第8回八王子市民講座「安全な原発はあるのか?」〜福島第一原発の現状から考える〜後藤政志氏講演 2013.5.18

記事公開日:2013.5.18取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・荒瀬/奥松)

 2013年5月18日(土)13時30分から、東京都八王子市の北野市民センターにおいて、「第8回八王子市民講座『安全な原発はあるのか?』~福島第一原発の現状から考える~後藤政志氏講演」が開かれた。東芝で原子炉の設計に携わっていた後藤政志氏が、福島第一原発事故を設計者の視点から解説し、福島の現状について説明した。

■後藤氏講演

■質疑応答(一部音声をカットしています)

  • 第1部 元原発技術者が見た原子力の危険性
    講演 後藤政志氏(元東芝・原子炉格納容器設計者、NPO APAST理事長)
  • 第2部 原発事故の作業現場から(中継には含まれません)
    報告 吉川彰浩氏(元東京電力社員)
  • 日時 2013年5月18日(土)13:30~
  • 場所 北野市民センター(東京都八王子市)
  • 主催 子どもたちの未来と自然エネルギーを考える八王子市民講座 

 後藤氏は、福島第一原発の現状について、「先日もネズミによって、仮設の配電盤がショートし、全電源が停止した事故があったが、東電側は『60時間以内に電源を回復できれば大丈夫で、今回は29時間で回復したから問題はない』という考え方をしている。これは、誤りである。仮設の設備で、事故の修復をなんとかやっている中で、原因がわからなければ、また、すぐにでも電源が落ちる可能性があるということを考えていない。これでは、安全を保証することはできない」と述べた。

  また、「福島第一原発には、地下水が1日あたり400トンも流入する事態が続いている。新しく増える汚染水を貯めているタンクは仮設のもので、5年ほどの耐久年数しかなく、今はすでに2年経過している。東電は、対策として、貯水槽と称して地面に穴を掘り、シートを張って汚染水を入れていたが、たびたび漏れているのが現状である。汚染水処理でも電源喪失でも、いつ再発してもおかしくない状況が続いている」と問題点を挙げた。

  後藤氏は、事故原因についての調査の中で、アイソレーションコンデンサーという冷却装置について、「政府事故調査委員会は、電源が落ちたときに、バルブが閉まったと説明しているが、国会事故調査委員会では、別の見解を出している。地震の際に配管が切れている可能性や、人為的に止めてしまったという可能性、水素が入ってきて機能しなかった可能性などを指摘している。この一点においても、さまざまな仮説があるが、プラントに入ることができないので、証拠がない。原因の究明すら、確実にできているとは言えない現状だ」と述べ、この状況で政府が再稼働判断を急いでいることを批判した。

  また、後藤氏は、政府の出した新たな安全指針において、原発の敷地境界における放射線の規制については触れていないことを指摘し、「フィルターの設置やベントをしても、敷地境界でどれだけの線量を浴びるかということが問題である。福島第一原発では、すでに(基準値が)何桁も超えている。かつての立地指針のままでは、原発を立地できないので、規制委員会が条件から外している」と述べた。

  最後に、後藤氏は「いったん原発で事故が起きて、高線量になってしまうと、人間は何もできない。多重防護には限界がある。制御不能な原発はやめるべきだ」と結論づけた。

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