【参院選2013争点解説⑦歴史認識】隠された争点としての「歴史認識」問題(IWJウィークリー10号より) 2013.7.15

記事公開日:2013.7.15 テキスト動画
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 「歴史認識」は、実は参院選の重要な争点である、というと、ピンとこないという人も多いかもしれません。景気対策や原発政策、TPPの議論などと比べると、暮らしに直結するわけでもなく、急を要するわけでもない。重要度や緊急性は他の争点に比べて格段に落ちるように思われます。各党の主張も見えにくく、活発な議論がされていないような印象を持たれるかもしれません。

 しかし、過去の歴史認識でどのような立場をとるかということは、現在の日本が、明日に向かってどのような方向に進むのか、その結果、近隣諸国との関係はどうなるか、外交や安全保障の問題、また憲法改正の論議とも直接・間接的につながります。今回の参院選の隠れた争点として、もっと注目されるべきポイントであろうと我々は考えます。

歴史認識とは?

 5月13日、橋下徹大阪市長が、「精神的に高ぶっている(旧日本軍の)猛者集団に(従軍慰安婦が)必要だったのは誰だって分かる」と発言し、従軍慰安婦問題の口火を切りました。在日米軍司令官に対して「風俗をもっと活用したらいい」と「提案」した発言とあわせ、国内外から批判が殺到、維新の会の支持率を押し下げる結果を自ら招きました。

 少しさかのぼりますと、第一次安倍内閣の2007年6月に、自民党・民主党など超党派の議員連盟が「慰安婦問題は強制ではなかった」という内容の意見広告を米ワシントンポスト紙に出し、さらに、2012年の11月にも同様の意見広告を米スターレッジャー紙に出しています。


2007年6月、ワシントン・ポストに掲載された意見広告

 スターレッジャー紙の意見広告には、当時は野党の党首でしたが、そのわずが2ヶ月後に総理大臣となる安倍晋三氏を筆頭に、文部科学大臣となる下村博文氏、総務大臣に就任する新藤義孝氏、行政改革担当大臣となる稲田朋美氏ら、第二次安倍内閣の閣僚となる4人も名前を連ね、「慰安婦は強制ではなかった」という「歴史認識」を表明したのです。


2012年11月、スターレッジャー紙に掲載された意見広告

 スターレッジャー紙には、”Fact1”として”No historical document has ever been found by historians or research organizations that positively demonstrates that women were foced against their will into prostitution by Japanese army.”(日本軍により、女性が意に反して売春を強要されたという歴史的資料は、これまで歴史家や調査機関によって発見されてはいない)と記されています。

 しかし、5月13日の橋下氏の発言が国内外から批判されると、政府・自民党の態度は一変しました。前出の稲田大臣は14日の定例会見で「慰安婦制度は大変な女性の人権に対する侵害だ」と語り、橋下氏を批判。しかし、「痛ましいことだが、戦時中、慰安婦制度が合法であったことは事実」と発言し、従軍慰安婦が当時、「合法であった」という歴史認識を持っていることを改めて明らかにしました。

 世間の風は、橋下氏に集中し、自民党の閣僚らは、その陰に隠れて風当たりをかわすことができましたが、慰安婦を軍の将兵にとって「必要」と開き直ることと、「痛ましいが合法」と弁明することは五十歩百歩、歴史認識という点では大きく変わりません。

 事実はどうだったのでしょうか。戦前・戦中、従軍慰安婦は「合法」だったのでしょうか。

 明治33年、娼妓稼業を取り締まるために発布された「娼妓取締規則」によると、「公娼制度」が存在した当時でも、所定の場所以外で娼妓稼業を行うことは違法であり、行政が許可しない貸座敷以外での営業も違法とされています。

 警察署が監督し、娼妓は登録制であり、戦地を転々とする軍につき従ってゆく慰安婦を認めていたわけではありません。まして、「いい仕事があるから」と、騙して現地へ連れて行き、本人が望まない売春を強要するのは就業詐欺であり、誘拐であって、「合法」どころか、当時の刑法でも犯罪です。軍も警察も、こうした現状を知りつつ、多くの場合、黙認してきたのが現実です。

