「安倍政権はファシズム国家を目指す」 ~鳥越俊太郎さんが語る 希代の悪法『秘密保護法』を許さない 2014.1.18

記事公開日:2014.1.18取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「アメリカが戦争をした時、日米軍事同盟でアメリカを助けるため、日本も戦争に参加できるようにするのが、集団的自衛権。安倍内閣は、内閣法制局長官を、集団的自衛権行使を認める人間にすげ替えた。そして、会期中に国会審議もせず、閣議決定をしようとしている」と、鳥越俊太郎氏は警鐘を鳴らした。

 2013年1月18日、神戸市中央区の神戸文化ホールで「第30回メディアを考える集い 鳥越俊太郎さんが語る 戦争は『秘密』から始まる 希代の悪法『秘密保護法』を許さない」が行われた。講演会は、羽柴修氏(弁護士、弁護士9条の会事務局長)と鳥越俊太郎氏(ジャーナリスト)、そして両者の対談で構成、安倍政権の危険性を、特定秘密保護法案を軸に語った。また、対談の中で鳥越氏は、自身に、東京都知事選への誘いがあったことなども明かした。

■全編動画 ※音声が動画とズレています。ご了承ください。

 冒頭、司会の小山乃里子氏が「会場は満席で、ロビーにも入れない観客があふれかえっている」と、この問題への市民の関心の高さを伝え、最初の講演者、羽柴修氏を紹介した。

  • 講演
    羽柴修氏(弁護士、弁護士9条の会事務局長)「戦争は『秘密』から始まる」
    鳥越俊太郎氏(ジャーナリスト)「希代の悪法『秘密保護法』を許さない」
  • 対談 羽柴修氏×鳥越俊太郎氏/司会 小山乃里子氏(ラジオパーソナリティー、元神戸市市議会議員)

原子力規制委員会も特定秘密の対象に

 羽柴氏は「戦争は『秘密』から始まる」というテーマで話をした。まず、1941年12月8日、軍機保護法で、北海道帝国大学の学生、宮澤弘幸さんが逮捕された「宮澤・レーン事件」を紹介。「特定秘密保護法案は、当時の治安維持法、軍機保護法と酷似し、これから市民生活にずっと干渉していく」と語った。

 次に、特定秘密保護法案のアウトラインと、その中から法案22条を取り上げ、「取材の自由に配慮しなければならないと、公明党の強い要求で織り込んだが、それはごまかしで、『何かあったら逮捕する、注意しろ』という意味だ」と指摘した。

 「すでに、16省庁に特定管理秘密というものが、41万2931件ある。そのうち、内閣情報調査室には31万8886件。法案施行後、増える可能性は大だ。原子力規制委員会での、核物質の防護関連情報なども特定秘密になっていく」。

国防が、憲法より優先される国民の義務に

 そして、「今後、秘密管理者10万人ほどが、適正調査の対象者になり、彼らの飲酒歴、借金、交友・愛人関係、さらに親族についても、すべて調べ上げられる。中でも一番怖いのは、管理者とその身辺が監視対象になることだ」とした。

 「今国会で、国家安全保障基本法案が上程される予定だが、そこには『国防関連や安全施策には、国民すべてが協力しなくてはならない。憲法より優先される国民の義務だ』と謳っており、まさに戦争準備を進めている」と警告した。

 また、「特定秘密保護法案の可決に協力した議員たちは、ごほうび旅行で海外視察に行っている。特定秘密の指定基準を検討する第三者機関(情報保全諮問会議)には、渡邉恒雄氏(読売新聞グループ会長)が座長に指名され、7名の委員のうち反対論者は1名だけだ」と補足して、講演を終えた。

安倍首相は、利権より信念の人?!

 鳥越俊太郎氏が登壇し、まず、安倍政権について、「第1次安倍内閣は『美しい国ニッポン』がキャッチフレーズだった。安倍首相は、従来の利権絡みの政治家と違い、良く言えば、信念の方が強い」とし、「その信念が求める先は、レジームチェンジ(国の体制を変えよう)だ」と述べた。

 「教育行政では、すでに役人がトップに変わりつつある。つまり、国家統制型の国が『美しい国』の中身なのだ。国民が主人公ではなく、『国の言うことを聞け』ということ。そのための布石のひとつが、特定秘密保護法だった」と説明した。 

 さらに、「政府や地方自治体は、国民に税金を払ってもらい、委託されて仕事をしている。メディアは、税金が適正に使われ、行政機関が仕事をちゃんとしているかを、市民に代わってチェックするのが役目だ。しかし、今、そんなメディアは、ほとんど残っていない。かつて、われわれ新聞記者は、情報を得るために警察官や役人に接触し、公権力の壁を突破しようとしたが」と振り返った。

