ウィキリークスが「環境」分野の交渉テキストを暴露 ~「規制強化」をめぐる米国の強引な姿勢が明らかに 2014.1.27

記事公開日:2014.1.27 テキスト
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特集 TPP問題

 大手メディアが「日米のにらみ合いが続く」と報じるように、1月27日現在、TPP交渉は自動車や農産品の関税撤廃をめぐり日米間で難航している。しかし、互いに「譲歩すべし」との声も上がり始めており、交渉妥結を急ぐ日米が(日本に不利なかたちで)強引に話をまとめる可能性も囁かれている。2月には閣僚会合も予定されている。

 そんな中、ウィキリークスが昨年11月、12月に続き、新たにTPPの内部資料を暴露した。リーク文書が掲載されたのは1月15日。ウィキリークスの説明によれば、このテキストは2013年11月19日−24日のソルトレイクシティー会合の主席交渉官会談で使われた、「環境」分野の交渉資料とのこと。

 資料は、「議長国レポート」と、20ページを超える「環境チャプター統合テキスト(条文案)」の2点。本記事では、先に全文掲載した「議長国レポート」の独自仮訳に加え、そこから読み取れる交渉の内幕と、今後の環境分野の展望についての分析を掲載したい。(IWJ野村佳男・佐々木隼也)

TPP環境分野の議論の中心は「規制強化」

 TPPの環境分野の交渉に見られる特徴として、以下の三点に着目したい。

 一点目は、TPPは一般に「自由貿易協定」と言われているが、環境分野に関しては、「いかに環境規制を強化するか」「いかに規制の実効性を高めるか」という議論が中心だということである。

 平たく言えば、米国を始めとする先進国が、環境規制の強化に最も「積極的」な立場であり、途上国は拙速な規制強化に反対の立場、という構造だ。

 特に米国は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)」(※1)や「モントリオール議定書」(※2)、「海洋汚染防止条約(MARPOL)」(※3)など、すでに世界各国が締結している「多国間環境協定」で定められた義務をTPPにも織り込むべきだと主張していることが、「議長国レポート」で明らかになった。

(※1)絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES):「ワシントン条約」とも呼ばれる。採取・捕獲を抑制して絶滅のおそれのある野生動植物の保護をはかることを目的とする。1973年に採択、日本は1980年11月加入。

(※2)モントリオール議定書:正式名称は「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」。成層圏オゾン層破壊の原因とされるフロン等の環境中の排出抑制などの規制措置を定めている。1987年に採択、日本は1988年9月加入。

(※3)海洋汚染防止条約(MARPOL):船舶の運航などによる海洋汚染および大気汚染を防止するための規則。1973年に採択、日本は1983年6月加入。

 また、義務違反に対してTPP の「紛争解決プロセス」に乗せることや、貿易や投資に影響を及ぼすような施策を講じるよう、米国は主張している模様である。

 それに対して、日本を含めた大多数の参加国は、それぞれ異なる状況において合意した各条約上の義務をTPPに織り込むことに反対し、また紛争解決プロセスに至る前に、さまざまな協議を通じて柔軟に解決すべきだとの立場を取っている。

 開示資料では、具体的にどのような議論がなされているのかはわからないが、少なくとも「ルールを守らない国には、貿易や投資を削減することも辞さない」という、米国の強気のスタンスが垣間見られる。

 環境保護を推進すること自体は決して間違った方向ではないが、世界一の経済大国である米国が、その経済力を利用して一方的に押し進めるとしたら、生物や文化の多様性が損なわれる恐れがある。たとえるならば、クリーンな街作りを理由に、強制的にホームレスを排除するようなものである。

 また、ここで米国が主張している紛争解決プロセスが、TPPのいわゆる「ISD条項」に準ずるものであるとしたら、大きな問題である。米国の投資家にとって不利な制度の廃止や損害賠償の訴訟を起こすようになれば、米国企業の一人勝ちと地元企業の衰退を生み、結果として環境規制そのものを無力化してしまうことにもなりかねない。

 環境分野の条文案では、当事国同士の協議や紛争解決、仲裁裁判の手続きなどに、多くのページが割かれている。第4条(多国間環境協定)、10条(協力の枠組み)、11条(制度の準備)、12条1項(環境協議)、12条2項(上級代表による協議)、12条3項(大臣による協議)、12条4項(仲裁裁判所)など、多岐にわたる解決策が規定されている。

 議長国レポートに「主要争点の一つ」とあることからもわかるように、環境問題について意見の相違があった場合に、いかに公平な手続きを準備するか、先進国・途上国ともに凌ぎを削っている様子が伺える。