 「慰安婦合法論」を主張する人々は、「慰安婦」と「公娼」を意図的に混同し、「公娼制度のもと、慰安婦も合法だった」という理屈を述べていますが、「従軍慰安婦制度」自体が違法であったことは明白な事実です。詳しくはIWJウィークリー5号をご覧ください。

 この問題を国連で初めて提起した元弁護士・龍谷大学元教授の戸塚悦朗氏は、6月24日、岩上安身によるインタビューで「従軍慰安婦制度」について、これは登録や指定もなかったことから、「公娼制度」でもなく、「奴隷制度であり、醜業条約違反であり、強制労働条約違反」であることを明らかにしました。

 では現実に、安倍政権、および安倍総理は、これまでどのような主張をしてきたでしょうか。

 2007年3月、第一次安倍内閣で当時の安倍総理は、参議院予算委員会で「慰安婦狩りのような強制性、官憲による強制連行的なものがあったということを証明する証言はない」と発言し、「慰安婦の強制連行を裏付ける直接的な証拠がなかった」とする内容の閣議決定をしています。安倍総理は、軍が慰安婦を力ずくで強制的に連行する「狭義の強制性」を否定し、米国下院で慰安婦問題を非難する決議案が出ても謝罪しないと突っぱねました。

 しかし、その後2007年4月の日米首脳共同会見で、慰安婦問題に関し「慰安婦の方々にとって、非常に困難な状況の中で苦しい思いをされたことに対して、人間として、また総理大臣として心から同情をいたしておりますし、またそういう状況に置かれていたということに対して、申し訳ない思いでございます」と、それまでの態度を一変させて謝罪しました。

 しかもその謝罪は元慰安婦に対してではなく、なぜかブッシュ大統領に対して行われました。そして、その謝罪をブッシュ大統領が、「従軍慰安婦の問題は、歴史における、残念な一章である。私は安倍総理の謝罪を受け入れる」と応答するという、不自然な展開でした。米国が、安倍総理と中韓はじめ各国との間に入って、取りなしたような形になったわけです。

 ところが、その2ヶ月後の2007年6月には、先に述べた「慰安婦問題は強制ではなかった」という英語の意見広告をわざわざ米国で出し、ブッシュ大統領との共同会見で述べた「謝罪」に関しても、2011年11月23日の産経新聞のインタビューで「あれは謝罪ではなかった」と発言するなど、性懲りもなく手の平を返す発言を繰り返してきました。

 そして2012年11月には、再度、「強制ではなかった」との意見広告を米紙に出したのです。これでは、間に入って取りなした米国政府のメンツも丸つぶれです。あの「謝罪」は何だったのか。これではアジアの国々とだけではなく、米国との関係もおかしなものになっていくのは当然でしょう。言うことがコロコロ変わる者を、誰も信用しません。今年に入り、オバマ政権が、安倍総理に対して「異常」なまでに冷淡なふるまいを取り続けているのはなぜなのか、よくよく考える必要があります。

 なお今年3月8日付のmsn産経ニュースは、「慰安婦問題で首相、『ブッシュに謝罪』報道を完全否定」というタイトルの記事を配信しました。同日に行われた衆議院予算委員会で、辻元清美議員の質問に対し、「この問題はまったく出ていない。事実関係が違うということだけは、はっきりと申し上げておきたい」と述べ、ブッシュ大統領に「謝罪」したという事実を、安倍総理が完全否定したというのです。

 3月8日の衆議院予算委員会の議事録を参照すると、安倍総理は辻元議員の質問に対し、次のように答弁しています。

 「今、事実関係において間違いを述べられたので、ちょうどいい機会ですから、ここではっきり述べさせていただきたいと思いますが、ブッシュ大統領との間の日米首脳会談においては、この問題は全く出ておりません。

