「アベノミクスは自由競争を優先させ、国民生活を破壊し、国の将来を誤るものだ。
今回の選挙の争点は、国民の生活を第一として考えていくのか、それとも安倍さんの言うように、強いところをどんどん伸ばして、一般国民の生活は後回しという考え方で経済政策を進めていくのかだ」――。
生活の党の小沢一郎代表が、12月4日、外国特派員協会で記者会見を開き、衆議院総選挙に向けた自らの信念や、安倍政権に対する評価を語った。
政治家としての目標を問われた小沢氏は、「政権を担当しうる政党を少なくとも2つ作らねばならない。与党と野党が切磋琢磨して、より良い政治を目指していく。それが民主主義の最大の機能だ」と訴えた。
「アベノミクスにより利益を得たのは、ほんの一握りの大企業」
「安倍さんはアベノミクスの評価を問う選挙だと言っている。(したがって)その結果を検証する必要がある」
小沢氏は会見の冒頭、司会者の質問に答える形で、安倍晋三政権および「アベノミクス」の評価を語った。
「株は上がったが、それにより利益を得たのは、ほんの一握りだ。超金融緩和で円が非常に安くなったが、これにより利益を得たのは、輸出を大量にしている大企業だ。空前の利益を上げたと言われている。
大多数の一般国民にとって、円安になるというのは物価が上がるということであり、実質賃金が減少するということだ」
小沢氏はこう述べ、アベノミクスによる株高・円安は、ごく一部の人々のみに恩恵をもたらすものだと指摘した。
「安倍さんの考えは、強い企業をどんどん大きくして、いっぱい儲けてもらって、その利益を配分すれば、国民が豊かになるというものだ。
しかし、その利益は、従業員にほとんど還元されていない。特定の大企業の正社員については2%ほど(給与が)上がったが、その他の95~96%の勤労者の実質所得は減っている。
さらに政府は、率先して非正規社員を増やそう、企業のコストを減らそうとしている。
非正規社員は正規社員と比べて収入が低く、身分も安定せず、いつ解雇されるかわからない。
特に若い人は将来の生活も安定せず、収入も低く、最近では結婚できない、子どもを育てられないという声が非常に大きい。それはこうした政府の政策が大きく影響していると思う」
アベノミクスにより大企業が潤う一方で、その利益が国民に分配されていない現状を、小沢氏はこのように分析。今後の見通しを次のように語った。
「GDPの6割以上は個人消費だ。個人の生活を安定させ、収入を増やす方策を考えなければ、個人消費が増えるわけがなく、景気も良くならない。
企業サイドに偏った、自由競争優先の考え方のもとでは、(都会の勤労者と同様)、地方の農林水産業を基盤とする勤労者も、非常に格差が大きくなり、衰退の方向に進んでいる」
「アベノミクスは国民生活を破壊し、国の将来を誤る」
小沢氏は、アベノミクスの自由主義経済政策では、経済は活性化しないと断言する。
「我々は自由競争を否定しておらず、企業が儲けることを否定していないが、いたずらに自由競争を推奨すれば、初期の資本主義と同じになってしまう。
先人は初期資本主義の状況の反省から、年金・医療等のセーフティーネットを考えてきた。そうやって、資本主義・民主主義は生き延びて今日まできた。
私たちは雇用はもちろん、年金・医療・介護など社会保障の分野でも、また食料自給という観点から農林水産業についても、一定のセーフティーネットをきちっと作ることによって、国民の生活を安定化させることが大事だと思う」
小沢氏はこう述べ、セーフティーネットを完備した自由競争・資本主義を目指すべきだと主張した。
「アベノミクスは自由競争を優先させる。その結果、国民生活を破壊し、国の将来を誤るものだと思っている。
今回の選挙は、国民の生活を第一として考えていくのか、それとも安倍さんの言うように、強いところをどんどん伸ばして、一般国民の生活はその後だという考え方で経済政策を進めていくのか、そういうところが争点となる」
小沢氏は、アベノミクスをこう総括するとともに、生活の党としての衆院選の争点を示した。
「政権を担当できる受け皿をみんなで作れば、国民は安倍政権ではなく、野党の統一体を選んだと思う」
衆院選での野党の戦略や議席獲得見通しを問われると、小沢氏は野党を統一する「受け皿」を作れなかったことに慚愧の念を表した。
「野党が、何の党だ俺の党だ、そういうことを言っている限り、政権は取れない。
しかし、今の安倍内閣・自民党内閣に不満を持つ国民は大変多いと思う。よって、大きな基本問題の一致は必要だが、自民党に代わる、政権を担当できる受け皿をみんなで作れば、この選挙で国民は、安倍政権ではなく、野党の統一体を選んだと思う。
残念ながら今回はできなかったので、報道される通りとなるだろう」
小沢氏は、統一体を作れなかった野党について、こう悲観的な見通しを語り、自身の生活の党については、「もちろん候補者全員の当選を願っている」と述べた。
「地方にお金と権限を与え、地方の知恵と努力で地域の活性化を図る」
小沢氏は、1994年に『日本改造計画』という本を著している。記者から新たに著書を発表する予定を問われると、小沢氏は『日本改造計画』で主張した行財政改革の内容を要約し、改めてその必要性を主張した。
「(当時は)霞ヶ関の行政、国の統制、霞ヶ関支配を根本的に変えていかなければならないと考えていた。今なお、それをやらなければ、根本的な日本の体質にメスをいれることはできないと思う。
私は、官僚を否定している訳ではない。国の官僚は国家レベルで考え、仕事をすべきだ。国会議員も同様、国家レベルな政治活動をしなければいけない。そういう意味だ」
小沢氏の主張は、国家公務員や国会議員には、国家レベルの思考・職務が求められているというものだ。
一方、地域については、地方自治を拡大することで、活性化と財政健全化を図れると主張する。
「予算も、(医療や介護も含め)地方に関係することは、地方にお金も権限もやり、地方の知恵と努力により、地域の活性化を図る。それによって、大変大きな無駄を省くことができる。
現在、補助金や政策経費に50から60兆円の予算がある。地方のことは地方へと大改革をするならば、2割から3割の無駄を省くことができる。それは(地方活性化と財政健全化の)一挙両得だ」
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