2014/02/15 「東京も危機一髪だった」 ~菅直人出版記念トークライブ ~「原発ゼロ」の決意

記事公開日:2014.2.15
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 「原子力規制委員会は国会同意人事で、安倍政権によって変えられていない組織。ここに手を付けられたら、NHK経営委員会のようになる」──。

 2014年2月15日、東京都新宿区のロフトプラスワンで、「菅直人出版記念トークライブ ~『原発ゼロ』の決意」が行われた。菅直人元総理大臣のほか、三上元氏(静岡県湖西市長)、ミサオ・レッドウルフ氏(首都圏反原発連合)がゲストとして登場した。

 菅氏は、福島第一原発4号機の使用済み燃料プールの水位が、偶然により保たれて、東京が紙一重で救われたことなど、3.11当時の裏話から、再び原発推進に舵を切る安倍政権への懸念まで、約2時間にわたり語った。

※掲載期間終了後は、会員限定記事となります。

  • 記事目次
  • 「水の抜き忘れ」という最大の幸運
  • 首相に、ほとんど情報を伝えなかった東京電力
  • 「保守系脱原発派」の拡大が不可欠
  • 民主党時代の方がまだよかった?
  • 今、「原発ゼロ」であることの意味
  • 規制委員会の人事も狙われるのか

■Ustream録画(18:58~ 2時間18分)

  • 出演 菅直人氏(元内閣総理大臣)
  • ゲスト 三上元氏(静岡県湖西市長、脱原発をめざす首長会議世話人)/ミサオ・レッドウルフ (Misao Redwolf) 氏(イラストレーター、首都圏反原発連合)
  • 司会 中川右介氏(作家)

「水の抜き忘れ」という最大の幸運

 はじめに、司会の中川右介氏(作家)から、発売されたばかりの菅氏の著作『「原発ゼロ」の決意 元総理が語る福島原発事故の真実』(七つ森書館)について、「この本の第2章は、2012年11月にロフトプラスワンで行われた、菅氏のトークイベントが素材になっている」との紹介があった。

 登場した菅氏は、冒頭で「事故当時『4号機の使用済み燃料プールには、水がないんじゃないか?』と、アメリカも心配していた。水があったから、われわれは今、こうして、ここに生きていられる。東京電力の予定では、3月11日には原子炉の水を抜いて工事に入る予定だったが、実は、ミスで水を抜くのが遅れていた。これが不幸中の幸いだった。残っていた水が、冷却が止まって水の蒸発が始まったプールの方へ流れ込み、核燃料の露出をかろうじて防いでいた」と、生々しい舞台裏を語った。

 さらに、「3月11日、地震発生のわずか4時間後(18時50分)には、メルトダウンが始まっていたというのが、政府事故調(東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会)の正式な報告。しかし、首相である自分には、(メルトダウンは)まったく知らされていなかった。のちに、事故調の委員長である畑村洋太郎氏は、この件について、『幸運だった』『しかし、幸運は二度来るとは限らない』と述べている。それほどギリギリだったという感覚を、もし、今、安倍総理が持っていたら、『原発を止めておこう』と思うのではないか。(都知事選で脱原発を訴えている)細川護煕氏や小泉純一郎氏は、そういう感覚を持ったのではないだろうか」と続けた。

首相に、ほとんど情報を伝えなかった東京電力

 当時の報道については、「結果として、正しくなかったと思う。本当の状況は、現場の責任者である吉田昌郎所長ですら、わからなかったはずだ」とした上で、次のように続けた。

 「錯綜した情報の中で『水がある』と伝えられれば、まだ、メルトダウンは起きていない、という判断になる。それが水位計の故障だとわかったのは、あとになってから。1号機の爆発は、3月12日14時頃だったか(注:正確には15時36分)、自分には報告が来ておらず、テレビをつけたら爆発の光景が映し出されていた。なぜ、東電は報告をよこさないのか。現場と本店をつなぐモニターで知っていたはずだが……。特に、東電本店にはいろんな思惑があって、わざと知らせなかったのだろうと思う」。

 さらに、「自分は当時、原子力災害対策本部の本部長という立場だった。シビアアクシデントの時は、法律上、自動的に内閣総理大臣が担当することになっている。細かいことはわからなくても、少なくとも爆発時のあの映像を見れば、『大爆発が起きた』ということはわかる。(爆発をすぐに報じなかった)テレビ局には局の都合があるだろうが、そもそも東電が伝えない。そこはメチャクチャだった」と述べて、メディアよりも、まず、東京電力の対応を批判した。

 また、このイベントの前日に、中部電力が原子力規制委員会に対し、浜岡原発の再稼働申請をしたことに触れて、菅氏は「仮に、中部電力が『南海トラフが危ないから原発を止めよう』と思っても、すべての電力会社が『地獄に行くのも、天国に行くのも一緒』とばかりに、お互いを縛り合っている。非常に日本的とも言えるが、問題がある」と指摘した。