 ブッシュ大統領が答えられたのは、その前に私が既に述べている慰安婦についての考え方として、いわば、二十世紀においては戦争や、人権が著しく侵害された時代であった、そして女性の人権も侵害された、残念ながらその中において日本も無関係ではなかった、二十一世紀においてはそういう時代ではない、人権がしっかりと守られていく、女性の人権も守られていく時代にしていきたいということを述べていたことについての評価として述べたわけでありまして、その事実関係が違うということだけははっきりと申し上げておきたいと思います」

 しかし、首相官邸の議事録には、日米首脳会談において、はっきりと、安倍総理が「自分は、辛酸をなめられた元慰安婦の方々に、人間として、また総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況におかれたことについて申し訳ないという気持ちでいっぱいである」と述べ、そのことに対し、ブッシュ大統領が「私は安倍首相の謝罪を受け入れる」と発言したと、公式の記録として残っています。

 従軍慰安婦の問題が「まったく出ていません」という安倍総理の予算委員会での答弁は、共同会見の動画、そして首相官邸の公式の議事録と、明らかに矛盾しています。そして、そのことを指摘せずに、「慰安婦問題で首相、『ブッシュに謝罪』報道を完全否定」と報じたmsn産経ニュースの記事は、明らかに誤報です。

 問題は、事実がどうであったか、に尽きます。安倍総理らが繰り返し唱える「慰安婦の強制連行はなかった」とする主張が「歴史的事実」であるなら、屈せず主張し続けるのは当然のことです。ですが、事実はまったく違うのです。

 戸塚悦朗氏は、騙して連れて行く誘拐による連行が、当時の刑法で犯罪に該当し、実際に処罰された事例があることを、当時の一次史料を発掘してつまびらかにしました。

 戸塚氏が発掘した史料とは、昭和11年2月14日、第1審の長崎地裁刑事部の宣告(判決)文で、長崎の一般女性が「上海に行けばいい仕事がある、高給が稼げるといって連れて行かれ、行ってみたら海軍の指定慰安所だった」ということが記されています。

 この一件で、長崎の警察は10人の業者等を逮捕・起訴し、大審院(最高裁)判決でも、全員有罪となりました。力づくで連行される「略取」と、騙して連れて行った「誘拐」による連行は、どちらも「略取誘拐罪」であり、刑法上同じ条文で刑も同じ。どちらも本人の本意ではないことから、同じ罪にあたります。ここで重要なのは、騙して連れて行った先が、「海軍の指定慰安所」であると裁判所の宣告文にしっかり書いてあることだと戸塚氏は指摘しています。

 つまり、『軍の指定慰安所』に連れて行かれて売春を強要されたことが、当時の刑法上の誘拐罪に該当したということです。軍の関与はまったくなかった、軍には責任はない、などと言い逃れをすることはできません。もし、この判決があの当時、広く社会に共有されたら、戦地で意に添わない売春を強要される女性の被害・悲劇は、ずっと少なくてすんだだろうと、戸塚氏は語ります。事実を「直視する」こと、「知る」こと、「知らせる」ことが、いかに大切なことか、痛切に思います。

 さらに、今年に入り、新たな展開がありました。安倍総理はこれまで繰り返し、「力づくで連行するなどの狭義の強制性はなかった」という答弁を繰り返してきました。しかし、実はそうした「狭義の強制連行」の事実も、日本政府の収集した資料の中に存在していたのです。

 1993年、慰安婦の強制性を認めた河野談話の発表にあたって、政府がとりまとめた資料の中の「バタビア臨時軍法会議の記録」に、「慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどした」などと、明らかに強制的に連行したという記述があることが明らかになりました。

 バタビア臨時軍法会議とは、「日本軍がジャワ島スマランなどでオランダ人女性らを慰安婦として使う計画を立て、その実現に直接・間接に関与したことを明らかにしたもの」を指します。

 この資料の記述の発見によって、「狭義の強制連行の事実はなかった」と主張してきた、安倍総理をはじめとする強制連行否定派の人々の論理は、完全に否定されることになりました。日本共産党の赤嶺政賢衆院議員が出した質問主意書に対する6月18日付の答弁書で、政府が収集した資料の中に、慰安婦の強制連行を示す資料があった、という事実を安倍内閣として正式に認めたのです。すなわち、2007年、第一次安倍内閣において、「慰安婦の強制連行を裏付ける直接的な証拠はなかった」とする閣議決定を、第二次安倍内閣が自ら否定する形で、その事実の存在を認める閣議決定を行なったわけです。