 TPPは、政府首脳や大手マスコミが語るような、単純な自由貿易だけを論じているわけではない。より高度で多目的化した「神経戦」であるという事実は、しっかりと認識しておきたい。

条文案の「公共性」や「透明性」は確保されるのか

 二点目は、環境分野については、意外にもTPP当事国が「公共性」や「透明性」を重視しているということである。

 条文案では、環境に関する法律や規制、方針などの情報を一般に公開し周知させることや、環境法に関する司法や行政手続きでは公聴会を行うことなどが規定されている(第5条)。また、条文成立のために、国民の参加(第5条)や国民による質問請求(第6条)といった条項もある。

 さらには、生物多様性の議論に国民の参加を求めることや(第13条)、前述した紛争解決の最終報告書を公に開示することなども定められている(第12条12項)。すなわち、環境問題の解決のためには、ステークホルダー(利害関係者)の承認や意見を尊重し、協議の結果をオープンにするということである。

 一方、これらはあくまで努力規定であり、法的強制力や違反に対する罰則を定めているわけではない。また、環境チャプターの規定全般は、貿易や投資を促進する目的が前提にあり、実際の運用面で公共性がおざなりになることも考えられる。実際、環境団体からは、この条文案の環境対策は十分ではないとの批判も出ている(※4)。

(※4)ナショナルジオグラフィックニュース 2014年1月20日 「TPPに4つの危惧、環境団体が表明」

 しかしながら、環境分野における議論は、少なくとも他の分野よりも、よりオープンでフェアな仕組みを構築しようとしている、と言うことはできるだろう。

 ここで問題となるのは、やはり米国のスタンスである。

 「議長国レポート」によると、米国が「生物の多様性に関する条約」(※5)に加入していないことを理由に、生物多様性に関する現在の草案に賛成していない。その他のTPP参加国はすべて加盟している。

(※5)生物の多様性に関する条約:生物の多様性を包括的に保全し、生物資源の持続可能な利用を行うための国際的な枠組み。1992年に採択、日本は1993年に加入。米国は未締結。

 米国が未加盟の背景には、「遺伝子組み換え作物」の問題があることは、容易に想像がつく。遺伝子組み換え作物の推進によって、モンサントを始めとする米国企業は種子をすべてコントロールすることを企んでいる。生物多様性の維持と、真っ向から対立するのは明らかである。

 また、米国は、海洋漁業や環境保全といった分野における多国間環境協定について、「確固たる効果が必要」と主張している。

 この主張の全体の文脈は明らかではないが、おそらく、米国は多国間環境協定が環境保全につながる効果を疑問視しているのではないかと思われる。TPPで環境規制に強制力を持たせることで、自らが交渉の主導権を握りたいという狙いがあるのだろう。

 環境分野の条文案に公共性や透明性の規定が盛り込まれていても、TPP交渉自体が秘密裏に進められるのであれば、実際にそれらの規定はどのように運用されるのだろうか。実効性のある環境保全を進めるためにも、交渉全体をオープンにすべきだろう。

農産品5品目の関税だけではない、日本の「聖域」

 三点目は、「補助金」の扱いについてである。

 条文案には、気候変動に関連して「破壊的な消費を助長する非効率な化石燃料補助金」を中期的に撤廃することや(第15条)、海洋漁業に関連して「乱獲につながるすべての補助金」の最終的な廃止(第16条)が規定されている。

 化石燃料に対する補助金は、主に非OECD諸国で行われ、補助金総額は2009年に世界全体で3120億ドル(32兆円)に上る。国際エネルギー機関(IEA)の調べによると、2020年までにすべての化石燃料に対する補助金を段階的に廃止すれば、世界のエネルギー需要は、補助金が存続した場合に比べて5%削減される。これは日本、韓国、ニュージーランドの現在の消費量の合計に匹敵するという(※6)

(※6)「CO2削減の特効薬 『化石燃料の補助金廃止』」

▲出典:日本模擬国連神戸研究会「補助金政策について」

 TPP参加国の中では、「議長国レポート」で明らかになったように、ベトナム、ペルー、マレーシアが化石燃料補助金の削減に反対の立場である。しかし、補助金は上記のグラフにランクインしているマレーシアでもGDPの3%程度と、それほど巨額ではない。

 しかし、化石燃料補助金は途上国の石油価格を下げ、貧困層を助ける目的で導入されたものである。先進国と途上国の経済格差による対立が、TPP交渉でも表に出た格好だ。

 もう一つの補助金である「漁業補助金」であるが、漁業補助金は年間約350億ドル(3兆6千億円)に達する。補助金なしでは、多くの公海漁業は経済的に存続できず、そのため、補助金が乱獲や環境悪化を引き起こしていると言われている(※7)

