歴史修正主義を後ろ盾に吹き荒れた、元朝日新聞記者への従軍慰安婦記事『捏造』バッシング「ジャーナリズムは見殺しにした」――植村隆氏の反撃、名誉毀損提訴後の報告集会 2015.1.9

記事公開日:2015.1.11取材地: テキスト動画
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(IWJ・ぎぎまき)

 「私は捏造記者ではありません。不当なバッシングには屈しません」

 元朝日新聞記者の植村隆氏はおもむろに椅子から立ち上がり、聴衆の前でこう訴えた。

 植村氏は1月9日、いわれなきバッシングで名誉を毀損されたとして、文藝春秋と西岡力・東京基督教大学教授を相手どり、1650万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求め、東京地裁に提訴した。その後開かれた報告集会で、植村氏は、提訴に踏み切るまでの経緯を説明。これまで受けてきた実害とそれによる苦悩や悔しさを、涙ながらに語った。集会が行われた参議院議員会館講堂は、立ち見が出るほどの聴衆で溢れた。

 報告集会は原則、中継や録画不可。しかし、IWJは主催者から許可を得て、植村氏のスピーチや支援者らのリレートークの様子を、生中継で配信した。

■ハイライト

  • 弁護団挨拶・植村隆氏名誉毀損訴訟提起の意義 角田由紀子氏(弁護副団長)/訴状概略説明 神原元氏(弁護団事務局長)
  • 原告本人挨拶・決意表明 植村隆氏(元朝日新聞記者、北星学園大学非常勤講師)
  • 議員挨拶 有田芳生氏(参議院議員)
  • 報告 (1) 慰安婦・福島第一原発元所長「吉田調書」記事取消問題 田島泰彦氏(上智大学教授)/(2) 北星学園大学来期雇用再契約決定について 長谷川綾氏(北海道新聞記者)
  • 議員挨拶 福島みずほ氏(参議院議員)
  • 発言・激励 岩崎貞明氏(メディア総研)/上原公子氏(元東京都国立市長)/チェ・ソンエ氏(ピアニスト)/新崎盛吾氏(新聞労連)/須貝道雄氏(日本ジャーナリスト会議〔JCJ〕)/小森陽一氏(東京大学教授)/梁澄子(ヤン・チンジャ)氏(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動)/平川修一氏(出版労連)/山口二郎氏(法政大学教授)/池田恵理子氏(女たちの戦争と平和資料館〔WAM〕)/伊田浩之氏(週刊金曜日)/芹川慎哉氏(朝日新聞労組)/渡辺達生氏(札幌弁護士会)/北岡和義氏(元読売新聞記者)/青木理氏(ジャーナリスト)
  • 支援組織について 神原元氏/今後の方向 海渡雄一氏(弁護団副団長)
  • まとめ・閉会挨拶 黒岩哲彦氏(弁護団副団長)
  • 日時 2014年1月9日(金)17:00~19:00
  • 場所 参議院議員会館(東京・永田町)
  • 主催 植村隆名誉棄損訴訟弁護団

一方的な「捏造記事」のレッテルで人生を狂わされた植村氏

 1991年、植村氏は、ソウルに在住していた元朝鮮人慰安婦から聞き取った証言を元に、同年8月11日の朝日新聞社会面トップで、その記事を掲載した。植村氏が今回、名誉毀損で訴えた西岡氏は、記事が掲載された翌年、植村氏の記事に対する批判記事を、月刊「文藝春秋」で発表。植村氏が「重大な事実誤認を犯している」と、一方的に指摘していた。従軍慰安婦の証言については、当時、他社も同じような論調で記事を発表していたにも関わらず、西岡氏は植村氏が書いた朝日新聞の記事だけを狙い打ちして批判したのだ。

 それから22年後の2014年1月、西岡氏が再び、植村氏への攻撃を再開。植村氏の91年の記事を引っ張りだしては、今度は「捏造記事」というレッテルを貼り、文藝春秋が発行元の「週刊文春」に記事を掲載。「“慰安婦捏造”朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に」という見出しは瞬く間に広く拡散され、植村氏が専任教授として転職が決まっていた松蔭学院大へ、抗議の電話やメールが殺到した。大学側から、事実上の就任辞退を求められた植村氏は、契約を解除。人生設計が大きく狂わされることになる。

「真っ白いシーツに黒いシミがどんどん広がっていく気がした」

 2014年3月末には、朝日新聞を早期退職。植村氏に残された仕事は、2012年4月から続けている、札幌の北星学園大学での非常勤講師だけとなった。執拗な嫌がらせやバッシングは、ここぞとばかり、北星学園大学に集中することになる。大学には植村氏の解雇を求めるメールの他、2014年9月には「爆弾を仕掛ける」といった脅迫が届くまでにエスカレート。それだけではなく、いわれなき誹謗中傷は、植村氏への家族にまで及んだ。

 「私の娘の写真までネット上で晒され、『自殺するまで追い込むしかない』などと書かれました。息子と間違われた息子の同級生も、ネットで誹謗中傷される事態まで起きました」

▲ネット上で拡散され続ける長女へのバッシングについて語る植村氏。「真っ白いシーツに黒いシミがどんどん広がっていく気がした」

「脅迫を知っていた記者はいた。ジャーナリズムが見殺しにした」

 北星学園大学への脅迫や嫌がらせを、早いうちから取材していた北海道新聞の長谷川綾氏。長谷川氏は報告集会でマイクを握り、自らも身を置くジャーナリズムの世界を憂い、危機感をあらわにした。

 「脅迫状めいた抗議の連絡が北星学園に殺到していたのは、複数の記者が知っていました。しかし、記事に書かなかった。テレビも報じなかった。ジャーナリズムは、見殺しにしたんだと思います。朝日新聞が8月5日に(慰安婦問題の)検証記事を出した後、慰安婦問題について報じることが、タブーのようになっていた。自分の会社もバッシングされるのではと、複数のメディアがひるんだ。その様子を見て、『民主主義』の危機だと思いました。そうした動きを食い止めようと立ち上がったのが、学者であり弁護士であり、大勢の一般の主婦や年金生活者の方でした」

 北星学園大学は、学生4200人程度の小規模な私立大学だが、脅迫を受けるようになってからこれまで、1500万円の警備費を投じてきたという。安全性を鑑み、一度は、植村氏の雇用契約を更新しない姿勢を見せていたが、一転、契約続行を決断。誰がそうさせたのか。長谷川氏は、全国の市民や弁護士らが立ち上がり展開してきた運動が、大学を動かしたのだと訴えた。

 長谷川氏の言う通り、多くのマスメディアはこの状況を黙殺したが、11月7日に行なわれた、弁護士380人による刑事告発についての記者会見を、IWJは報じている。

「歴史修正主義者が権力を持った初めての国」朝日バッシングを後押しする第3次安倍政権

 報告集会では、さまざまな分野の支援者12人がリレートークを行い、植村氏への支援を訴えた。スピーチで目立ったのは、この問題を引き起こしている、歴史修正主義的な動きに対する危機感だ。他方、メディア関係者からは、植村氏をめぐる攻撃に、いち早く反応できなかった反省の色が見られた。

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  1. 清沢満之 より:

    ネオナチならぬネオ大日本(帝国)。

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