福島第二原子力発電所にて、冷温停止状態の維持に必要な設備の復旧工事が完了したことから、2013年6月7日(金)に報道現地取材が行われた。主に高台非常用ガスタービン発電車、海水熱交換機、非常用DG、防潮堤の復旧状況が公開された。
福島第二原子力発電所にて、冷温停止状態の維持に必要な設備の復旧工事が完了したことから、2013年6月7日(金)に報道現地取材が行われた。主に高台非常用ガスタービン発電車、海水熱交換機、非常用DG、防潮堤の復旧状況が公開された。
■全編動画
先ず、本年5/11に就任した設楽新所長の挨拶から始まった。
原子力部門の建設、保全で勤務し一昨年11月から2Fの副所長、ユニット所長と2年に渡り2Fで勤務した。5月に所長に就任した。「現状を鑑みるに改めて身の引き締まる思いで、安定したプラント運営を行う。原子力改革に進めていくにあたり、意識向上、技術力向上、対話力向上を目指し、個の力を向上させ、組織としての結集してゆく、地域が元の状態に戻るよう、できることをしっかりやっていくことが地域社会への責務と思ってる」と意気込みを述べた。
続いて今泉副所長による福島第二の復興状況について説明が行われた。内容は、これまでの東電本店で行われている記者会見で発表されている内容と特段変わりはない。
この後、参加報道記者33名は3班にわかれ、現場の取材に向かった。
緊急用高台電源設備/空冷式ガスタービン発電車・高台経由ポンプ
海抜46mの位置にある、緊急用高台電源設備/空冷式ガスタービン発電車・高台経由ポンプを取材する。非常時に外部電源が切断した場合などに、現在の場所から電源ケーブルで開閉器へ接続し、必要な冷却装置へ電力を供給するための設備である。
トレーラー状の”ガスタービン発電機車”と”制御車”が一セットとなり、4500kVAの発電能力を持っている。残留熱除去系を一系統駆動することができる能力がある。発電機用に200リットルの軽油タンクを備えているが、1500リットル/時を消費するため、実際には隣接する地下軽油タンクから給油しつつ駆動することになる。
更に、それぞれが自走可能なため、場合によっては電力を供給する装置に接近させ発電する運用方法も考えられている。その場合は発電用軽油供給のためタンクローリー車を使用する。発電車、制御車、タンクローリー車の3台を組みとして移動し発電する運用は、どのような場合を考えているか記者が質問したが、状況に応じるため具体的な場合は答えられないという回答であった。
熱交換器建屋
熱交換器建屋外壁は、OP12.6mまで津波が到達した。建屋内には、熱交換器用の海水ポンプ、その上部にポンプを駆動させるモーターが設置されている。建屋内も床から254cmまで浸水したが、モーターはかろうじて水面より上にあった。建屋扉などが津波で破壊され浸水したため、扉部分を塞ぐ、より頑丈なものに変更するなど浸水対策が成されている。
1号機R/B(原子炉建屋)内非常用DG(ディーゼル発電機)
9気筒のディーゼルエンジンで発電機を駆動する。起動開始後10秒で6.9kVを発電できる。地下2階部分の設置されており、フロア内は115cmまで浸水した。ディーゼルエンジン部分は洗浄し回復できたが、発電機部分は巻線の巻き直しを行い復旧した。
エンジン駆動のため空気を取り入れる必要があり、その取り入れ経路から津波が浸水した。途中にフィルタ、防水シャッター、防水扉などが設置されている。
しかし、基本的な空気取り入れ経路は変わっておらず、3.11と同様の津波ならば浸水する可能性は大きいを思われる。
1号機R/B南側防潮堤
R/B南側に、海に向かって傾斜している道路があり、津波到来時に波が駆け上がり、建屋に浸水した。現在土嚢を積み、仮設の防潮堤を構築している。防潮堤は、先の津波の高さより高い、OP+15.4mの高さがある。
しかし、仮設の防潮堤であり、土嚢を積んだけなので、より大きな津波などでは破壊される可能性もあると考えている。
建屋間の移動途中、随所に仮設の電源ケーブルが敷設されたままになっている。これらは、再び非常時になった場合、即時に対応できるよう、現状のまま維持しているとの説明。大電力用の非常に太く、重たいケーブルが複数本敷設されている。
以上で今回の現場取材で公開された場所の取材は終了した。この後、最初の会議室に戻り会見形式の質疑応答が行われた。続いて、TV局の要望によりぶら下がり形式でTVカメラ撮影が行われた。
主な質疑内容は以下。
――(土嚢を積んだ)防潮堤の設置時期は
「H23.11月に設置した。長さは76mある」
--震災時に3号機のRHRが生き残った理由は
「津波のやってくる方向が、南東からと港湾方向から、二つが干渉し、真ん中付近に位置する設備が生き残ったのではないか、幸運があったのではと推測している」
--高台ガスタービンエンジン、月に一回の訓練では、どのような緊急事態を想定しているのか
「電源喪失に対応できるようにと考えている。初動は17人、必要なところに要員を送ることを考えている」
--2Fのスタッフ、復旧完了まで事業費費用はどれくらいか
「職員は500人ぐらい、日々変動ある。24年度決算で約27億円
--2Fの今後のスケジュール
「1,2,3号機の燃料棒のとりだしを夏以降、2016年度内に全号機で完了させたい」
--3号機の燃料取出しが一番遅い理由はなにか
「天井クレーンを使うが、3号機クレーンの部品取り換えが必要になり、その納期のため」
--今後燃料の冷却のためだけになるが、そためだけに500人維持していくのか
「既に震災前より約3割減っている。冷温維持のため、機器の点検、非常時訓練など行い、安全性信頼性をより向上させることも行う。必要な人員数はそう変わらず、しっかり確保していきたい、」
今回の取材場所について、放射線管理区域への入退域時には、線量チェックを行うものの、通常の作業服で移動できる範囲だった。随所に、津波到達時に浸水した高さを示すパネルが設置してあり、注意喚起を即している。また、復旧前後の状況を説明する写真パネルも随所に用意されていた。被災し、損傷した設備の一部も、取材/見学者向けに見せるかのように残されており、ともすれば一般の工場見学に近い感覚になりがちだった。
発電を行っていないが、設備の稼働のために電力を消費し続けるなど経営的に不健全な資産であり、主として冷却の機能だけを維持していくとなると従業者の士気を維持できるのか、という懸念も感じられる。先が見えない中どうなっていくのか、という不安感は従業者も感じているようだった。
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