TPP交渉 日本側の姿勢は「パフォーマンスで巧妙なごまかし」 ~専門家らが大手メディアによる「重大なミスリード」を指摘 2014.9.27

記事公開日:2014.9.30取材地: テキスト動画
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(IWJ・高橋香菜子)

特集 TPP問題

 9月22、23日に行われた米国ワシントンでの甘利明経済再生担当大臣と米通商代表部(USTR)のフロマン代表との閣僚協議で、日本側は牛肉などの関税に相当踏み込んだが、米国の譲歩しない強固な態度の前に、物別れに終わったと伝えられている。

 9月27日、「TPPをめぐる運動のこれからを考える9.27全国交流集会」と題した集会が、千代田区・明治大学リバティタワーで開催された。東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏、アジア太平洋資料センター(PARC)事務局長の内田聖子氏、岩手県農協中央会常務理事の畠山房郎氏による講演が行われ、参加者らによるTPPに関する報告と多くの意見表明が行われた。

■ハイライト

  • 全体会
    報告 鈴木宣弘氏(東京大学大学院教授)「いま世界と日本の流れの中でのTPPの意義」
    報告 内田聖子氏(アジア太平洋資料センター〔PARC〕事務局長)「TPP交渉はじめ通商交渉の現局面と国際的な対抗運動」
    報告 畠山房郎氏(岩手県農業協同組合〔JAいわて〕中央会常務)
  • 第1分科会「TPPやその先取りの動きへの対抗運動」
    TPPに対抗する地域づくり運動(STOP TPP山形県民アクション)/TPP先取りの「農業改革」への対抗運動(全農協労連)/その他医療分野の動き、郵政の動き
  • (第2~第4分科会は録画に含まれません)
  • 全体会(分科会報告とまとめ)
  • タイトルTPPをめぐる運動のこれからを考える9.27全国交流集会
  • 日時 2014年9月27日(土)
  • 場所 明治大学リバティタワー(東京都千代田区)

TPPのもう一つの側面は「経済ブロック化の覇権争い」

 TPPへの反対を説き続け、熱い語りで知られる鈴木宣弘・東京大学大学院教授は、TPPは「聖域なき規制緩和」というだけではなく、もうひとつの面があると指摘。

 それは、環太平洋地域における、米国と中国の「経済ブロック化の覇権争い」であるという。1929年の世界恐慌後に経済ブロック化が進む中、第二次世界大戦に突入したという経験を思い起こす必要があり、「日本がアメリカに加担し続けることで、日本や世界の未来を潰してよいのか」と、警鐘を鳴らした。

 鈴木氏は、今回の閣僚協議の決裂により、危機を乗り切ったかに見えるが、実は「米国への譲歩」があったと、厳しい認識を示している。

 「米国に対して自分たちは踏みとどまったというパフォーマンスで、巧妙なごまかし。次のステージにのぼるためのステップにすぎない」

 その背景には、これまでの日本政府の交渉姿勢がある。

 今年の4月、日豪経済連携協定(EPA)において、牛肉の関税を38.5%から19.5%に下げることが取り決められた。その際に「これをレッドライン(歯止め)として米国と交渉ができるので、国会決議違反だがやむを得ない」と説明した日本政府だったが、その後、読売新聞とTBSが、19.5%を大幅に引き下げた「9%で合意」と報じている。

 誤報とされたこの「9%」だったが、米国は9%でも認めないということが判明した一方、「9%が既成事実化してしまった。これがプロセスだ」と鈴木氏は解説。「自分たちは(譲歩しないよう)がんばっているという雰囲気だけ作り出している」。

人々からむしり取り、儲ける「1%」が主張する「トリクルダウン」は自己矛盾

 鈴木氏また、「絞りとって儲ける人たちが主張する、『トリクルダウン』は自己矛盾」だと厳しく批判。

 「一握りの企業の利益と政治資金で結びついた政治家、天下りで結びついた官僚、スポンサー料で結びついたマスコミ、研究資金で結びついた研究者」。これが1%のムラとして君臨して、いろいろな形で人々からむしり取る構図が「レントシーキング」であり、そこから滴り落ちる「トリクルダウン」で皆が潤うという彼らの主張は「嘘だ」と喝破した。

