまでには、まだあと2年ぐらいは要すると思う。そんな不便な新市場に、客が集まるとは思えない」

 東京都が築地市場の南側に仮設道路を設けて、汐留交差点につなぐ対応策を打ち出している点について、中澤氏は、「直角に近い角度で(仮設道路へと曲がり)、4車線が2車線になる。事故の多発が心配でならない」と言う。また、この仮設道路も豊洲開場時は工事途中で、東京都が掲げる12月の完成予定が守られる保障はない。

▲写真手前が築地側。築地に差し掛かる直前で工事が中断し、画面右手に向かって直角に折れた仮設道路を建設している。

▲写真手前が築地側。築地に差し掛かる直前で工事が中断し、画面右手に向かって直角に折れた仮設道路を建設している。

 中澤氏は、都が環状2号線の開通の目的に、東京五輪を見据えていることを強調する。選手村や競技場は、晴海など臨海部につくられる予定である。環状2号線は、晴海から都心部へのアクセスを向上させる動線となる。東京五輪の誘致を成功させた東京都は、一刻も早く築地市場を閉場したいのがホンネだ。

 中澤氏はこう指摘する。「(東京五輪開催が2020年夏である点に照らせば)都は築地閉場のタイムリミットは『11月7日』だと考えているのではないか」。

 11月7日の移転を決行するか、延期するか――。新都知事が、知事として最初に下す大きな決断には、豊洲市場をめぐる物流問題、つまりは「都民の食の安定」と「五輪開催」のどちらを重んじるかが、色濃く反映されることになる。

本当にこの施設は市場のために設計されたのか? 使いにくさが際立つ新市場「水産と青果は分断され、耐荷重も全然足りない」

 環状2号線の完成を見る前に、予定通り11月7日に豊洲市場がオープンした場合、豊洲市場の物流を支えることになるのは、既存の道路(晴海道路)だが、晴海道路が許容力に劣る点は明白である。

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 晴海道路は現在、東京都心部と晴海・豊洲地区を結ぶ唯一の道路だが、前前からその渋滞ぶりは有名。中澤氏は、この道路が豊洲市場と都心部のアクセスを支えることはできない、と断じる。

 「晴海通りが大渋滞で使えないとなると、東京中からの、豊洲市場への買い出しの車は、かなりの遠回りを強いられる。都心への配送では、(朝一番に購入したものが)場所によっては午前中には届かないという試算もあるほどだ」

 さらに中澤氏は、豊洲市場は施設の設計面でも業者泣かせだと言う。

 「築地市場は、水産仲卸部を取り囲む形で同卸部や青果部、さらには駐車場が配されている。設計が合理的なのだ。対して豊洲市場は、道路によって分断されてしまっている。水産と青果の間には施設内通路がなく、寿司屋が魚を買った後で大根を買うのが、とても面倒になる」

▲「卸」「仲卸」「青果部」の配置に注目

▲「卸」「仲卸」「青果部」の配置に注目

 中澤氏は2014年4月、「大根2本のゆくえ!?」と題して、IWJに豊洲市場の使いにくさを伝える文章を寄稿している。そこには、こんなくだりがある。

 「6街区4階(水産仲卸部)から5街区1階の青果部仲卸までは、『歩行者デッキ』を通り、階段も含めて700メートル以上も歩かねばならない」

 築地市場では、水産仲卸売場の目と鼻の先に青果部がある。それが階をまたいではるばる700メートルも歩かねばならなくなるのだから、いかに豊洲市場のつくりが「非合理的」かがわかる。

 さらに、豊洲市場の施設には、耐荷重の問題も横たわる。

 通常、物流倉庫の標準的な耐荷重は1平方メートルにつき1.5トンとされる。ところが豊洲市場の仲卸テナント部では、1平方メートルにつきわずか700キロしかないという。卸部や青果部でも1トンといい、こちらも標準の1.5トンには満たない。

 中澤氏は、「私はことあるごとに、いずれ『床が抜ける』と警告している。施設内を走りまわる運搬車(ターレー)自体に1トンの重さがある。築地市場のようにターレーを何台も並べて休ませることは、危険でできないのだ」と顔をしかめる。

▲積載中のターレー(左)。積み荷を含める重量は1トンを優に超える。

▲積載中のターレー(左)。積み荷を含める重量は1トンを優に超える。

 水谷氏が憤る。「東京都に対し、『どういう根拠で700キロにしたのか』と情報開示請求したところ、『(700キロだから)700キロです』という(極めて不誠実な)回答があっただけ。建築基準法が定める根拠の開示義務が果たされていない」。

「都が調査機関に『汚染された305区画には触れるな』と指示した証拠書類が残っている」!? ――役所と民間業者による不正が発覚!

 豊洲市場をめぐる、数ある懸念材料の中で、もっともクローズアップしたいのは、言うまでもない、汚染問題だ。市場で働く業者や、市場で売られた食べ物を口にする東京都民の人体へ、直に影響を及ぼす問題である。

 豊洲市場が建設されている場所には、かつて、東京ガスの都市ガス製造工場があった。そこでは弊害的に複数の有害物質が生み出されており、2002年に東京ガスが実施した土壌調査では、発がん性物質のベンゼンが、環境基準値の約4万3000倍が検出されている。猛毒性が指摘される物質も、検出限界値の930倍が見つかったシアン(青酸カリ)をはじめ、ヒ素、鉛、六価クロムなどが検出されており、「猛毒汚染地帯」のレッテルが貼られてもおかしくない現実があぶり出された。

▲東京ガスの都市ガス製造工場が建っていた頃の豊洲の様子(DVD「ドキュメント築地市場移転」より)

▲東京ガスの都市ガス製造工場が建っていた頃の豊洲の様子(DVD「ドキュメント築地市場移転」より)

 これを受けて東京都は、豊洲市場づくりに先立って、土壌を入れ替える対策工事を実施したが、水谷氏は、これは全然十分なものではないと喝破する。

 「(そもそも)ベンゼンの汚染度合いの調査に不正があった。土対法上、『汚染されている区画』として扱わねばならないのに、『汚染されていない区画』に振り分けられたものが、305もある。その305区画は未対策のまま、施設が建てられてしまった」

 信じがたい話である。水谷氏は、この不正は東京都と、実際の調査を行った民間業者(指定調査機関)の「合作」だと断じる。

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