【特別寄稿】新国立競技場、いったい何が問題なのか?(森 桜 神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会・共同代表) 2014.3.19

記事公開日:2014.3.19 テキスト
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(森 桜 神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会・共同代表)

 2020年の東京五輪のメイン会場となる新国立競技場が今、大問題になっている。神宮外苑の国立競技場を建て替える計画で、8万人の観客席に開閉式屋根をかけ、スポーツだけでなくコンサートにも使える多目的施設にするという。この案は2012年の国際デザイン・コンクールで決まった。審査員は建築家の安藤忠雄さんら10人。世界各国から46点の応募があり、イギリスの建築家、ザハ・ハディドさんの案が選ばれた(図1-2)。現在はザハ案を25%縮小し、日建設計などの4社JVにより設計作業が進められている(図1-4/図2)。

▲図1 現状と計画変更の経緯(作成/提供:古市徹雄)

▲図1 現状と計画変更の経緯(作成/提供:古市徹雄)

▲図2 現案の模型(提供:上村千寿子)

▲図2 現案の模型(提供:上村千寿子)

 では、いったいこの計画の何が問題なのか? 大まかに下記の3つがあげられる。

  1. 建物が大きすぎる
  2. お金がかかりすぎる
  3. ザハ案に決まった理由がわからない

記事目次

1-1. どのくらい大きいのか?

 新しい競技場の広さはいまの競技場の4倍以上(延床面積比)。当然、今の敷地に入らないので、隣の日本青年館や明治公園をつぶして敷地を拡張し、都営霞ヶ丘アパートの住人たちも退去させられる。競技場の高さは70mでいまの2倍以上、23階建てのビルに相当する。こうして巨大な建造物が神宮外苑の銀杏並木や絵画館の向こうにそびえ立つことになる。(図3/図4)

▲図3 新国立競技場と絵画館(提供:日本スポーツ振興センター)

▲図3 新国立競技場と絵画館(提供:日本スポーツ振興センター)

▲図4 現競技場との比較(作成/提供:上村千寿子)

▲図4 現競技場との比較(作成/提供:上村千寿子)

1-2. なぜ、こんなにも大きいのか?

 そもそもコンクールの募集要項に問題がある。本来ここは、東京を代表する風致地区に指定されていて、景観を守るために建物には20mの高さ制限があった。それなのに、その規制を反故にして75mの高さまで建ててよいとした。なぜ規制をはずしたのか?主催者の日本スポーツ振興センター(以下JSC)は手続き上問題ないとしているが、IOCの「オリンピック・ムーブメンツ・アジェンダ21」では「施設の建築について、地域にある制限条項に従わなければならず、まわりの自然や景観を損なうことなく設計されなければならない」とある。この計画はことの発端からオリンピックのアジェンダ(行動計画)に相反しているのだ。

2-1. どのくらいお金がかかるのか?

 コンクールで1,300億円の予算だった建設費は、基本設計の現時点ですでに約1,700億円まで増えている。しかも一時は3,000億円かかるという試算が出てJSCは計画を縮小したが、今の案でも専門家の間では3,000億円を越えるだろうとの見方が強い。ちなみに同規模の日産スタジアムは700億円、ロンドンのオリンピック・スタジアムは800億円程度でできている。さらに新国立競技場の維持費は今の競技場の9倍。少なくとも毎年45億円が必要になる見込みだ。

2-2. なぜ、こんなにもお金がかかるのか?

 まず、多目的施設を目指したところから問題が始まっている。スポーツだけでなくコンサートを開くために必要とされる開閉式屋根は、屋根をかけることで可動、空調、照明、メンテナンスのための設備が新たに必要となり、それらが建設費を押し上げている。また、開閉式屋根は常に動く状態を保たなくてはならないため、維持費も増える。

 次に、ザハ案の構造に原因がある。この案では320mもの巨大な橋梁を2本かける。その長さは隅田川の永代橋の約2倍に相当する。建築というよりも土木工事の規模になり建設費が跳ね上がる。さらに、ザハ案の形にも問題がある。この案は複雑な3次曲面で構成されているので、それを実現させるための薄くて加工しやすい合成樹脂などの高価な材料を大量に使うことになり資材費が膨れる。つまり、多目的施設を目指した上にザハ案を選んだことで巨額の金がかかることになったと言っていい。

3-1. ザハ案の評価

 コンクールでザハ案を選んだ審査員はこう言っている。建築家の安藤忠雄さんは、

(…会員ページにつづく)

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