「アメリカで直接耳にするのは、安倍首相、麻生副総理への大きな不信感だ」と佐藤丙午氏 ~第8回 国際地政学研究所ワークショップ 2013.7.19

記事公開日:2013.7.19取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「アメリカは、尖閣諸島を射爆場に使っておきながら、領土問題には関心がない。むしろ、日本と中国の戦争には巻き込まれたくないと思っている」と柳澤協二氏は語ったーー。

 2013年7月19日(金)18時より、東京都千代田区のアルカディア市ヶ谷にて「第8回 国際地政学研究所ワークショップ アメリカから見た日本―アジア回帰の本音―」が行われた。安全保障政策などに詳しい専門家3名が、アメリカのこれからの安全保障や国防問題への考え方、日本との関係、中国への対応などについて、それぞれの見解を披露した。

  • パネリスト 柳澤協二氏(国際地政学研究所理事長・元内閣官房副長官補)植木千可子氏(早稲田大学国際学術院教授)、佐藤丙午氏(拓殖大学教授)

 冒頭、柳澤協二氏が、ワシントンD.C.で国際会議に出席した際の話をした。「アメリカは、尖閣諸島を米軍の射爆場(射撃爆撃演習場)に使っておきながら、尖閣を巡る領土問題には関心がない」と前置きした柳澤氏は、「安倍政権のいう集団的自衛権の行使なども、アメリカの現状にはそぐわない印象だ。アメリカは、むしろ、日本と中国の戦争には巻き込まれたくないと思っている」と述べた。その上で、それを実証するカーネギー国際平和財団、ランド研究所などの報告書や論文を紹介。対中国、特に尖閣問題に関わる日米の温度差を指摘した。

 柳澤氏は「日本にとって一番大切な価値観は何かと問われると、これまでは『民主主義の価値観』と答えてきた。しかし、ソ連が崩壊し、民主主義で敵味方を分けるような状況ではなくなった。むしろ、アメリカでは、従軍慰安婦問題などの人権問題の方が議論になっている。日米の間で、人権についての価値観は共有できているのか」と述べ、アメリカと意見を摺り合わせる必要性を説いた。そして、「カーネギー国際平和財団のマイケル・スウェイン氏の言うように、将来的に日本は、核保有国になるのか、あるいは中国に屈するのか、という二者択一を迫られるかもしれない」と警鐘を鳴らした。

 次に、植木千可子氏が「米国の東アジア安全保障戦略 ー展望・課題・本音ー」と題して話をした。「アメリカは、東アジア地域の安定と豊かさを望み、地域覇権国(中国)の台頭を予防する。また、アメリカは、国際公共空間の維持(海、空、宇宙、サイバー空間)を謳い、これを掌握することで、覇権国家としてのアメリカの優位性を保とうとしている」。

 続けて植木氏は、「アメリカのアジア回帰の背景には、アメリカの影響力の低下、アフガンやイラクでの戦争の収束、成長の源としてアジアを捉えていることがある。アメリカの課題は、財政難。裏を返すと、中国の経済的影響力が増大している」と述べた。さらに、「アメリカは、日本にアジアのリーダーになることを期待している。しかし、尖閣は、アメリカにとっても紛争のトリガーになってしまい、日本の管理能力を疑い始めた」と分析した。

 次に、佐藤丙午氏が、日米安保政策に関して「アメリカには、自分たちは歴史的に優越性を持った例外的国家であるという認識と、いや、大国のひとつである、という見方とがある。アメリカが単極化から多極化に移行、つまり国際主義に移行するなら、それを補完する組織が必要となってくる」などと、アメリカの現状認識について話した。

 続けて佐藤氏は「ブッシュ政権では、優越性、特例国家の認識が強かったが、オバマ政権になってからは多極化に向かっていて、国際組織に権限を委譲しつつあるのではないか」と述べ、ヘンリー・ナウ元NSC(アメリカ国家安全保障会議)シニア・ディレクターの論文を挙げて、「オバマ政権が向かっている外交戦略は、衰退する敗北論だ」として、その見立てを解説した。

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