「『共謀罪』は、今秋、または来年の国会で上程されてもおかしくない」――。山下幸夫弁護士は、2013年6月4日に開かれた「共謀罪創設反対を求める院内学習会」でこのように述べ、早急な議論の必要性を主張した。
政府は、国連越境組織犯罪防止条約の批准のために共謀罪の新設が必要だと判断した。しかし、犯罪計画の「実行の合意」の段階から処罰対象になるため、どのような捜査で立証するのか、監視社会を招くのではないか――など、様々な危険性をはらんでいることから、03年から共謀罪法案は国会上程、審議、廃案を繰り返してきた。
海渡雄一弁護士は、最大の問題点は、罪を犯しておらず、準備段階でもない、合意段階から処罰する点にあると強調。「『上司を殴ろうか』と、同僚同士で相談し、合意すれば、傷害の共謀罪が成立する」。共謀罪成立には人と人との合意が必要であるため、立証のための捜査方法も疑問であるとし、「メール傍受、会話盗聴などでしか立証は不可能。意志の合致を処罰するわけだから、盗聴法の適用拡大などが危惧される」と、警察権力の肥大化に対する懸念を示した。
駿河台大学法科大学院の島伸一教授は、実行犯とはならなかったものの、殺人をともに計画した者についても、殺人罪の「共謀共同正犯」が成立することなどを例に挙げ、「共謀共同正犯論は目標犯罪の結果からさかのぼって、その背後にある共謀までを処罰していこうとするもの。逆に、共謀罪は共謀から始まり、目標犯罪の結果までを時系列的に犯罪遂行過程に即して、各種犯罪を処罰していこうとするもの」と両者の違いを説明。
「いずれのアプローチによっても、共謀を処罰することには代わりはない。どこまで処罰できるかは解釈による。共謀罪の用語が日本に存在しないだけで、新設しなければならない、という議論はあまりに短絡的である」と述べ、現行法下でも国連越境組織犯罪防止条約批准は可能であるとの見解を示した。