(※7)世界海洋委員会 「有害な漁業補助金の廃止」

 各紙の報道によると、米国は当初すべての補助金をなくすよう主張していたが、昨年10月、日本などの反対を受けて「乱獲につながる補助金」に限る方向で調整することになった。(朝日新聞 2013年10月03日 「日本の漁業補助金維持へ TPP交渉、米が方針転換」 )

 今回リークされた条文案では、「乱獲を助長する補助金の削減や最終的な撤廃」とあり(第16条6項)、米国との交渉の結果、そのような文言が挿入されたことが確認できる。

 しかしながら、「議長国レポート」によると、チリ、ベトナム、マレーシアの3国が、十分な移行期間や小規模漁業への配慮が必要だとして、今なお反対している。

 この漁業補助金、実は世界でもっとも金額が大きいのが日本である。日本の漁業従事者は、ピーク時の100万人から20万人に落ち込み、日本の漁業も補助金がなければ成り立たないと言われている。TPP交渉において漁業補助金は、実は農産品5分野の関税と同じくらい「聖域」なのである。

▲出典:WEDGE 2013年08月19日 「惨憺たる日本の漁業 実は先進国では成長産業」

 前述の報道によれば、日本の漁業補助金は、「乱獲を助長する目的」ではないとして、撤廃の対象外になっている模様だ。休漁期間を設けていることや、水産資源に配慮していることが評価されたとのことである。

 しかし、最終的な交渉結果がどうなるかは、まだわからない。なかでも日本にとって懸念材料なのが、日本の「クジラ漁」や「イルカ漁」である。

 条文案の16条4項には、「サメやウミガメ、海鳥、そして海洋哺(ほ)乳類の長期保全を促進する」との規定がある。「海洋哺乳類」、すなわち海に棲息する哺乳類には、クジラやイルカ、アザラシやアシカ、ジュゴンやマナティ、ラッコなどが含まれる。つまり、捕鯨活動の規制につながる規定が織り込まれている。

 先日1月18日に、駐日米国大使であるキャロライン・ケネディー氏が、ツイッターで「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています」と書き込んだ件が、波紋を呼んでいる。

 和歌山県太地町で行われるイルカの追い込み漁の様子を、反捕鯨団体「シー・シェパード」がインターネットを通じ、逐次報告していたことがきっかけとなった。21日には、米国務省のハーフ副報道官が、「生物資源の持続可能性と道義性の両面で懸念している」と述べ、イルカ漁反対は米政府の見解であることを明らかにした。

 国際捕鯨委員会(IWC)のデータによると、TPP交渉参加国のうち、捕鯨反対国は、米国、チリ、メキシコ、ペルー、オーストラリア、ニュージーランドの6国。一方、捕鯨支持国は、日本のみである。(日本捕鯨協会 「捕鯨問題Q&A」

 日本政府は、「クジラ漁やイルカ漁は日本の伝統的な漁法だ」として、捕鯨禁止に反対している。しかし、捕鯨に関する交渉いかんによっては、せっかく勝ち取った漁業補助金の議論も振り出しに戻ってしまう可能性も否定できない。

 ちなみに、環境NGO「気候ネットワーク」が昨年7月に発表した、各政党のマニフェストの評価分析によると、環境分野において自民党はダントツの最下位となった。このような政府与党に、我々はTPPの環境分野の交渉を託しているのである。

【仮訳全文掲載】TPP秘密協定:環境分野の議長国レポート

TPP秘密協定:全12ヶ国の環境分野の議長国からのレポート

TPP環境作業部会
環境分野での議長国からのレポートおよび統合条文案

1.2013年8月のブルネイ会合におけるTPP担当大臣からの要望により、TPP環境分野においてTPP作業部会の議長国が起草した統合条文案を添付する。この統合条文案の作成にあたっては、議長国は以下の項目を考慮した。

(a.) ブルネイ会合終了時点での条文案の状況、ならびに各交渉会合において議長国が参加した全体会議および作業部会での議論。条文案は、この交渉を通じて当事国が満場一致で合意した立場に基づいている。

(b.) マレーシア、ブルネイ、米国での作業部会開催の際に、議長国との二者間会合の場で各当事国が表明した意見や懸念。

(c.) 過去10年間、多種にわたる条項を交渉した経験から導かれた、特定の問題における当事国間の相違を埋める手段としての議長国の視点。

2. 議長国は、バランスがとれていて、あらゆる問題における譲歩を網羅したパッケージが反映され、すべてのTPP当事国の関心や懸念を考慮するような統合条文案を作成することに努めた。そうするなかで、条文案は環境作業部会内に存在する3つの主たる争点を解決することに努めた。