「保守系脱原発派」の拡大が不可欠

 ここで、静岡県湖西市長である三上氏が登場した。「脱原発をめざす首長会議」の呼びかけ人に加わったことについて、三上氏は「選挙で選ばれた市長が加入するのは(原発推進派にとって)プレッシャーになる、と説得され、毒を食らわば皿まで、のつもりでやった。そもそも自分は、反対運動をするほどではなかったものの、チェルノブイリ事故やスリーマイル事故を見て、原発は嫌いだった。軍人の家系だったこともあり、国防上の問題でも、原発はリスクが大きいと考えていた。そして、人間は神様じゃないので、人為的なミスというのは(原発でも)避けられない」と話し、もともと原発には反対の立場であったことを強調した。

 今後の運動の広め方については、「自分のことを、『保守系脱原発派』だと自任している。今まで、脱原発活動を行うのは社会党や共産党、社民党など、環境重視の人たちが多かった。しかし、今は保守派も分裂していて、保守系脱原発派の発言を、もっと世に出していくことに全力を上げたい。これからの運動は、これが大事。東京新聞と読売新聞、どっちもバランスよく読まないとダメ」などと述べて、従来の脱原発運動の枠を超えていくことを提言した。

 また、三上氏は「菅氏について、誤解がある」と前置きし、「ひとつも欠点がない人が、いるものだろうか。小さな間違いを100回しても、1回大きな良いことをやったら十分だ。ソチ・オリンピックでの羽生結弦選手だって、2回転んでも金メダルを取っている。菅さんは欠点だらけだが(笑)、薬害エイズ問題では良いことをやった。福島第一原発から撤退しようとした東電に怒鳴り込んだ。『イラ菅だから』なんて批判されたが、あそこで怒らなきゃ人間なのか、と思う。他の人だったら、『浜岡原発を停止する』などとは言えない。あれで世論が変わった」と、ユーモラスな表現で擁護した。

民主党時代の方がまだよかった?

 三上氏と交代し、途中から加わったミサオ氏は、2012年の夏、首都圏反原発連合が、当時の野田首相と会談したことに触れ、菅氏が間に入って両者をつないだことについて、まず感謝の言葉を述べた。

 そして、「その後も、私たちは、大きな脱原発イベントのたびに、さまざまな政治家に招待状を出している。最近送ったレターに対し、野田元首相の秘書から『あなたたちとは一度お話をして意見が合わないので、ご辞退させていただきます』というお断りの返事が来て、その丁寧さに驚いた」と話した。司会の中川氏が「今思えば、民主党はいい党だったのでは? デモの当事者と総理大臣が首相官邸の中で会うなど、ありえないことだった」と問いかけると、ミサオ氏も笑いながら、「最近は、そう思う」と応じた。

 ミサオ氏は「私自身、左派ではないし、3.11以降のデモ参加者たちも、右でも左でもない。しかし、保守系の人からすれば、左派と見られているだろう」と語り、「どうしても、私たちの声が届きにくい保守層に対し、小泉氏や細川氏は脱原発をアピールできる」と評価した。

今、「原発ゼロ」であることの意味

 中川氏は「今、すでに原発ゼロなので、保守的な人々には『このままで行く』と、現状維持を強調すればいい」と笑いを誘い、さらに、「なぜ、今、原発ゼロなのかというと、菅さんが暫定基準を作ったからだ」と、菅氏に当時の状況説明を求めた。

 菅氏は「止まった27基の原発のうち、政治的に止めたのは浜岡1基だ。しかし、経産省幹部は、浜岡は止めても、他の原発は再稼働を進めようと企んでいた。法律上、再稼働は原子力安全・保安院が単独で決められる。しかし、保安院は福島の事故に大きな責任がある。そこで、再稼働には、ストレステスト、原子力安全委員会の承認、地元の合意、総理を含む関係閣僚4人の最終判断、という4つの条件をクリアすることを課した。この暫定基準に基づいて、順次、定期点検に入った原発は、再稼働できずに『自然に』止まった」と話した。

 そして、「今は、規制基準を満たしているかどうかを、原子力規制委員会が評価することになっている。しかし、『地元合意がないと再稼働できない』というのは、暫定基準では文章にしたが、規制基準では明記されていない。そこは、安倍首相も判断が難しいところだと思う」とした。

規制委員会の人事も狙われるのか

 ミサオ氏から「現在の規制委員会に対する、菅さんの評価は?」と尋ねられると、「飯田哲也さんなど数名は別にして、広い意味で、原子力ムラに関係していない学者はいない。田中俊一委員長は、ある時期までは活断層問題などを厳しくやっていたが、最近は『問題ない』などと言うようになった」と懸念を表明。また一方で、次のように述べた。

 「原子力規制委員会は、国会同意人事。当時の自民党、公明党も賛成した。かろうじて、安倍政権によって変えられていない組織なのだ。この規制委員会を、もっと原発推進に都合の良い人選に変えたいのが、今の自民党の本音。もし、この人事に手をつけるようになれば、NHK経営委員会のように、変な意味で利用されるのではないか」と警戒感を示した。

 さらに、政府のエネルギー基本計画をまとめる有識者会議では、原発に批判的な委員がはずされ、ほとんど原発推進派になってしまったことを指摘。「安倍さんが自由にできるところの人事は、すべて入れ替えている」と批判した。【IWJテキストスタッフ・阿部玲/奥松】

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