2012年12月1日(土)16時より、東京都八王子市の首都大学東京南大沢キャンパスで、第7回八王子市民講座「小出裕章さん講演会『子どもたちに原発はのこせない!』」が行われた。小出氏は「無害化できず100万年も管理が必要な核燃料のゴミを、子孫にこれ以上残すわけにはいかない。原発は即廃止にすべき」と話した。
(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)
2012年12月1日(土)16時より、東京都八王子市の首都大学東京南大沢キャンパスで、第7回八王子市民講座「小出裕章さん講演会『子どもたちに原発はのこせない!』」が行われた。小出氏は「無害化できず100万年も管理が必要な核燃料のゴミを、子孫にこれ以上残すわけにはいかない。原発は即廃止にすべき」と話した。
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講演は、人類の歴史に関する話から始まった。「人間という生き物が生まれたのは、約400万年前。狩りをして動物を食べることを覚えたのが、10万年前。約1万年前に農耕を覚えて定住するようになり、やっとエネルギーを使い始めた」と小出氏は語り、「その人類が、200年前の蒸気機関の発明から、豊かな生活を求めて莫大な量のエネルギーを使うようになった。そして人類は、地球の生物の命を脅かす原子力に手を染めた」と話した。
小出氏は、原子力が持つエネルギーについて、原爆を引き合いに出し、「広島では、重量800gのウランが核分裂しただけで、広島の中心部が一瞬で壊滅してしまった」と説明。「この莫大なエネルギーを平和的に使えば人類のためになるとして、人間は原子力発電の世界に足を踏み入れた。だが、広島の原爆でさえ核分裂生成物は800gなのに、発電するためには1トンのウランを核分裂させる。たいへん危険なものだ」と語った。
続いて、小出氏は「原発は機械。こわれない機械はない」と語り、「原発を動かしているのは人間であり、人間は必ず誤りを犯す。だからこそ、事故から無縁の機械など、ないのは当然。原発が『絶対安全』だとは『絶対』に言えない。にもかかわらず、これまで日本の政府、電力会社は、原発だけは『絶対に安全』と言い続け、それが昨年の福島の事故につながった」と述べた。さらに、「原子力を進めてきた政府や電力会社は、このような危険を知っていた。だからこそ、原子力発電所や核燃料を取り扱う施設を都会には建設せず、過疎地に押しつける政策を進めてきた」と話した。
さらに、福島第一原発事故にふれ、「この事故で環境中に放出された放射性物質は、日本政府がIAEAに提出した数字で、セシウム137が広島原爆の168発分」と述べた。「ただし、この数字は過小評価」と語り、その理由として、今回の事故の責任者である日本政府が、自分の罪を重くする申告をするはずがないことを挙げた。「実際の放出量は、この数字の2倍~3倍と推測される。
広島原爆の約1000発分もの死の灰を、環境に放出した」とし、「その結果、福島県の東半分を中心に、宮城県、茨城県の北部・南部、栃木県と群馬県の北半分、千葉県の北部、岩手県、新潟県、埼玉県、東京都の一部が、放射線管理区域にしなければならないほどの汚染を受けた」と指摘した。そして、「この事態に政府は、一般人は1年間に1ミリシーベルト以上の被曝をしてはいけない、させてはいけないという法律や、1平方メートルあたり4万ベクレルを超えて汚染したものは持ち出してはならないという法律は守れないとして、法治国家にもかかわらず、自分たちが作った法律を反故にした」と批判した。
また、使用済み核燃料問題に関しては、「この放射能のゴミは無毒化できない。100万年にわたり隔離するしかない」と話し、「日本で初めて原発が稼働した1966年以来、ウランを燃やして核分裂生成物を生み出している。その累積量は、広島原発の120万発分に達している」とした。使用済み核燃料の隔離手段としては、ロケットに積んで宇宙に隔離する案、海洋底処分案、南極の氷床処分案などが考えられたが、どれも多くの危険性があり、実現不可能と判断されたという。小出氏は「現在のところ、唯一、残されているのが地層処分案。しかし、地層処分も、日本では地震の問題がつきまとう」と懸念を表明した。
最後に、小出氏は「100万年も問題が続く原発を、子どもたちには残したくない」と語り、「愚かな選択をした私たちの責任として、原発を即刻ゼロにするべきだ」と、講演を結んだ。