3. 第一に、貿易協定において、環境を保護し保全するための積極的な義務の必要性と、特定の論点について協力するという実質的な約束を含めるべきという当事国の強い関心との間で、いかにベストなバランスを見いだすか。この問題については、統合条文案では積極的な義務を規定しつつも、これらの義務を実践するために当事国を支援できる部分に関しては、柔軟性や協力を提供している。

4. 第二に、他の多国間フォーラムで扱われている、あるいは交渉が行われている問題に対処するのに、この協定の適切な役割をいかに決定するか。統合条文案は、他のフォーラムで進行中の作業を補完するような約束を規定し、さらには交渉中または他の多国間フォーラムで対処した問題の重複、繰り返し、あるいは損なうことになるような義務を避けることで、TPP当事国にユニークな役割を与えている。

5. 第三に、紛争解決条項はとりわけ難しい問題であり、当事国間の潜在的な紛争を解決するために協力や協調をすることや、問題を解決するために当事国を支援する独立した第三者機関の役割を保証するなど、信用度の高いアプローチを取っていると認識すること。

6. 議長国は、条文案の問題について当事国が明らかにしたすべての懸念やレッドライン(超えてはならない一線=聖域)に対応するよう鋭意努力したが、いくつかの当事国にとってのレッドラインの多くが、別の当時国が表明したレッドラインと真っ向から対立した。環境作業部会がチャプター全体の合意に至ることができなかったのは、これらの相違点によるものであることを強調しておきたい。

7. ブルネイ会合から進展は見られたが、これらの相違点は今日も残ったままである。残りの項目で合意に至るためには、当事国が譲歩の手段を見いだす必要があることは明らかである。すべての交渉当事国は、環境分野で残った問題の状況について、すでに多くの譲歩を重ねてきたが、最終合意に至るためにはさらなる譲歩が必要となることは明らかである。

8. そのことを念頭に、さらには目的、一般的な約束、手続き事項、国民参加の機会、国民の提案、企業社会責任、環境性能向上の自発的メカニズム、協力の枠組み、制度的取り決め、特定外来生物といった項目が合意されたことに留意し、いまだ合意されずに残っている条項の状況のサマリーを以下に列記する。

1.定義
・チリ、ペルー、ベトナム、マレーシアは、「成立予定の(provision thereof)」を定義のチャプターに含めることに反対。一方、適用範囲が狭すぎるとして了承できないという当時国もある。
・チリは、環境法の定義の中で多国間環境協定に言及することに反対。チャプター全体における義務と結び付けることにも反対。
・チリは、規則や法令について定義することに反対。当事国が中央政府レベルでのみ環境法に関して約束しており、分野横断的な問題であることが理由。
・日本は、適用範囲の対等性に関する文言に、追加的な要素が必要だと考えている。
・当事国は、連邦政府よりも下位のレベルで制定された環境法について話し合いを行うためのメカニズムについて、討議を継続する。
・メキシコは、「当事国の領域において」という文言の削除を検討している。

4.多国間の環境協定
・この問題は、このチャプターで多国間環境協定(MEAs)をどのように扱うかに関する事項である。このチャプターの主要争点の一つ。
・米国は、特定のMEAs(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約CITES、モントリオール議定書、海洋汚染防止条約MARPOL)を順守するための規定を採用、保持、実施する義務を、紛争解決(DS)チャプターで強制力を持つように、すなわち順守できなかった場合には貿易または投資に影響を及ぼすという形でTPPに織り込むことを提案。
・オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、メキシコ、ペルー、シンガポール、ベトナムは、このようなやり方で織り込むことに反対。それぞれ異なる状況で交渉されたそれらの義務を織り込むことや、それらをTPPの紛争解決メカニズムの対象にするのは適切ではないと主張。
・ベトナム、チリ、メキシコ、ペルーは、モントリオール議定書、MARPOL、CITESの脚注に、当事国となる将来の議定書、修正事項、付属書類、調整を言及することを支持しない。

