「櫻井よしこさんは、私への『捏造報道』というレッテル貼りを繰り返すことで、ネットで過激な言論を行う勢力を鼓舞している」──。
2015年2月20日、元朝日新聞記者で北星学園大学非常勤講師の植村隆氏は、札幌市内で行われた岩上安身による2度目のインタビューで、櫻井よしこ氏についてこのように語り、「おそらく、櫻井さんは私が書いた記事を読んでいないのだろう。読んだ上で批判をしてください」と続けた。
植村氏は、2015年1月、自身への誹謗中傷記事を書いた東京基督教大教授の西岡力氏と、それを掲載した『週刊文春』を名誉毀損で提訴。そして今回、2度目の提訴として、櫻井よしこ氏を名誉毀損で訴えるという。
前回の岩上安身によるインタビューの中で、植村氏は「自分への批判は的外れなものであり、『捏造記者』という批判自体が捏造だ」と語った。
この日も植村氏は、何度も自分は捏造記者ではないと訴え、「ジャーナリストにとって、『捏造記事を書いた』と言われることは死刑判決に等しい。それを意図的にでっち上げるということは、そこに悪意がある」と断じた。
- 岩上安身 × 植村隆氏(元朝日新聞記者、北星学園大学非常勤講師)
- 日時 2015年2月20日(金)14:00~
- 場所 札幌市内
櫻井よしこさんの記事を、名誉毀損で訴える
岩上安身(以下、岩上)「元朝日新聞記者の植村隆さんには、先日まとまったインタビューをさせていただいたのですが、2度目の提訴を行うということで、再度、インタビューを受けていただきました。今回、櫻井よしこさんの書いた記事を、名誉毀損で訴えると聞きました。その記事は、どういう媒体に載った、どんな内容のものなのでしょうか?」
植村隆氏(以下、植村・敬称略)「櫻井よしこさんの記事が掲載された雑誌は、『WiLL』2014年4月号と『週刊新潮』2014年4月17日号、同10月23日号、『週刊ダイヤモンド』2014年10月18日号、同10月25日号です」
岩上「それらは最近の記事ですね。植村さんを批判している西岡力さんなどの記事は、かなり昔の掲載でした。しかし、櫻井さんの記事は、ずっと昔のことを、今、持ち出して書いているということですか」
植村「そうです。私の24年前の記事の見出しは、『思い出すと今も涙 元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く 韓国の団体聞き取り』というもので、1991年8月11日付の朝日新聞大阪本社社会面のトップに掲載されました。
記事のリード文は、『日中戦争や第二次大戦の際、女子挺身隊の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた朝鮮人従軍慰安婦のうち、1人がソウル市内に生存していることがわかり、韓国挺身隊問題対策協議会が聞き取り調査を始めた』と書いています。
慰安婦のおばあさんたちは、韓国ではずっと沈黙を守ってきたが、この時から、被害体験を初めて語り始めたのです。記事では、この女性は中国東北部出身で、17歳の時に騙されて慰安婦にされた、と書いている。私はこの人に直接は会えなかったが、被害を語るテープを聞き、こういった証言は大きなニュースだと思って報じたのです。ところが、この記事について、櫻井さんは繰り返し『捏造だ』と言っている」
朝日新聞の慰安婦報道検証のあとでも、なお「捏造」と……
岩上「櫻井さんは2014年になって3回、植村さんが書いた記事を問題にしている。しかし、植村さんの記事は1991年のものです。だとしたら、2014年までの間も、(櫻井氏は批判を)書き続けているのですか」
植村「そうです。ですが、今回の訴状には、最近の記事を入れました。朝日新聞が2014年8月5日、慰安婦報道の検証記事を出しました。私の記事については、このように検証しています。
『従軍慰安婦の証言を韓国メディアよりいち早く報じたが、これについて、慰安婦の裁判を支援する韓国人の義母との関係を利用して記事を作り、都合の悪い事実を意図的に隠したのではないか、という指摘がある。この前提のもと(植村氏が)非難を浴びていると言うので、朝日新聞取材班が調査をした結果、植村氏の記事には事実のねじ曲げはない。1991年8月の記事の取材のきっかけは、ソウル支局長からの情報提供だった。義母との縁戚関係を利用して、特別の情報を得ることはありませんでした』
また、女子挺身隊という記述についても批判されていたが、それも捏造ではありません。当時の韓国では、従軍慰安婦は女子挺身隊のことでしたから。
そういう説明をしているにもかかわらず、『週刊新潮』2014年10月23日号では、『23年間、捏造報道の訂正も説明もせず、頬かぶりを続ける元朝日新聞記者を教壇に立たせ、学生に教えさせることが、一体、大学教育のあるべき姿なのか』と、櫻井さんは私を中傷するのです」
