「核安全保障サミット」が一昨日の3月31日、ワシントンで始まりました。この「核安全保障サミット」は、「核なき世界」を目指すとするオバマ大統領の主導で、2010年から2年ごとに開かれてきました。オバマ大統領の任期切れにともない、今回が最後のサミットになるとも言われています。
(IWJ・原佑介)
※政府が閣議決定した「憲法は核兵器の保有と使用を禁止していない」という答弁書と、鈴木貴子議員の質問主意書を、会員限定で公開!
「核安全保障サミット」が一昨日の3月31日、ワシントンで始まりました。この「核安全保障サミット」は、「核なき世界」を目指すとするオバマ大統領の主導で、2010年から2年ごとに開かれてきました。オバマ大統領の任期切れにともない、今回が最後のサミットになるとも言われています。
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今回も、50カ国以上の首脳が核防護や核不拡散について議論。北朝鮮の核開発阻止や核物質のテロ悪用防止策なども話し合われており、4月1日(日本時間では本日2日)に共同声明を採択して閉幕します。日米両政府はこのサミットで、「日本からの核物質搬出」も成果の一つとして発表する予定です。
日本からの核物質搬出は、前回2014年の核安全保障サミットにおける米国からのプルトニウム返還要求に応じたもので、「日刊IWJガイドNo.1287号」(3月23日発行)でお伝えしていますので、そちらをご覧ください。また、米国によるプルトニウム返還要求が持つ政治的意味については、これまでにも岩上安身が識者にお聞きし、隠された真意に迫っています。
このように、世界の首脳が一堂に会して核不拡散が話し合われた一方で、「場合によっては核兵器を増やすことで世界がより安全になる」と主張しているのは、米国大統領選で存在感を発揮している共和党・ドナルド・トランプ氏です。トランプ氏は、在日米軍の大幅削減を訴え、「韓国や日本は、アジア地域での脅威に自国で立ち向かうために核兵器が必要となるかもしれない」との見方を示しています。
3月29日には、このトランプ氏の見解を受け、大阪の松井一郎府知事が、核保有について「何も持たないのか、抑止力として持つのか、という議論をしなければならないのではないか」との見方を示しました。
核兵器に関する議論が静かに活発化していますが、昨日4月1日、政府は「憲法9条は一切の核兵器の保有および使用をおよそ禁止しているわけではない」とする答弁書を閣議決定しました。これは、新党大地代表の鈴木宗男氏の娘である、鈴木貴子衆院議員の質問主意書に答えたものです。
この閣議決定により、3月18日の参議院予算委員会における横畠裕介内閣法制局長官の「憲法上、あらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されているとは考えていない」という発言が、裏付けられたかたちです。
4月1日の時点では、まだ質問主意書も答弁書も公開されておらず、詳細はわかっていませんでしたが、IWJは鈴木貴子議員事務所にコンタクトをとり、どちらも入手することができました。
IWJが、なぜこのような質問主意書を提出したのかを聞いても、事務所の担当者は「ただ、確認したかったから」の一点張り。その意図に関して、決して明かそうとはしませんでした。
鈴木貴子議員は、今年2月26日に民主党(現・民進党)を離党しました。1月30日の民主党の党大会で司会を務めた際、同僚の議員から「(民主党に)残ってください!」と声をかけられた際、「残れる政党にしてください!」と応答。IWJは、この党大会の模様を、記事としてまとめていますので、ぜひ、ご一読ください。
なお、鈴木貴子議員は、3月22日に共産党に関する質問主意書を提出し、これを受けて政府は「警察庁としては、現在においても『暴力革命の方針』に変更はないものと認識している」とする答弁書を閣議決定していました。この閣議決定を受けて行われた共産党の山下芳生書記局長の会見を、IWJでは中継し、動画記事としてアップしていますので、こちらもあわせてご覧ください。
質問主意書は、「内閣法制局長官による核兵器使用に係る発言に関する質問主意書」と題したものです。横畠裕介内閣法制局長官は3月18日の参院予算委員会で、核兵器の使用について、「わが国を防衛するための必要最小限度のものに限られるが、憲法上あらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されているとは考えてない」との見解を示していました。
鈴木議員は主意書の中で、「日本政府による核兵器の使用は憲法上認められているとの見解か」「核不拡散条約の締結国である日本政府として、日本国憲法と日本国が締結した核兵器不拡散条約、どちらが優位に立つか説明を求める」などと問いただしています。
これに対する政府決定は、「非核三原則」「原子力基本法」「核兵器不拡散条約(NPT)」などを挙げて「核兵器を保有し得ないこととしているところである」と主張。そのうえで、次のように答えています。
「憲法第九条と核兵器との関係についての純法理的な問題として、我が国には自衛権があり、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法第九条第二項によって禁止されているわけではなく、したがって、核兵器であっても、仮にそのような限度にとどまるものであるとすれば、それを保有することは、必ずしも憲法の禁止するところではない。他方、限度を超える核兵器の保有は、憲法上許されないものであり、このことは核兵器の使用についても妥当すると解している」
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