【IWJブログ】ネット騒然「ロキソニンに重大な副作用が見つかった! !」の真相――規制緩和で薬が簡単に手に入るようになっても、副作用の危険は減っていない 2016.4.6

記事公開日:2016.4.6取材地: テキスト
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(太田美智子)

 解熱鎮痛薬のロキソニンに、腸閉塞などの重大な副作用の危険があることが明らかになったと、ネット上で話題になっている。「速く、よく効く」ロキソニンは、医師から処方されるほか、薬局やドラッグストア、インターネット通販などで手軽に購入できるため、“愛用者”も多い。それだけに、ネット上には戸惑いやショックの声が広がった。

 発端は、厚生労働省が2016年3月22日、ロキソニンの有効成分「ロキソプロフェンナトリウム水和物」の重大な副作用として、「小腸・大腸の狭窄・閉塞」を追記するよう指示し、それが報じられたことだ。

 しかし、ロキソニンには、ほかにも重大な副作用がいくつもある。

記事目次

一般用医薬品としては最も副作用リスクが高い「第1類医薬品」

▲第一三共ヘルスケアが販売する「ロキソニンS」

 ロキソニンは1986年、医師の処方が必要な医療用医薬品として三共(現在の第一三共)から発売された。同じ有効成分が入った市販薬の「ロキソニンS」は、2011年に第一三共ヘルスケアから発売された。製品名の「S」は、Speedy(速く効く)、Strong(優れた効果)、Safety(胃への負担が少ない)の意味を込めているという。

 「ロキソニンS」の発売以来、受診しなくても処方薬と同じ成分の薬が買える手軽さで、急激に売り上げを伸ばした。

 しかし、「ロキソニンS」は医師からの処方箋なしに薬局・ドラッグストアやネット通販で購入できる一般用医薬品の中で、最も副作用リスクが高い第1類医薬品である(注)。

注:一般用医薬品は第1~3類医薬品に分類され、数字が小さいほど副作用リスクが高い。

まだまだあったロキソニンの重大な副作用

 今回、厚労省は、ロキソニンの有効成分である「ロキソプロフェンナトリウム水和物」を含む処方薬と市販薬に、「重大な副作用」として「小腸・大腸の狭窄・閉塞」と、その症状である「吐き気・嘔吐、腹痛、腹部膨満等の症状」を追記するよう指示した。3年間で6件の発生例が報告され、うち5件は薬との「因果関係が否定できない」と判断されたからだ。

 しかし、添付文書に書かれている重大な副作用は、ほかにもある。処方薬と市販薬で多少、表現の違いはあるが、おおむね以下のようなものだ。

 消化管出血(血を吐く、吐き気・嘔吐、腹痛、黒いタール状の便、血便等があらわれる)、消化管穿孔(消化管に穴があくこと。吐き気・嘔吐、激しい腹痛等があらわれる)、ショック(アナフィラキシー)、血液障害、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、中毒性表皮壊死融解症、腎障害、うっ血性心不全、間質性肺炎、肝機能障害、横紋筋融解症、無菌性髄膜炎、ぜんそく

 これらは、以前から添付文書に書かれていた。改めて見ると、じゅうぶん恐ろしいではないか。ここに、今回、「小腸・大腸の狭窄・閉塞」が加わった“だけ”とも言える。このほかに、「重大」(市販薬では「重篤」)という言葉がつかない副作用もさまざまあるのだ。

 話はややこしくなるが、付け加えておくと、「小腸・大腸の狭窄・閉塞」が追記されることになったのは、「ロキソニン」だけではない。処方薬では、ロキソニンの特許切れに伴って、同じ有効成分を含有する別名のジェネリック薬品(後発品)がいくつもあり、これらも追記の対象となっているからだ。したがって、「ロキソニンじゃないから安心」ではないので、注意が必要だ。

厚労省「把握できる副作用には限界がある」

 それにしても、ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム水和物)は30年も前から使われ続けているにもかかわらず、なぜ、今になって新たに「重大な副作用」がみつかったのだろうか。

 厚労省の説明によると、「30年前よりも副作用を把握する体制が整い、把握率が上がっているということもありますが、そもそも医師やメーカーからの自発的な報告に基づいているため、厚労省が把握できる副作用には限界があります。まれにしか発生しない副作用であれば、なかなか把握できないことも珍しくない」という。

 しかも、厚労省による副作用の追記指示は、毎月のように複数の薬について行われている。今回も「ロキソプロフェンナトリウム水和物」を含む医療用・一般用医薬品のほか、6剤について「重大な副作用」の追記などが指示されている。つまり、新薬だけでなく、以前から使われている薬でも、それまで起きるとは考えられていなかった副作用が明らかになることは、ごく普通にあるのだ。

 先の厚労省の担当者は、「医療用医薬品の場合は医師や薬剤師から注意があるでしょうし、ロキソニンは市販薬でも第1類医薬品なので、購入時には薬剤師の説明があると思いますが、新たな副作用が記載されていることは珍しくないので、服用の際には、ご自身でもきちんと使用法を確認してほしい」と付け加えた。

医薬品の規制緩和を進める安倍政権

 確かに、第1類医薬品をドラッグストアなどで販売する際には、薬剤師が文書を用いて説明することが義務付けられている。しかし、ネット通販は画面上に、小さな文字の「注意文書」などが映し出されるだけで、購入者がそれを確認したことにすれば、購入できてしまう。

 2011年に「ロキソニンS」が発売された当時は、第1類、第2類医薬品は薬剤師による対面販売しかできなかった。2009年に改正された薬事法で、ネット販売ができる薬を第3類医薬品のみに規制したからだ。

 しかし、安倍総理をはじめ多数の閣僚が名前を連ねる産業競争力会議のメンバーである楽天社長の三木谷浩史氏が、このネット販売規制に猛然と反対の論陣を張った。また、健康食品や医薬品の通販サイトで現在、楽天の子会社である「ケンコーコム」など2社は、憲法22条(職業選択の自由による営業の自由)違反だとして行政訴訟を起こした。その結果、2013年1月11日の最高裁判決で厚労省は敗訴し、第1、2類医薬品もネット販売できるようになったのだ。

 三木谷氏の「活躍」については、2016年1月26日、3月3日に行なわれた、『英語化は愚民化』の著者・施光恒(せ・てるひさ)九州大学大学院准教授への岩上さんによるインタビューをぜひ、アーカイブで御覧いただきたい。

 また、憲法22条については、2016年2月17日に行なわれた「憲法学の神様」こと樋口陽一・東京大学名誉教授への岩上さんによるインタビューと、2016年4月4日に行なわれたばかりの、内田樹(たつる)神戸女学院大学名誉教授への、同じく岩上さんによるインタビューも、ぜひぜひ、ご参照されたい。

 樋口先生、内田先生とも、自民党改憲草案において、鍵となるのは、この憲法22条の「改正」(改悪?)であると指摘されている。資本力のある強者の経済的自由が、制約を外される。これは新自由主義とグローバリズムのドグマが国民国家を凌駕することを意味する。薬品販売の規制緩和の経緯から見えてくるのは、その憲法改悪がすでに部分的に先取りされているという事態である。

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