間違いだらけの櫻井よしこ氏からの批判
岩上「櫻井さんは『週刊新潮』では、『(植村氏は)女子挺身隊と慰安婦を結びつけ、強制連行したと報じた。若い勤労のための女子挺身隊と従軍慰安婦とは無関係だ』『植村元記者の妻は元韓国人で、母親は慰安婦問題で日本政府に訴訟を起こした太平洋戦争犠牲者遺族会の幹部』『植村氏の誤報は、単なる誤報ではなく、意図的な虚偽報道と見られても仕方ないだろう』という書き方もしている。
同誌10月23日号では、『植村氏は北星学園大の人格教育に、どのような貢献をすると考えるのか。23年間、女子挺身隊と従軍慰安婦を結びつける虚偽の記事を書いたとか、10月14日の今日まで自身の捏造記事について説明したという話は聞こえてこない』とも書いています。
また、今回の提訴に対して櫻井さんは、『言論人はいかなる批判に対しても言論で応じるべきだ。論評に不満があるなら言論で反論すればいい』と言っている。でも、植村さんは、『いやいや、言論で反論しているでしょう』と、前回のインタビューでもおっしゃっていましたね」 植村「去年(2014年)8月には朝日新聞自体が、私への事情聴取に基づいて『記事に捏造はない』とした。その後、私も各メディアで訴えたり、月刊『文藝春秋』2015年1月号に長い手記を書いた。そういう意味では、説明をしています。
言論人としての批判は多いにやるべきだろうが、間違った事実を元に『捏造』と言われるのは困る。櫻井さんは、過激なネットの言論行動こそしていないが、『捏造報道』というレッテル貼りを繰り返すことで、そういう勢力を鼓舞しているのではないか」
植村「櫻井さんは自著『日本の危機』の96ページに、『慰安婦問題について、朝日は当初、女子挺身隊が慰安婦と直結するかのように報道し、日韓の世論に大きな誤解を植え付ける誤りを犯した』と書いています。
そして、1991年の私の記事を引用し、『女子挺身隊の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた、と書き出している。女子挺身隊とは国家総動員法に基づき女性を軍事工場などに動員した強制力のある法的制度で慰安婦とは直接結びつけない。だが、同記者の報告で、本来、別物の両要素が結びつけられ、日本がいわれなき非難を浴びる理由になったのは周知の事実だ』と書いているが、少しでも韓国のことを調べれば、明らかな間違いだとわかります」
当時は同じ意味で使っていた「女子挺身隊」と「慰安婦」
植村「私の記事以前から、日本のメディアでは、『慰安婦』は『女子挺身隊』の名で報じられていたし、韓国の『東亜日報』は1982年3月10日付で、『挺身隊で連れて行かれたおばあさんが40年ぶりに故国に帰ろうとしている』と報じている。このおばあさんはタイに住んでいた慰安婦です。韓国では、女子挺身隊が従軍慰安婦の意味で使われていた。当時の読売新聞、毎日新聞にもそういう表記があります」
岩上「他のメディアが使っていたから、朝日新聞が免責されるとは言えないが、少なくとも、日本のメディアが使ったから韓国の人心を惑わし、そういう風に思い込ませ、日本の名誉を著しく傷つけた、という理屈にはならないですよね」
植村「70年代に出版された千田夏光さんの本にも、その表現はあって、私のオリジナルでもなんでもない。にもかかわらず、『植村が書いた』と繰り返されると、それに刺激されて興奮する輩もいて、現に、北星学園大にも言葉の暴力が投げかけられている」
岩上「当時、女子挺身隊と慰安婦の混同は一般的に行なわれていたことであり、植村さんや朝日新聞が起点となって誤報を振り撒いた、というのは誤りだということですね」
義母からの情報でなくソウル支局長の勧め
岩上「もうひとつが、義理のお母さんから情報を得たのではないか、というくだりです。しかし、これは朝日新聞のソウル支局長からもたらされた情報がきっかけで、(義母からの働きかけなど)意図的なものはない、と検証記事にはあります。これについても、植村さんは前回説明されましたが、もう一度、お願いできますか」
日本司法に訴える前に、injで公開討論するべきイシューじゃないですか?・・・ 公開討論。公開討論・・・。「公開討論」ってのが、「裏」の日本社会にとって都合が悪いんですかね。裏の。裏の。表に出せない・・・。自分の生活が・・・国、国ってのはどこでもいいんですが、「国」にとって・・・。でも、なにもともあれ、公開討論が一番フェアだと思います。
いわゆる「捏造」している相手に公衆の面前でいいたいことがいえるんですから。
宇宙スケールでは人間の言葉など、ごく些細なことにしか過ぎない。
人間のスケールでは、なにもかも自分まみれになりがち。
そして、なにを語るのか? みんなが人間のスケールでしか語れないのならば?