 そして、秘密保護法が施行された場合、「何が秘密かもわからないから、萎縮効果が生まれてしまう。一部のジャーナリストたちは体を張って取材するだろう。しかし、情報を持つ側は、みんな口が堅くなり、取材が困難になることは明らかだ」とした。

安倍政権はファシズム国家を目指す

 鳥越氏は「安倍政権は、すべて統制して、監視する国を作ろうとしている。これはファシズムだ」と糾弾。また、総理大臣補佐官の磯崎陽輔参議院議員が「集団的自衛権行使(容認)の件は、今国会でケリをつける」と漏らしたことに言及し、「戦後、日本は、一度も戦争をしていない。なぜなら、300万人近い犠牲者を出し、原爆など多大な悲劇の結果、戦争はもうしない、と憲法9条に入れ込んだのだ。自衛隊は有名無実になってしまったが、戦争行為としては、今まで誰も傷つけていない」と力説し、次のように続けた。

 「日本は、個別的自衛権と集団的自衛権を保有はするが、『集団的自衛権は、憲法9条との関係で、これを認めない』と、内閣法制局長官が明言している」。

この状態にしたのは、投票した私たち

 その上で、鳥越氏は「アメリカが戦争をした時、日米軍事同盟でアメリカを助けるため、日本も戦争に参加できるようにするのが、集団的自衛権。安倍内閣は、内閣法制局長官を、集団的自衛権行使を認める人間にすげ替えた。そして、会期中に国会審議もせず、閣議決定をしようとしている」と危惧した。

 また、「こういう状態にしたのは、国会議員を選挙で選んだ、私たち国民だ。2016年まで国政選挙がない。国民の反対があろうとなかろうと、安倍政権はどんどん法案を通す。それを防ぐためには『ノー』と立ち上がり、国民の声を国会にぶつけ続けるしか、もう、残された道はない」と訴えると、会場から賛同の拍手が起こった。

ある日突然、開戦を知らされる国民

 次に、羽柴氏と鳥越氏による対談に移り、司会は小山氏が務めた。まず、小山氏が「特定秘密保護法案が通るとは、思っても見なかった」と言うと、羽柴氏は「唯一、得たものは、42日間の短い間に、国民の意識がかなり変わったことだ」と応じ、鳥越氏は、反対運動を始めるのが遅かったことを悔やんだ。 

 鳥越氏は「アメリカと中国の2国が、これから世界を引っぱっていくつもりだ。アメリカは、冷戦がない今、中国と戦争をする気はない。日本と、中国や韓国が揉めてほしくないのだ。中国は14億人の民を食べさせることで精一杯。現実的に、日本と一戦交えることはありえない」とし、次のように語った。

 「もし、アメリカが戦争をするとしたら、中東や西南アジアになるだろう。その時、密かに日本にも何らかの『お誘い』があると思われる。特定秘密保護法と集団的自衛権は、表裏一体。国民は、ある日突然、開戦を知らされることになってもおかしくない」。

子どもたちに、青い空を青いまま渡したい

 羽柴氏は「憲法を変えずに、集団的自衛権行使を認めることは、憲法に反した法律を、国民の信を問わずに決めること。まさに、立法クーデターだ」と声を荒げた。

 鳥越氏は「国民が直接、訴える手段は、選挙、請願、デモしかない」と、翌1月19日に行われる沖縄の名護市長選挙への期待や、2月の東京都知事選について言及し、「実は、自分にも(都知事選への)立候補の打診があった。かなり、本気になったが」と冗談めかして明かした。

 最後に、羽柴氏は「戦争をしたい人は、いないと思う。私たちは、子どもたちに、青い空を青いままで渡したい。それが戦争を経験した、私たちの役目だ」と力を込めた。

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「「安倍政権はファシズム国家を目指す」 ~鳥越俊太郎さんが語る 希代の悪法『秘密保護法』を許さない」への2件のフィードバック

  1. 矢野 寛子 より:

    秘密法も集団的自衛権 これらを撤回するには国民はデモと署名しかない。これらを武器にたちあがろう。

  2. 宇佐美 保 より:

    鳥越氏は、”安倍氏には、自分なりの信念で行動する”旨を語って居られますが、下種の私には、そうは思えないのです。
    安倍氏の背後に存在するであろう強力な力に操られて、又、その強力な力は、自民党員にも影響力を及ぼし、安倍氏の行動を制御できないのではないか?と思えてならないのです。
    勿論、このように操られることは安倍氏の本意ではないかもしれません。
    この安倍氏の不満のガス抜き役を、安倍昭恵氏が引き受けている為、安倍氏とは全く異なる見解を照恵氏が発しても、安倍氏がその発言にブレーキを掛けることが無いのだと、下種の私は推測しているのです。
    下種の推測の正否は兎も角、恐ろしい世の中へと驀進していることは確かに思えてなりません。

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