パリのテロ事件を受け石破茂氏が共謀罪「成立させるべき」!? 平岡元法相は「共謀罪を作らずパレルモ条約に批准しようとしたが外務省の抵抗が強かった」と官僚の“裏事情”を告発! 2014.7.31

記事公開日:2014.7.31 テキスト動画
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(IWJ・原佑介)

特集 共謀罪|特集 秘密保護法
※2015年11月21日テキストを一部加筆しました!

 パリでの同時多発テロ事件を受け、自民党幹部や閣僚などが「共謀罪」の導入を口にし始めている。石破地方創生担当大臣は、2015年11月21日、TBS「時事放談」の収録で、「テロは待ってくれない」として、共謀罪を「成立させるべきだ」との考えを示した。

 自民党・高村正彦副総裁などは、国連の「国際組織犯罪防止条約」に批准するために共謀罪などの導入が必要だと主張しているが、日弁連などは、現時点の法制度でも条約批准は可能であるとの見方を示している。

 ではなぜ、政府は条約批准を急ごうとしないのか。

 日弁連が2014年7月31日に開いた市民勉強会で、野田佳彦内閣で法務大臣を務めた平岡秀夫氏は「外務省の抵抗が強かった」と暴露。平岡氏は、共謀罪を導入せずに条約に批准し、過去3度も廃案となった、共謀罪という「ゾンビ法案」に終止符を打とうとしたが、外務省の抵抗が強く、実現せずに終わったと振り返った。

■ハイライト

  • 「共謀罪法案の刑事法上の問題点について」 松宮孝明氏(立命館大学大学院法務研究科長)
  • 「国連越境組織犯罪防止条約の批准に共謀罪を創ることは不可欠か」 平岡秀夫氏(元法務大臣、日本弁護士連合会 共謀罪法案対策本部委員)

共謀罪法案浮上の経緯

 2000年11月の国連総会で、国境を越えた組織犯罪を国際的に防止し、取り締まることを目的にした「国際組織犯罪防止条約」が採択された。

 同条約は加盟国に、共謀罪、もしくは結社罪、参加罪などの法整備を義務付けている。現在170カ国以上が批准しているが、日本は原署名国でありながら国内法整備ができていないことを理由に、いまだ批准には至っていない。

 かつての政府原案によると、「共謀罪法案」は、4年以上の懲役刑に該当する犯罪について、「共謀」することを罰するものである。

 これは、被害が出て初めて処罰対象になるという「近代刑法の原則」から根本的に逸脱しており、また、「4年以上の懲役刑」に該当する犯罪は600種類以上と広範で、恣意的な運用が懸念される。話し合っただけで処罰されるため、「思想・信条の自由」を奪う法律と批判する声もある。

 日弁連の共謀罪等立法対策ワーキンググループ副座長・山下幸夫弁護士は、岩上安身のインタビューに対し、「理屈上、『アイコンタクト』だけで共謀が成り立ってしまう」と共謀罪の脅威を語っている。

 今も政府は条約加盟のため、そして2020年の東京五輪に向けたテロ対策として、共謀罪導入の必要性を訴えている。しかし、松宮氏は「共謀罪を創設しなくても条約加盟はできる」「条約はテロ対策を目的にしていない」として異論を唱える。

主眼は国境を越える「組織的経済犯罪」の対策で、テロ対策ではない

 松宮氏は、「この条約の主眼は国境を越える『組織的経済犯罪』の対策で、テロ対策ではない」と断じる。

 同条約第2条は、「『組織的な犯罪集団』とは、3人以上からなる組織された集団であって、直接、または間接に金銭的利益、その他の物質的利益を得るため、一定期間存在し…」と定め、条約の主旨を表している。

 つまり、取締目的はテロリストというよりも、経済のグローバル化を背景に国際的な経済犯罪を行う組織、例えば「偽ブランド販売」や「麻薬の売買」などを展開する組織をイメージすればいい、と松宮氏はいう。

 「主眼は、『処罰の隙間』をなくすこと。『ある国では取り締まれても、別のある国ではそういう行為は犯罪化されていないので取り締まれない』という事態をなくし、どこの国でもその犯罪を処罰でき、犯人引き渡しもできるようにしよう、というもの。例えば条約には、『マネーロンダリング』の処罰を立法化していない加盟国には、立法化の義務付け規定があったりする」

