舩橋晴俊氏「コミュニティー、自治体レベルと、個人レベルの2層で支えることが重要」 ~日本学術会議分科会「原発災害からの回復と復興のために必要な課題と取り組み態勢についての提言」に関する記者会見 2013.6.27

記事公開日:2013.6.27取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年6月27日(木)13時より、東京港区にある日本学術会議で「原発災害からの回復と復興のために必要な課題と取り組み態勢についての提言」に関する記者会見が行われた。福島第一原発事故という前例のない災害に対して、社会学的な視点から調査研究に取り組み、提言をまとめたものである。会見では「低線量被曝の長期影響に対する統合的な科学的検討の場の確立」など、5つの具体的な政策提言を発表した。

■ハイライト

  • <会見者>
  • 舩橋晴俊氏(日本学術会議社会学委員会 東日本大震災の被害構造と日本社会の再建の道を探る分科会委員長、法政大学社会学部教授)
  • 吉原直樹氏(同副委員長、大妻女子大学教授 )
  • 山下祐介氏(特任連携会員、首都大学東京准教授 )

 冒頭、舩橋晴俊氏は「東日本大震災は未曾有の大災害である。特に原発災害は特異なもので、従来の法制度の枠組みでは十分に対応できない。まず、これを認めて、それに即した制度改革や政策の革新、創造的対応が求められる。そのために、2011年12月に分科会を立ち上げ、約1年半の調査検討の結果をまとめた」と、提言に至る流れを説明した。

 続けて、「この提言には、日本学術会議のほか、日本社会学会、地域社会学会、日本都市社会学会も加わっている。原発事故の発災後、多くの社会学者が被災地に入り、現地調査を何百回と重ねた合同研究の成果である。社会学的視点で調査分析を行い、早急に必要な3つの課題を抽出した。それが、心身の健康問題、被災者の生活再建、被災地の地域再生だ」と述べた。

 そして、それらに取り組むための政策提言として、「低線量被曝の長期影響に対する統合的な科学的検討の場の確立」「健康手帳の機能も有する被災者手帳」「避難住民への継続的訪問調査を住民参加型で実施」「長期避難者の生活拠点形成と避難元自治体住民としての地位の保障」「被災住民間のネットワークの維持」の5つを挙げた。

 舩橋氏は1番目の政策提言について、「放射線量については信用できる基準がない。その確立のため、意見をとりまとめる議論の場を構築することが、社会学者の仕事となる。なぜなら、わが国の方針は、行政側の立場と、それに寄った科学者らの学説に偏っているからである。二項対立ではなく、反対意見も含めた多様な学説を一堂に会して議論をしていくことが、正しい基準を導くためには必要だ」と述べた。また、「低線量被曝の健康への影響、空間線量と土壌線量の予測問題、除染の方法と効果、長期的な住民の健康管理の4つについては、賠償・補償問題と切り離して議論するべきだ」とし、続けて、2番目以降の政策提言の内容を説明した。

 次に、吉原直樹氏が「原子力ムラの力は強いが、それを批判するだけではなく、当事者主体性を取り込んだ地方自治の確立を考えるべきである。被災した自治体の間にも格差が出ている現状があり、それらの違いを丹念に拾い上げながら、議論をしていくことが必要だ」と所見を述べた。

 山下祐介氏は「この提言では、最近、言われ始めた住民の帰還政策については触れていない。社会学の立場からは、帰還はなかなか難しいと思う。われわれが会った被災者の多くは、『帰れない、という意見は言いにくい』と訴える。『帰りたい』という意見は口に出しやすく、行政は、そのような声だけを取り上げて帰還政策を進めている」と指摘。「社会学的な知見も組み込んだ政策形成を」と話した。

 質疑応答となり、「この提言は、今後どうするのか」との問いに、舩橋氏は「学術会議の提言は、法律により、政府、各省庁に届けることになっている。また、今回は福島の自治体にも送りたい。これをきっかけに、行政側から対話の要請などがあれば、前向きに応じていきたい」と答えた。

 1つ目の提言にある「統合的な科学的検討の場」について質問されると、舩橋氏は「場を作るだけでなく、科学によって答えが出るもの、出ないものを区別することが必要。今までは、科学で答えが出せない問題にも、科学者が利害調整に動員され、もっともらしいことを言わせられてきた。今の低線量被曝の扱いを見ると、水俣病の混迷と似たような状況になりかねない。科学と政治的判断とは、切り離してほしい」と訴えた。

 「科学者たちに統一見解を出すところまで、求めるのか」と重ねて問われると、舩橋氏は「科学には複数の学説があって当然だが、それらが競合中であるなら、競合中だと、世間に伝えなければならない。政治力や経済力で、一方が正しいことにしてはいけない」と力を込めた。

 避難先でも住民登録を可能にする二重住民登録の提案について、「外国には同様の事例があるのか」との問いに対しては、「二重住民登録の海外事例の有無は、わからない。日本での課題は、投票権と納税問題だが、ある程度、整理はできている」と述べた。

 また、被災者手帳に関して、「避難者の生活再建に対して、政府の対応には積極性が見られない。被災者手帳については、差別や風評被害を心配する声もあるが、過去の事例からみて、所持者が守られることの方が大きい。悪いことを予想し、それを回避していては何事も解決しない。解決方法を模索して実行するのが、専門家と政治の役目だ」と見解を語った。

 最後に、舩橋氏は「日本は、行政組織の持つルーチンワークの処理能力、政治家の指導力、専門家の力、という3つによる連携体制を作ることに失敗した。これから私たちは、政治、行政、専門家の3者に、世論とメディアを含めた5者による連携を考え、構築していかなくてはならない」とまとめた。

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