12.協議/紛争解決
・オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、メキシコ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、ベトナムは、仲裁機関設立の要請がなされる前の期間でなければ、協議プロセスが行われることに合意する。
・米国は、協議プロセスを、行われる可能性のある紛争解決プロセスに関連づけるべきだと考えている。
・仲裁機関に関して、これはチャプターのもう一つの主要争点である。オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、メキシコ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムは、統合条文案に示されたプロセスに合意する一方、米国は環境チャプターの義務は、別のTPP交渉で見られる義務と同様の仲裁機関プロセスに沿うことを要求。これは、仲裁委員会の決定に従わない場合において、貿易制裁の適用に訴えることを含む。
・作業部会は、仲裁機関プロセスに関する条文案をまだ検討してない。チリ、ベトナム、メキシコ、ペルーは、このチャプターの約束違反というのは、継続的かつ繰り返し行われ、仲裁機関プロセスに提訴されるほど貿易や投資に影響する場合であるべきだと考えている。米国はこのアプローチを支持していない。

13.貿易と生物多様性
・マレーシア、ペルー、ベトナムは、条項に「派生物」に言及することを求めている。
・米国は「生物の多様性に関する条約」に批准していないことを理由に、現在の草案のような条項には同意できない。
・ペルーとメキシコは、第3項に、知識やイノベーション、先住民および地域コミュニティの慣習を持つ者の承認や関与を含めることを提案。

15.貿易と気候変動
・ベトナム、ペルー、マレーシアは、条項の中で化石燃料補助金に言及することに反対。
・米国とオーストラリアは、現在の草案条項には合意できない。

16.海洋漁業
・チリ、オーストラリア、ベトナム、ニュージーランド、ブルネイ、ペルー、日本、シンガポール、メキシコ、カナダは、MARPOL条項をMEA条項に入れることに賛成。
・チリ、ベトナム、マレーシアは、十分な移行期間や小規模漁業に対する柔軟性のないまま、漁業への補助金に関して条項に含めることを支持しない。
・第4項に関する議論は継続。マレーシア、ニュージーランド、オーストラリア、日本は、現在の条文草案には合意できない。
・ベトナムは、MARPOL1997年議定書への言及を支持せず、「当事国の実際の進展状況を考慮し、当事国が了承した」という文言を追加することを提案。
・いくつかの当事国は、補助金の提供や違法漁業(IUU)の条項に関する文言を検討している。チリは、6(a)の脚注に、復元計画の要素を織り込むよう提案。
・米国は、「悪影響のある」という文言に関して6(a)の修正を提案し、チリの提案する脚注を支持せず。
・15(b)項に関する譲歩可能な文言については、ベトナムとシンガポールの確認待ち。
・米国の立場は、列記された7つのMEAsに関して柔軟性を示すためには、海洋漁業に関して確固たる効果が必要だというもの。

17. 環境保全
・米国は、CITESを順守するための規定を採用、保持、実施する義務を、紛争解決(DS)チャプターで強制力を持つように、すなわち順守できなかった場合には貿易または投資に影響を及ぼすという形でTPPに織り込むことを提案。
・オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、メキシコ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムは、CITESをTPPに織り込むことに反対(上記MEAsと同様の問題)。
・米国は、すべてのTPP当事国に、外国法に違反して採取され取引された野生動植物の貿易を禁止する措置を取る義務を課すことを提案。オーストラリア、ブルネイ、チリ、日本、メキシコ、マレーシア、ペルー、シンガポール、メキシコは、条項草案に合意せず。
・オーストラリア、チリ、シンガポール、メキシコは、外国法に違反して採取され取引された野生動植物の貿易に関する条項の代替案を提示した。米国はこの代替案に反対。
・ペルーは、範囲をCITESに列記された生物種に限定することを要求している。米国は、これに反対。
・米国の立場は、列記された7つのMEAsに関して柔軟性を示すためには、環境保全に関して確固たる効果が必要だというもの。

18.環境商品およびサービス
・第1項、4項、5項は合意。
・ペルー、ベトナム、日本、マレーシア、チリは、現在の草案の第2項および3項に反対。
・商品およびサービスの市場アクセス交渉の結果について早まった判断をしないために、第2項および3項は、それらの市場アクセスの結果が判明してからまとめる予定。
・チリは、第2項および3項の代替案を提出した。IWJ「報道されていることは、事実として間違いがないのでしょうか?」

外務省「これを(政府関係者が)明らかにしたということは、我々は承知していないのですが。例えば、プレスリリースといったことで明らかにしたということはございません。

 いずれにしても、核セキュリティ強化の中で、アメリカだけではなく、世界的に核テロの脅威となる物質をどんどん減らしていこうという大きな方向性があり、そのような中で出てきた話であると承知しておりまして、具体的な中身についてはコメントを差し控えたいと思います」(了)

岩上「はぐらかすような回答の仕方であるが、核テロの脅威を減らす米国の方針に応じている、という婉曲な言い方で、報道を否定はしなかった」

 この件について、IWJは引き続き断続的に取材を続ける。

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