日本が共謀罪法を必要としない根拠

 「この条約で一番大事なのは、犯罪行為が行われた国と、犯人引き渡しを求める国との間で、いずれも犯罪行為が処罰される。双方で可罰的である、ということが担保できればいい」

 つまり、双罰性があればいい。松宮氏は条約の主旨をそう説明した上で、共謀罪を創設せずとも条約に批准できる、と主張。その根拠として、次の東京高裁の判例を紹介した。

 米国で麻薬・ヘロインの輸入の「共謀」を繰り返し、起訴された米国人が日本に逃げ込んだ。米国は日本に対し、日米犯罪人引渡条約もとづいた犯人引渡請求をした。日本にはヘロインの輸入の共謀を裁く法律はなく、犯罪に該当するとは言えなかったが、東京高裁は1989年3月、共謀した犯人を「幇助犯」とみなすことで、「逃亡犯罪人を引き渡すことができる場合に該当する」と判決をくだした。

 松宮氏は、「条約の最低限の要求からすれば、(条約批准のために)日本で必ずしも立法が必要ない根拠となる判例だ」と語った。

 条約批准のために共謀罪創設が不必要であることは、多くの法学者が指摘している。駿河台大学法科大学院の島伸一教授は、昨年6月に行われた院内集会で、「共謀罪の用語が日本に存在しないだけで、新設しなければならない、という議論は、あまりに短絡的である」と喝破している。そちらも参考にしてほしい。

米国では「顕示行為」がなければ「共謀」を裁けない

 共謀罪が創設されれば、「犯罪をしよう」と話し合うこと事態が罪とみなされ、「冗談だった」が通じない可能性がある、と松宮氏は懸念を示す。

 米国の連邦法では、麻薬関係の犯罪や資金洗浄のような組織犯罪を除き、計画した犯罪の実行に本気であることを示す「顕示行為」がなければ、「共謀」を裁けないという。

 松宮氏は、「米国法では、共謀で人を処罰するための法的証拠として『顕示行為』が必要とされる。顕示行為がなされた証拠がないと、共謀で有罪判決は出せない」と紹介。共謀罪による不当逮捕や法の乱用を防止する措置があることを説明した。

 その上で、「かつての共謀罪法案の日本政府案では、『顕示行為』の有無は考慮されていなかった。本当にただの『共謀』だけで裁けるようになっていた」と危機感を示した。

「外務省の抵抗が強かった」元法務大臣が告発!

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

    何故、外務省が抵抗したか。それを考えることからこの国の在りようが見えてくる。

  2. なぜ急ぐのでしょう? より:

    今度は共謀罪ですか。次から次へと目まぐるしいですね。解釈改憲から日も浅いのになぜ急ぐのでしょう。
    共謀罪も米国に範をとってます。拙速なのでご指摘のようにほころびがあるようです。
    アメリカによる要望や押しつけは、これまで何度かありました。学校の教科書にもあるのはペリーの黒船による開国、マッカーサーのGHQによる戦後のはじまりなどです。「押し付けられた」という場合は「ペリーのときもそうだけど、戦後も同じように」というまくら言葉を落としていると思います。
    安倍政権による急進的な変革は、アメリカの意向を汲んだアメリカかぶれによるアメリカ主導の変革です。たしかにアメリカ側は、アーミテージなど共和党よりの偏向した考えの持ち主ですが、ペリーやマッカーサーがアメリカ政府に近い人間とはいえません、アメリカの政治干渉は政府高官でなく、ときに、ややこしい形態をとりがちと思います。
    秘密保護法や、集団的自衛権についての政府のおかしな自信は「アメリカがやっていることだから」です。「日本版」の急進設置はアメリカに範をとっています。他の国の制度は決して導入しない。
    アメリカも建前上は中国との結びつきをつよめようとしていますが、その実、自国の衰退と中国の進出への恐れがあると思います。日本はアメリカの恐れに敏感にこたえ隣国に反発しているとも考えられます。急激、急進的な変革をするので不安不信になりアメリカに特別扱いされたくて隣国をおとしめているともいえます。
    国際情勢が変わったから、と、スローガンのように言いますが、自分たちが変えたという観点はなく受身です。情勢分析をした結果そうだとみせるのは政治家だからでしょうが、国際情勢の変化には日本も加わっており、それには平和を維持して世界にそのことを知らしめてきたこともあります。
    つぎつぎと繰り出される政府見解はこれまでの歴史的経緯を自己否定しアメリカから押し付けられた要望事項をアメリカ以上に急速に変えようとしていると思います。

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