「延長が続けば免許期限の意味がない。脱法行為だ」 〜上関原発建設予定地の埋立免許を巡り抗議の申し入れ 2014.6.16

記事公開日:2014.6.20取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「仮に埋立免許が下りたら、上関原発の建設着工はできるのか、と中電に聞いた。中電は『設計もできていないので目処は立っていない。しかし、すぐに着工できるように免許を取得しておく』と言う」──。

 2014年6月16日、山口市の山口県庁で、「中電による公有水面埋立免許延長申請に係る判断先送りに対する申し入れ」があった。山口県が、中国電力から出されていた上関原発予定地の公有水面埋立免許の延長申請について、判断を先送りしたことに抗議するもので、「上関原発を建てさせない山口県民大集会」実行委員会の15名が抗議の申し入れと質問を行なった。

 同実行委員会は、今年3月、7000人を集めて開催された「上関原発を建てさせない山口県民大集会」にて採択された決議と、公有水面埋立免許の不許可を求める要望署名10万6507筆を、村岡嗣政山口県知事宛に提出した。しかし、村岡知事は5月14日、中国電力からの埋立免許延長申請に対し6 度目の質問を提出し、その回答期限を2015年5月15日に設定することで、実質的に判断を1年間先送りしている。

※6月16日の申し入れの模様を6月20日(金)に録画配信しました。

■全編動画

  • 内容 申し入れ 14:00~15:00

公有水面埋立免許を即刻、不許可に!

 「上関原発を建てさせない山口県民大集会」の共同代表、那須正幹氏が申し入れ書を読み上げ、山口県商工労働部の末永睦氏に手渡した。

 申し入れの理由について、那須氏は「中国電力の埋立免許の延長申請に対して、村岡知事は6度目の質問を提出した。その回答期限を2015年5月15日にしたことは、山本繁太郎前知事と同様に、判断の先送りをしたことに他ならない」と断じ、1年間の回答期限を設定した根拠を質した。

 また、「5月21日、福井地裁は大飯原発運転差し止め訴訟の判決文で、『人格権は憲法上の権利であり、これを越える価値を見出すことはできない』と明記した。この判決を判断の参考にして、公有水面埋立免許を即刻不許可とすることを求める」と述べ、合わせて上関原発計画の白紙撤回を明確にすることも要望した。

「正当な事由の判断」ができるまで審査は続く

 今回、申し入れの場に出席したのは以下の人々である。まず、県の商工労働部の末永氏、商政課、港湾課の担当職員。実行委員会側は「上関原発建てさせない山口県民大集会」の共同代表の那須正幹氏、県民監査にかかわる「住民訴訟」弁護団長の田川章次弁護士、事務局長の草地大作氏、副運営委員長の岡本正昭氏、木佐木大助県議会議員、戸倉多香子県議会議員、藤本一規県議会議員、佐々木明美県議会議員、上関原発周辺の2市4町の反対議員連盟幹事長の小中進氏など、15名が並んだ。

 まず、草地氏が「6月末日を目処に、文書にて回答を要望したい」と要請。先の質問に対しては、口頭にて回答を求めた。

 末永氏は「公有水面埋立免許延長申請に関しては、事業者の変更許可の申請内容を把握し、法律に基づき適正に審査する責務がある。法律上の正当な事由の判断ができるまでは、審査は継続する」と応じ、1年間の回答期限を設定した根拠に関しては、「前回の補足説明での事例に倣い、同等の期限とした」と述べた。

 また、「県民の人格権を守るために、上関原発計画の白紙撤回を標榜すること」という申し入れについて、末永氏は「上関原発計画は、国のエネルギー基本計画に基づき、中国電力が進めてきたもの。(撤回か否かの)判断は事業者自らがするものと考える」と答えた。

中国電力が出してきた真っ黒な申請書

 質疑応答に移り、田川弁護士が「中国電力に開示を求めた延長申請書、山口県からの回答書、延長の経緯に関する書面は、どれも黒塗りだ。なぜ、黒塗りにするのか」と質問した。