 しかし、こうした経緯は、まともにメディアが報じないためもあり、ほとんど国民の間で知られていません。

歪められてきた明治の歴史認識

 「歴史認識」とは、いつからの出来事が、主な議論の対象とされるべきなのでしょうか。

奈良女子大学名誉教授の中塚明氏は、6月30日に行われた「第10回『慰安婦』問題とジェンダー平等ゼミナール」で、日本と朝鮮半島との関係において、満州事変以降が主な議論の対象にされ、それ以前の明治維新から韓国併合に至るまでの時代は、日清・日露戦争に勝利した「栄光の明治」の歴史として美化されてきた朝鮮問題をめぐる正しい理解が進んでいない現状を憂えています。

 中塚氏は、日本による朝鮮侵略の歴史で、隠された真実があることを戦史の一次資料にあたって解明してきました。日清・日露戦争に勝利し、列強の一角に並んで明治時代は栄光の時代であったと評される陰に、朝鮮で日本軍と明治政府は何をやっていたのか。

アジア制覇の第一歩として朝鮮を支配する目的で実行された江華島事件や、5万人とも言われるジェノサイドを断行した東学党の乱、日本の公使三浦梧楼の指揮のもと、王宮に押し入って大韓帝国の王妃だった閔妃を計画的に殺害した閔妃暗殺から、武力による脅迫のもと、韓国を併合するに至るまで、日本の軍と政府が行なってきた数々の蛮行の史実が伏せられ、隠されてきたことを中塚氏は指摘し続けています。

 慰安婦問題で講演を行う中塚明・奈良女子大学名誉教授~6月30日

 史実が都合よく塗り替えられ、美化されてきた現状を、頬かむりして政治的な理由によって放置し続けるのではなく、直視したくない、苦い過去であっても、起こった事実を正確に知り、伝えるための努力を重ねることが問題点を受け止め、韓国との相互理解に向けた開かれた議論がなされるよう努力することが、歴史認識のための出発点と言えるのではないでしょうか。

参院選、各党の公約における歴史認識への言及

 「歴史認識」の問題は、「過去」の問題ではなく、「未来」に向けての課題です。今後の外交、とりわけ中国、韓国といった近隣諸国との関係に大きく影響し、ひいては欧米諸国との関係性にも多大なインパクトを与えるものと言えます。日本が国際社会でどのような位置を保つことができるか、ということにも影響し、さらに踏み込んでいえば、東アジアにおいて再び武力衝突の可能性が高まってきた「現在」であるからこそ、問い直されるべき問題です。冒頭で述べたように、今月21日に投開票を控えた参院選でも、隠された重要な争点として、注目したいところです。以下、各党の公約で歴史認識に触れられている箇所を比較してみましょう。

 各党の公約、および主張を見ていくと、中国、韓国の主張と対立した歴史認識の立場を崩していない自民党、日本維新の会の右派と、歴史認識に関する立場が明確でない中道右派、中道左派、自民党、維新の会とは対立した立場を堅持している左派の、大筋3つのグループに分類できるように思われます。

 自民党は、「中国、韓国との関係の発展、近隣諸国との友好協力関係の増進に努める」と公約に掲げている一方で、公約を解説した総合政策集では、「慰安婦問題の言説などにおいて、歴史的事実に反する不当な主張が公然となされ、わが国の名誉が著しく損なわれている」と主張。領土、歴史認識などの問題を調査・研究する機関を新設し、「的確な反論・反証を行う」と、韓国側の主張を真っ向から退けるような内容を展開させています。

 日本維新の会は、「従軍慰安婦等について歴史的事実を明らかにし、日本国および日本国民の尊厳と名誉を守る」との表現に留めて語気を弱めており、橋下氏の発言が国内外で波紋を呼んだことに配慮したかたちの公約となっています。

