2013年6月23日(日)10時から、岡山県岡山市の岡山県立図書館で、奥津亘弁護士を講師に招いて憲法学習会「憲法改正草案を斬る!」が開かれた。奥津氏は「自民党の改正草案には、明治憲法のノスタルジーに支配されている感がある」とした。
(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)
2013年6月23日(日)10時から、岡山県岡山市の岡山県立図書館で、奥津亘弁護士を講師に招いて憲法学習会「憲法改正草案を斬る!」が開かれた。奥津氏は「自民党の改正草案には、明治憲法のノスタルジーに支配されている感がある」とした。
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「安倍政権は、アベノミクス効果に根ざした高い支持率で衆院選に勝ち、憲法改正のルールを定める96条を、まず変えようとしている。だが、これに対して、改憲派からも『やり方が姑息』との批判の声が届いている」。最初に主催者側の女性がマイクを握り、こう話した。ここにきて、安倍政権の改憲路線にはトーンダウンが見られるも、「本音の部分では、相変わらずやる気まんまんに違いない」との主張だ。「中国や北朝鮮の脅威が叫ばれているが、どこまでが真実なのか」とも述べ、改憲のために扇動的な報道が横行しているのではないか、との見方を示した。
続いて、岡山県参議院議員候補の高井たかし氏(無所属)が、飛び入りで挨拶した。高井氏は「自衛隊を国防軍に変えることが、安倍首相の悲願。96条の改正はその突破口だ。今、国民はそれに対し『ノー』を突きつけなければいけない」と訴えた。そして、「今後3年間は、国政選挙が行われない可能性が高い」とした上で、今度の参院選の重要性を、次のように力説した。「今、全国に31人区あるが、そのすべてで自民党が勝つとさえ言われている。でも、岡山は、われわれが勝てると信じている。なぜなら、この12年間、自民党に議席を渡していないからだ」。
その後、奥津亘弁護士が登壇した。マイクを握ると現行憲法の条文を読み上げ、「96条は立憲主義を担保する重要な柱だ」と強調。自民党が、昨年4月に発表した改憲草案については、やはり条文を読み上げたあと、「国を形づくるために、国民に負わせる義務・役割が書かれている」と説明を加え、現行憲法とは対照的であることを指摘した。
奥津氏は「96条の改正を阻止すべし」と力を込めた。「自民党は、発議要件を緩和する理由を、国民主権の重視に求めているが、日本の発議要件が特段に厳しいわけではない」とし、諸外国との比較でその証拠を示した。また、「憲法改正については、普通の法律よりも縛りをきつくするのが世界の常識」と伝えると、「原発や、臓器移植の正否などを問う国民投票を行うことに、自民党は反対の立場だったのに、96条の改正では発議要件緩和を認めるのは解せない」と、自民党の御都合主義を断じた。
さらにまた、「自民党は96条の改正で、国民主権を前面に押し出しているが、現在の投票率の低さからしても、国が国民の声を聞くことは簡単ではない」とも語り、あのナポレオンやナチスには、国民投票で絶対的権力を樹立した歴史的経緯があることを紹介した。その上で、「総議員数の3分の2という発議要件は、国民投票の難しさを巡る思案が反映されており、それを2分の1に緩和すれば、国民の声が聞きやすくなるとの主張は安直だ」とし、96条改正を巡る自民党の主張を重ねて批判した。
「96条改正後に、自民党が標的にしているものの1つが平和主義」。奥津氏はこう指摘した上で、「これまで、憲法に基づく裁判は数多く行われたが、そこで訴える国民側がバックボーンにしてきたのが、現行憲法が定める平和的生存権だ。たとえば、1969年の(北海道長沼町への自衛隊ミサイル基地設置を巡る)長沼ナイキ訴訟では、1審では札幌地裁が『平和的生存権』を明言して、国に対し、初の違憲判決を下している」などと述べ、自民党草案の前文では「平和的生存権」に関する記述が削除されていることに懸念を示した。「自民党草案の下では、これまで行われてきたような各種平和運動が、憲法上の正当性を失ってしまう」。
また、安全保障についても、「草案では、9条の2項から『戦力不保持』が削除されており、日本が米国を守ることも、集団的自衛権行使に入ってしまう」と指摘。さらにまた、「草案の、国防軍に関する記述では、『国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動』などと、幅広く解釈できてしまうくだりがある。90年代の湾岸戦争の際には、自衛隊は現行憲法の縛りがあったため、軍事活動には参加しなかった」とも話し、日本に軍事政権が復活することを危惧した。
奥津氏は「徴兵制度の復活を、警戒しておく必要がある」と呼び掛けた。「国民に、国土防衛義務があることが露骨に記述された部分は、草案の中にはない。だが、『日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り──』などの記述があり、これらを総合すると、徴兵制の復活もまんざらではなさそう、と読めてしまう」。奥津氏は、米国の事情に照らして、「徴兵制を使わなくても、軍隊に人材を集めることは可能だ。しかし、国を守るという観点では、徴兵制度は伝統的手法として、今なお存在する。自民党の草案は、徴兵制復活につながる危険性があると思う」と話した。