 県港湾課の担当者は「延長審査書に関しては現在審査中で、『意思形成過程の情報』にあたるため、開示ができない」とした。田川弁護士が、その法的な根拠を訊ねると、担当者は「情報公開条例では、意志形成課程での情報は秘匿できる、となっている」と答えた。

 田川弁護士が「現在、住民訴訟をやっている。いずれ、裁判所からその文書の開示請求があると思う。その時にも秘匿するのか」と迫ると、港湾課担当者は「今は言うことはできない。裁判所での扱いは一般とは異なると思う。被告の立場になった場合にどうなるかを、ここでは回答できない」と述べた。

 さらに、田川弁護士が「6月26日に、仁比聡平参議院議員と住民訴訟原告団が、経産省と折衝する。山口県は、延長判断について国に指導を求めたか」と訊くと、県は「延長の申請に対して、国に判断は求めていない」と答えた。

県も中電も、わざと引き延ばしているのではないか?

 実行委員会側は、県の不明瞭な回答に納得せず、「悪く言うと、県は回答不可能な要求を、中国電力にしているのではないか。今回の1年延長の法的根拠もあいまいだ。国のエネルギー政策上のことなら、県も事業者も回答はできない。知事の判断で決めるべき性質のもので、なぜ不許可にしないのか」と重ねて質問した。

 港湾課担当者は「政府のエネルギー基本政策には、原発新設について明記していないが、中電は『上関原発は重要なベースロード電源の一部』とは位置づけている。その位置づけのあり方が、まだ判断するに至らないので補足説明を求めたのだ」と、同じ回答を繰り返した。

 それに対し、実行委員会側は「中国電力も県も、上関原発建設をもっと強く後押しするような政策を、国が発表するのを待っているのではないか。そのために、引き延ばしているのではないか。正しい判断をしてほしい」と要求した。

二井元山口県知事は「延長申請は認めない」と言った

 藤本議員は「2012年6月、二井元山口県知事は伊藤議員への答弁で『現行計画での延長申請は認めない』と言った。しかし中電は、前の計画のままの土地利用計画で申請している。これは裁量権の乱用ではないか」と述べて、二井元県知事の答弁との整合性を問い質した。港湾課担当者は「その話は、中電から変更申請がされる前のこと。『変更された場合は審査する』とも言っている」と述べた。

 藤本議員は「審査期間が32日間と決められているものを、2年6ヵ月も引き延ばした前例はあるのか。一般の業者は、審査に不備があったらすぐに不許可になる。しかし、中電に限って、なぜ猶予があるのか。不公正だと思わざるを得ない」と断じた。

 また、田川弁護士は「必要な情報開示がされなくては、判断ができない。県民が関与しなくてよい、というのはおかしい。県民は原発を心配し、危惧している。それに対して情報を隠すことは、行政としてはやってはいけない。福島原発事故の先例があるから、心配しているのだ」と訴えた。

原子炉設置許可が下りていない上関原発は「新設」となる

 県商工課の末永氏が、「いったん修正申請が出された以上、法律に基づき判断をしなければならない。今回、正当な判断ができないので、補足説明を求めた。情報開示に関しても、情報公開条例に従って開示している。現在は、意思形成過程に関わるので公開できないが、判断ができたら、情報公開はする」と答えた。

 実行委員会のメンバーは、「国の新エネルギー政策の基準にふさわしいことと、新たな安全基準に適合すること。この2つがクリアされれば、埋立免許延長の正当な理由になるのか」「免許には期限があるのに、延長が続けば、免許期限の意味がなくなる。これは脱法行為だ」「今度の裁判(県民監査にかかわる住民訴訟)では、法廷で32日間延長について、村岡知事にきちんとした説明を求める」など、質問や意見を繰り返したが、県からは中身のある回答は得られなかった。

 最後に、実行委員会側が「上関原発は新設なのか」と確認すると、商政課担当者が「新設なのか定義されたことがなく、県としては答えられない。新規立地ではある。建設中かどうかというと、それも何とも言えない。茂木経産大臣は『原子炉の設置許可が下りているものに関しては、新増設には当たらない』と言う。上関原発については、設置許可は下りていない」と答えた。その回答から委員会側は、「上関原発は、新設だと理解した」と述べた。

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