 生活の党は、歴史認識に関して立場を明確にはしていませんが、「日中間、日韓間における歴史認識や争点となる領土等の諸問題について官民の専門家が日常的に協議する国際会議の場を常設する」ことを公約に掲げています。民主党、公明党、みんなの党、みどりの風については、歴史認識に関する言及が特段見られませんでした。

 これに対し共産党は、公約の中で安倍政権が過去の侵略戦争と植民地支配を正当化、美化していることは「戦後の国際政治の土台を覆すもの」であると批判し、「アジア諸国や米国から強い懸念をもって見られている」と指摘。維新の会に対しても、「日本の政治に参加する資格はない」と、先に述べた橋下氏の発言や、それを擁護した石原慎太郎代表の「戦争に売春はつきもの」という発言を糾弾しています。共産党の公約には、従軍慰安婦をめぐる問題について、「日本政府として公式に謝罪し、個人補償を行うことが不可欠」だと明記されています。

 社民党も、「『慰安婦』問題の最終的な解決をはかるために『戦時性的強制被害者問題解決促進法案』の成立」を目指し、「強制連行問題について政治解決をはかるため、ドイツの『記憶・責任・未来財団』にならって国と企業の負担による基金を創設することを検討し、被害者・遺族への補償を行う」ことを公約に掲げました。

 外交上、重要視していない政党はないでしょう。

 こうして並べてゆくと、安倍自民党の公約が突出していることがよくわかります。嫌韓・反中感情に訴えて人気を得ようという程度の思惑ではなく、改憲、国防軍の創設などとあわせ、日本政府、および歴代の自民党内閣が築いてきた「歴史認識」の書き替えを本気で狙っているかのように見受けられます。安倍政権のような姿勢で、今後中国、韓国と「友好協力関係」が築けるのでしょうか。事実、昨年の衆院選以降、両国との関係は急激に悪化しています。

 トップ外交を見ても、米中・米韓・中韓が良好な関係を築いている中、対日本では、日中・日韓ともに関係が険悪化していて、日中、日韓内の首脳会談が開かれる見通しは今のところありません。それどころか、日本が頼みの綱と考えている米国にも冷淡な扱いを受けているなど、国際社会の中で、日本の孤立は深まっていくばかりです。

 悪化しているのは、外交における国家間の対立だけにとどまりません。国内においても、今年に入って急激に過激化していた在日韓国・朝鮮人に対する排外デモ、ヘイトスピーチについて安倍総理は、5月7日に野党の議員から質問されるまで、意見を表明することもなく放置し続けてきました。政権のトップがそのような「放置」の姿勢である限り、警察も動きません。毎週行われている排外デモは現在も続いており、民間レベルでも対立感情は深まっていると言えます。

 安倍政権は、第一次安倍内閣で、先に述べた強制連行を否定した2007年の閣議決定により、慰安婦の問題を切り捨てたことはさることながら、今回も今年2月に慰安婦問題の強制性を認めた「河野談話」の見直しに一時前向きな姿勢を示しました。4月には、歴代の内閣が踏襲してきた、侵略戦争と植民地支配の事実を謝罪した「村山談話」の踏襲にも消極的な発言をしました。

 結局、こうした一連の歴史修正主義的な発言が、米国を含め周辺諸国からの反発を招いているわけですが、選挙が迫ってきているためか、河野談話について「歴史の事実は学者が検討する」(5月25日、参議院予算委員会)、村山談話についても「全体として受け継いでいく」と、発言を一転させる2枚舌を公然とやってのけています。

 過去の失敗から学ぶことをせず、軍国化の道をひた走るかのような安倍政権の姿勢は、党外の最も強力なサポーターである石原慎太郎・日本維新の会共同代表の「今なら中国に勝てる」「日本は軍事国家になるべきだ」という一連のアジテーションとあわせ考える時、近い将来、日本が破滅的な戦争に突入する危険性を十二分に秘めています。周囲の国との軋轢はあれど、協調と共生の道を探っていくのか、力任せに武力に訴えることで、過去の「負い目」の一掃を図ろうとするのか、私たちはその選択に迫られているのだと思います。

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