2013/12/02 「有害性はわかっていたが、情報が共有されなかった」~世界が抱えるアスベスト問題の中の泉南訴訟

記事公開日:2013.12.2
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 アスベスト被害者の多くは、集団就職で故郷を離れ、地方から出てきた人々。社会の底辺に身を置きながら、日本の高度成長を支えてきた人々だった。

 アスベスト被害が国際的な問題であり、過去の惨禍を繰り返さないよう、大阪府泉南地域で起こった甚大なアスベスト(石綿)による健康被害を知るための学習会が2日、衆議院議員会館で開かれた。講師には東京工業大学大学院の村山武彦教授が招かれ、国際問題となっているアスベスト被害について解説した。

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年々増加しているアスベスト関連がんによる死亡

 村山教授によれば、日本において、アスベスト関連がんの中皮腫による死亡は、年々増加傾向にあり、昨年2012年には1400人に達したという。その中でも、宮城県男性の中皮腫死亡者数は、前年の2011年より2倍の増加がみられた。これについて村山教授は、裏付けはとれていないことを断った上で、「東日本大震災によるアスベストの飛散が関心を持たれ、この数字につながっている」と説明。「震災によってアスベストが直接影響を与えたということではないが、2005年のクボタショックの際には社会的な問題になり、翌年の中皮腫死亡者数が急に増えて、その翌年には減少した。社会的関心によって左右される可能性がある」と補足した。

 アスベストの健康被害が拡大してしまった最大の原因を、「有害性はわかっていたが、情報が共有されなかったこと」と村山教授は断言する。日本でアスベストが使われ始めたのは、戦前・戦中において、「軍の主導、国の指示であり、当時の植民地へ工場も展開していった」と解説。戦後も有害性に関わる情報が共有されない状況は続き、対策につながらなかったという。

他国で繰り返されているアスベスト被害

 さらに村山教授は、これらアスベストの問題が「今でもアジアで起こっている問題である」と警鐘を鳴らす。その理由として、1960年代から、日本が外国のアスベスト関連企業と交流をもっていたことを挙げ、「企業は相当早い段階から(アスベストの有害性を)知っていたのではないか。日本がアスベスト製品を売るターゲットにされていたのではないか」と推察し、有害性を認知していながら、労働者や一般市民には情報を伝えていなかったことを指摘した。

 現在では、アスベスト工場が東アジア、欧米から東南アジアへ移っているという。また、アスベストの最大消費地域はアジアであり、最大産出国のロシアなどから、2012年で年間70万トンを超えるアスベスト製品が、インド・中国・インドネシアなどへ輸出されていることを、村山教授はデータを用いながら明らかにした。

 「残念なのは、こうしたことがアジアの国々で繰り返されていることだ」と述べ、「被害が拡大する前に、歴史を学ぶこと、日本では泉南の問題を広く世界に伝えていくことが必要だ」と語った。

国の責任が問われる泉南アスベスト訴訟

 泉南アスベスト国賠訴訟は、第1陣、第2陣が現在も係争中であり、第2陣の高裁判決を12月25日に控えている。学習会後半では、泉南訴訟の意義と経過について、泉南アスベスト勝たせる会事務局の澤田慎一郎氏が解説。2011年に逆転敗訴の判決が下された第1陣の当時の高裁判決を振り返り、「厳格な許可制の下でなければ操業を認めないというのでは、工業技術の発達及び産業社会の発展を著しく阻害するだけではなく、労働者の職場自体を奪うことにもなりかねないものである」とした判決は、「人命より経済発展を優先するような発言だ」と厳しく批判し、政治主導による早期解決を訴えた。

 泉南アスベスト国賠訴訟第1陣原告の武村絹代さんは、「アスベストによる被害、病気ということを知らずして、多くの人たちが亡くなっていったということを、もっと、本当に分かっていただきたい。原告59名だけではないということ。国は危険である、被害が拡大することを分かっていながら放置した。明らかに国の失態であった」と国の失政を改めて断じた。
(IWJ・安斎さや香)

 ・主催 大阪・泉南アスベスト訴訟原告団・弁護団・勝たせる会
 ・告知 12・3院内集会プレ企画学習会「世界が抱えるアスベスト問題の中の泉南訴訟」

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