2014/05/13 ODA大綱見直しで日本が「武器援助国」に!? ~国内53団体がODAの「非軍事主義」理念の堅持を求める声明提出

記事公開日:2014.5.13
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 日本が発展途上国に対して行っているODA(政府開発援助)の「非軍事的手段を通じた国際社会の平和共存」という基本理念が今、安倍政権によって書きかえられようとしている。

 2014年3月28日、岸田外務大臣は「ODA大綱」の見直しを発表した。見直しに当たって岸田大臣は私的な有識者懇談会を設置し、その答申を受けて年内の改訂をめざすとしている。

 「ODA大綱」は、「1.環境と開発の両立」「2.軍事的用途及び国際紛争助長への使用の回避」「3.軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入などの動向への注意」「4.民主化の促進、市場経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況への注意」の4原則からなり、援助の選定基準となっている。

 しかし今回の大綱見直しでは、2013年12月に閣議決定された国家安全保障戦略をODA大綱の指針を示すものと位置付けられており、ODAを「安全保障上の戦略」として活用することを示している。さらに政府は、武器輸出3原則を緩和するなど、武器輸出や武器の共同開発を進める意向だ。海外への軍事拡大にODAが活用される可能性が高まりつつある。

 5月13日、ODA改革ネットワークや日本国際ボランティアセンター(JVC)、ヒューマン・ライツ・ナウなどが呼びかけ人となりNPO、NGOなど計53団体が連名で、ODA大綱見直しにおいて「非軍事主義」理念の堅持を求める市民声明を安倍総理に提出。同日午後6時半より記者会見を行った。

  • 記事目次
  • 安倍総理の掲げる「中国包囲網」に活用されるODA
  • ODA「軍事化」の裏に莫大な企業利益

  • 谷山博史氏(日本国際ボランティアセンター代表理事)、田中雅子氏(アジア女性資料センター)、高橋清貴氏(ODA改革ネットワーク世話人)、伊藤和子氏(ヒューマンライツ・ナウ事務局長)
  • 場所 参議院議員会館(東京都千代田区)
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安倍総理の掲げる「中国包囲網」に活用されるODA

 司会を務めたJVC代表理事の谷山博史氏は、集団的自衛権、秘密保護法、武器輸出3原則緩和の流れのなかでのODA大綱見直しで、「『自衛隊自身によるODA』が可能になる懸念がある」と語った。

 2006年、当時の安倍晋三官房長官は、「テロ・海賊対策に限定し使用」などを条件に、武器輸出3原則の「例外」とする談話を発表。それをきっかけに海賊対策・テロ対策を名目としたODAによる「武器援助」が、インドネシア向け無償資金協力事業として始まり、巡視船が提供された。

 ODA改革ネットワークの世話人を務める高橋清貴氏は、「これまでは『武器』の定義として曖昧なもの、どんなものでも国会で審議にかけられていたが、この2006年の安倍官房長官の『例外』によって、その後審議されなくなった」と指摘した。

 しかし実際は、ODA大綱4原則が歯止めとなり、こうした「武器援助」の案件数はほとんど行われていない。

 そんななか、安倍総理は2013年7月27日、ODAを活用したフィリピンへの巡視船10隻の供与を表明した。2014年から3年にかけて供与される予定で、安倍総理の掲げる「中国包囲網」を意識した「ODAの戦略的活用」の初のケースと言える。

 今回の市民声明では、「大綱見直しによって4原則、特に『軍事的用途への回避』や『軍事支出や武器開発・製造などの動向への注意』が緩和されることになれば、『武器援助』や軍事的用途との境界があいまいなODAが増加することは必至であり、これまで日本の政府や市民社会が国内外で積み上げてきた平和理念を広める努力を水泡に帰させる恐れがある」と警鐘を鳴らしている。

ODA「軍事化」の裏に莫大な企業利益

 ODA大綱見直しに特に強い意欲をみせているのが、財界である。経団連はこれまで何度となくODAの見直しを求める声明を発表している。

・経団連HP 経団連のODA見直しを求める声明

 「官民一体」となり、環境、防災、医療、衛星、情報通信、スマートコミュニティ等のあらゆるインフラを、ODAを使って発展途上国に「輸出」し、「定着」させ、新たな市場を創出するのが狙いだ。

 高橋氏によれば、有識者懇談会でも盛んに「オールジャパン」が叫ばれ、「官民の連携」「国と企業との連携」が大綱見直しのポイントとなっているという。高橋氏は、有識者懇談会の委員の一人でもある経団連メンバー(※)が、この見直しについて「もっと早くやるべきだ」とはっぱをかけている場面を見たという。

(※)有識者懇談会委員には、経団連国際協力委員会共同委員長の矢野薫氏(日本電気株式会社取締役会長)の名前がある。→ 外務省HP 政府開発援助(ODA)大綱見直しに関する有識者懇談会の開催

 安倍政権は2013年3月1日、航空自衛隊の次期主力戦闘機である米ロッキード・マーティン社製のF-35について、武器輸出3原則の「例外」扱いとして、日本企業の部品製造への参画を容認する方針を発表した。そして武器輸出3原則の緩和は、日本企業が兵器の製造・輸出に本格的に参入できるようになることを目的としている。

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 国の防衛費が2003年以降減少を続けるなか、国内企業の軍事産業は不振にあえぎ、特に2005年以降は、防衛装備品の契約額が整備維持経費を下回る「赤字操業」が続いていた。そんな中での武器輸出3原則の緩和と、今後予想されるODAの「軍事化」は、防衛企業、財界にとっては「千載一遇のビジネスチャンス」なのだ。(IWJ・佐々木隼也)

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コメント “2014/05/13 ODA大綱見直しで日本が「武器援助国」に!? ~国内53団体がODAの「非軍事主義」理念の堅持を求める声明提出

  1. 財界は「官民一体」となり、あらゆるインフラを、ODAを使って発展途上国に「輸出」し、「定着」させ、新たな市場を創出するのが狙いだ。

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