 加えて、TPPに先駆けて「アメリカからの指令ではなく、日本自らが行っているとしている」軽自動車税の引き下げ、がん保険などの国内の規制緩和の問題にも言及。

 たとえば、350兆円の郵貯マネーを「喉から手が出るほどほしい」米国保険業界から「対等の競争条件にせよ」と言われ、日本は民営化を実行。その結果、「かんぽ生命が大きすぎて競争できないと、米国保険会社のアフラックが怒り、全国の郵便局でアフラックの保険を売ることになった」と解説した。

 鈴木氏は、これは対等な競争でも、規制緩和でもなく、米国が「自分に市場をよこせ」ということを露骨に要求するのがTPPであると断じた。

「農産物の関税交渉」といわれるTPP、「非関税分野」に最大限の注意を

 PARC事務局長の内田聖子氏は、今回の閣僚協議の決裂を受けて、「ちょっとホッとしているのが実感」と心境を明かした。

 内田氏は、日本がTPP交渉に参加してからの動きを振り返り、毎回「今回で妥結か」と言われながら、進んでいない現状を説明。その中核にある日米交渉の遅々とした進行具合に、「他国はかなり白け、冷ややかに見ている」と分析した。

 加えて、日本のメディアでは「農産物の関税交渉」と報じられるTPPだが、米国が狙い、他国が注視する「非関税分野」に最大限の注意を払う必要があると指摘。非関税分野に入るのは、サービス、貿易、各国の法律・規制など、大企業がビジネスを行う上で障壁とされるものであり、「これらを徹底して壊すことがTPPの重要な意図」と解説した。

関税率ではなく「セーフガード」に焦点化した報道は、「重大なミスリード」

 内田氏はさらに、日本では報じられなかった、ニューヨークでの外交問題評議会における講演で、安倍首相が「私は大胆な方法でTPP市場アクセス(関税問題)を改善する用意ができている」と発言したことを紹介。今回の交渉の譲歩案が「何%という数字の提示だったのか」について、徹底的に究明する必要があると強調した。

 一方、現在日本のメディアでは、「セーフガードでアメリカの要求を呑めば、日本の交渉はうまくいったのかと思わせられるような重大なミスリードが行なわれている」と指摘する内田氏は、「何%を前提としてセーフガードの話をしているのかという、関税の数字が出てきていないこと」へ中止する必要があるとの認識を示した。

TPP以外の自由貿易協定、「TTIP、TISA」も進行中

 内田氏は、米国通商政策アジェンダに位置付けられている、TPP以外の自由貿易協定、TTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ協定)、TISA(新サービス貿易協定)にも言及。49カ国の参加国の中に日本も入っているというTISAは、TPPの非関税分野とイコールであり、医療、保険、金融、貿易などのサービス分野が含まれると説明した。

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“TPP交渉 日本側の姿勢は「パフォーマンスで巧妙なごまかし」 ~専門家らが大手メディアによる「重大なミスリード」を指摘” への 2 件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    日本のマスコミによる「重大なミスリード」を指摘、TPP交渉の日本側の姿勢は「パフォーマンスで、巧妙なごまかし」 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/171306 … @iwakamiyasumi
    政官財による嘘を、報道が詭弁で後押しする。騙されないためにも見てほしい記事です。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/516904897183113216

  2. @megumegu1085さん(ツイッターのご意見) より:

    調べれば調べる程、知れば知る程恐ろしい。TPPには最後まで反対し続ける。➔【TPP交渉 日本側の姿勢は「パフォーマンスで巧妙なごまかし」~専門家らが大手メディアによる「重大なミスリード」を指摘】 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/171306 … @iwakamiyasumiさんから
    https://twitter.com/megumegu1085/status/517331893243486208

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