「NPO法人 食品と暮らしの安全基金 東京実行委員会」の主催によるシンポジウム「チェルノブイリと福島 甲状腺がん多発と避難問題を考える」が3月2日(月)、東京都千代田区の衆議院第一議員会館にて行われた。チェルノブイリ事故により避難した女性が故郷の文化を残し、汚染地に住む人を支援する婦人団体「希望」の代表を務めるタチアナ・アンドロシェンコ女史が講演した。
(IWJ・松井信篤)
※当初、IWJ代表の岩上安身が司会役での参加を予定しておりましたが、医師の指導により欠席させていただきました。急遽代役を引き受けてくださったアワープラネットTVの白石草氏に感謝申し上げるとともに、ご迷惑とご心配をお掛けいたしましたこと、お詫び申し上げます。
※3月11日テキストを追加しました。
「NPO法人 食品と暮らしの安全基金 東京実行委員会」の主催によるシンポジウム「チェルノブイリと福島 甲状腺がん多発と避難問題を考える」が3月2日(月)、東京都千代田区の衆議院第一議員会館にて行われた。チェルノブイリ事故により避難した女性が故郷の文化を残し、汚染地に住む人を支援する婦人団体「希望」の代表を務めるタチアナ・アンドロシェンコ女史が講演した。
記事目次
■ハイライト
チェルノブイリ事故後のウクライナを訪ね、子どもたちが低線量被曝による疾患を持っている事実を知ったことから結成された「痛みをなくすプロジェクト」代表の小若順一氏は、2012年2月から5回にわたってウクライナへ調査に行っている。
2012年6月、チェルノブイリ原発から西に125kmの村20カ所で線量を測定したところ、国際基準と同じ年間1mSvだったという。同年、9月に訪れた村など、2つの学校で調査した結果、足が痛い子が7割、頭が痛い子が6割、のどが痛い子が5割という事実が発覚した。
症状が改善された実例を小若氏は挙げた。身体の痛みを患いニトログリセリンを常備していた女性が70日の保養に出たところ、45日までは改善が見られなかったが、54日目には症状がかなり良くなり、70日後、以前の症状がまったくなくなったという。
体内にあるセシウム137の減衰は50日で3割減、70日で4割減になるとのデータをICRP(国際放射線防護委員会)は出しているが、他にも、食事に含まれる放射能を減らしたことにより、痛みが消えて症状が軽くなったことも考えられるという。
放射能を吸収しやすいきのこと川魚を食べるのをやめてもらい、線量が比較的低い肉と牛乳を提供して、高純度のワセリンやサプリメントを摂取することで、皮膚障害や呼吸障害などが劇的に改善された例もある。
他方で、非汚染地域の村で1.1Bq/kgの食事で7割の子どもたちが頭痛の症状を訴えた事例があったという。この地域では、カリウム複合肥料を子どものいる各家庭に配り、それを畑に撒いてもらうことで、セシウムを抑制する方法を取った。1年経って症状を調査したところ、頭痛、足痛に改善が見られているという。
これにより、1.1Bq/kgの食事が原因で痛みが出ていたことは確定したと、小若氏は説明。また、原因不明で足や手が不自由だった子どもが、放射能の少ない食事、指圧、野口体操、マッサージなどの効果でまっすぐ歩けるようになったり、自立できるほど回復した事例を紹介した。
小若氏と共に、このプロジェクトを進めてきたタチアナ氏は、学校や地区議長などから贈られた感謝状を披露。プロジェクトを通して経験したことは、将来的には福島の役に立てられると伝えた。タチアナ氏の経験からみると、甲状腺腫瘍以外にも甲状腺異常や他の様々な病気が存在するという。
3年間、あらゆる方法を試したきたこのプロジェクトには、放射線生物学研究所副所長のニコライ・ラーザレフ博士のサポートがあり、肺や食物、土壌を検査してきたという。他にも、衛生学研究所の副所長であるコルゾン博士や、動物界と植物界への放射線影響を調べているバイオ資源大学教授などもプロジェクトを手伝っている。
タチアナ氏の次女・サーシャ氏からもプロジェクトに関して報告があった。サーシャ氏は、幼い頃から身体に痛みがあり、病気を患っていた。「お腹がいつも痛かった。大変な痛みで、体内からナイフで切られた感じや刺されたような痛みがあった。突発的に痛みがしばらく続いて大変だった」と、当時の身体の異変を振り返った。プロジェクトが始まってからは、汚染が少ない食品を食べ始め、痛みは減少し、1年半前には完全に消えたという。
チェルノブイリでは、小児甲状腺がんのみが低線量被曝による晩発的な影響である、というのが日本における見解で、チェルノブイリに比べ、福島などでは線量が低いので、健康影響は起きないという専門委員会の結論が出ている。しかし、福島の現状では、2月12日発表で117名の甲状腺がん疑い、もしくは悪性で87名は手術を終えている。肺に転移があったのが2名、低分化がんが3名と公表されていることを白石氏は報告した。
(…会員ページにつづく)