【東京都知事選】宇都宮氏「企業に天国、労働者に地獄」 小泉竹中路線を踏襲する「国家戦略特区」に警鐘 2014.2.3

記事公開日:2014.2.3取材地: テキスト動画
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(IWJ ・原佑介)

特集 東京都知事選2014|特集 TPP

 都知事選の重要な争点でありながら、いまだに都民の関心が十分でない「国家戦略特区」。東京都知事候補の宇都宮健児氏は2月3日、選対本部で開かれた「知らなかったじゃすまされない!国家戦略特区とTPP」で有識者らと対談し、「特区構想」の問題点を議論した。

■ハイライト

  • 出演 宇都宮健児氏(東京都知事候補)、奈須りえ氏(前大田区議)、内田聖子氏(PARC事務局長)
  • 日時 2014年2月3日(月) 21:30~
  • 場所 宇都宮選対事務所(東京都新宿区)

小泉政権に端を発した規制緩和政策の歴史

 この日、宇都宮氏と対談したのは、前・大田区議の奈須りえ氏と、NPO法人アジア太平洋資料センター「PARC」事務局長の内田聖子氏。早くから国家戦略特区に警鐘を鳴らしていた奈須氏は、冒頭、特区の概要を説明した。

 国家戦略特区とは、区域を限定して「規制緩和」する経済政策で、投資を呼び込み、外国企業を誘致することで国際競争力を向上しようとする構想である。もともとは小泉純一郎政権下でスタートした「構造改革特区」に端を発している。

 日本の法律は基本的に、国内において等しく適用されるが、「ある地域だけは法律を守らなくてもいいですよ、というのが『特区』」だという。

 当初は、「一国二制度はおかしい」、「法のもとの平等という観点から問題だ」といった議論があったが、「法の趣旨、目的を超えない範囲で、地方分権という意味でもやってみてはどうか」という方向でまとまった。しかし、当初は手を付けないとしていた、「減税」などの金銭的な優遇策が徐々に解禁され、規制緩和はなし崩し的に拡大。

 そして昨年12月6日、特定秘密保護法とともに「国家戦略特区法」が成立した。

 奈須氏は、「韓国は米韓FTA批准のために60以上の法改正をした。条約に批准するためには、多くの法律を改正しなければならない。これを『特区』という法律を使うことで、一気に突破しようとしているのが、この『国家戦略特区』だ」と、特区導入の目的とTPPの関係を説明した。

多くの派遣労働者、非正規雇用を生み出すキッカケ「小泉竹中路線」

 宇都宮氏は2008年に、仕事と住居を失った派遣労働者たちをケアする「年越し派遣村」の名誉村長を務めたことでも知られる。

 宇都宮氏は、「あのときは、製造業の派遣労働者がまず切られた」と、当時を振り返った。

 「不況で、自動車の生産が抑えられた。となると、仕事がないから正社員以外の派遣労働者が切られる。次の仕事がないから、野宿を余儀なくされる。もともと派遣というのは特別な専門職に限られた制度だったのが、どんどんと一般にも広がり、とうとう小泉政権下で、製造業まで認められるようになった。結果、不況になったら真っ先に住まいを失う人たちが出てきた」

 続けて、「多くの非正規労働者が大量に生み出され、年収200万円以下の人が6年連続で1000万人以上、『貧困と格差』を広げる大きな要因になった。これを一般的に『小泉竹中路線』という」と説明した。

「規制=既得権益」ではない

 そもそも規制とは何か。

 奈須氏は、「既得権とすり替えられるがちだが、規制とは私たちの暮らしを守るものだ」と位置づける。

 「雇用に関する特区は、働く者の都合というより、雇う人に都合のいいように変えている。せっかくできた労働契約法の、『5年以上の有期雇用契約をしたら、無期雇用契約、正規雇用に転用する』という流れも辞めさせようと明記している。雇用の不安定化を招く」。

 正社員であろうと派遣労働者であろうと、同じ労働をすれば同じだけの給料が支払われる「同一労働、同一賃金」という言葉には、どのような裏があるのだろうか。

 「底辺の競争になると、『もっと安くてもいいんじゃないか』となり、給料が正規雇用の単価に上がらず、非正規雇用のほうと同一になる恐れもある。理想の形にするには『規制』が必要だが、そうした規制も、適性な経済競争の中では邪魔だ、というのが新自由主義の考え方であれば、非常に問題だ」と奈須氏は警鐘を鳴らした。

「企業はいいけど、働いている人には地獄」

 安倍政権は、こうした特区構想を成長戦略の一環と位置づけ、日本を「企業にとって世界一活動しやすい国にする」と掲げている。

 「企業にとってはいいけど、働いている人は地獄だ」

 宇都宮氏は特区構想をこのように評し、「私はサラ金問題で、社会的弱者を高利から守るために金利を規制した。労働基準法も、労働者を守るためのもので、とっぱらうなんてとんでもない」と批判。「そうなれば労働者の権利はないも同然だ」と訴えた。

 さらに宇都宮氏は、「これまでの規制緩和政策で現実がどうなったかをみておく必要がある」と前置きしたうえで、「夢のような社会ができると考えられがちだが、現実的には貧困と格差が広がり、平均賃金も97年をピークにどんどん下がっている。97年と今では、給料が25兆円も減っていて、この分は株主配当や経営者の報酬などになっている。なんのために規制緩和があるかは、こうした事実を見ればわかる」と指摘した。

新都知事が全国の規制緩和を運命付ける!?

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