「大阪、熊本、新潟の3つの判決は、国の水俣病施策にくさびを打ち込んだ判決だと信じる」弁護団~4.18「ノーモア・ミナマタ 第2次新潟訴訟 判決日」判決前集会~旗出し~記者会見 2024.4.18

記事公開日:2024.4.23取材地: 動画
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(取材、撮影、映像提供・佐々木芳郎氏)

 2024年4月18日(木)12時20分より新潟水俣病第5次訴訟(ノーモア・ミナマタ第2次新潟訴訟)の原告団が、新潟市の新潟地裁前で判決前集会を開いた。

 1965年5月31日に公式に確認された新潟水俣病とは、昭和電工株式会社(株式会社レソナック・ホールディングス)鹿瀬工場の排水に含まれたメチル水銀が、新潟県の阿賀野川流域に流れこみ、川魚などを汚染。それらを摂取した人たちは手足のしびれなどの感覚障害などを引き起こした。その中には命を落とす人もいた。

 加害企業こそ異なるが(水俣はチッソ)その発症の経緯及び原因物質、病態は共通しており新潟水俣病は第2水俣病とも言われている。

 水俣病といえば、ドキュメンタリー映像にでてくる、けいれんをおこしている患者の劇症型だけではなく、母親の胎内にいるときに有機水銀に曝露した胎児性水俣病患者も含まれ、加齢と共に発症する人もいる。原告の中には,医師の診断を受けるまでは、まさか自分が水俣病だとは思ってもいなかったという人もたくさんいるという。

 水俣病の主な症状は、感覚障害、運動失調、言語障害等といったもので、医師の診断を受けて水俣病と診断されるまでは自分が水俣病であることを自覚できないことが多い。

 また差別を恐れて手を挙げられなかった人たちもいる。過去には、結婚させない、就職差別、村八分にする、離婚する等といった激しい差別があった。現在でもそのような差別は残っており、差別を受けることを恐れ声を上げられなかった人が多くいた。

 これまで行政の認定や水俣病被害者救済特別措置法などで救済された患者は計3696人(2024年3月末時点)もいるのだ。現在、大阪・熊本・新潟・東京で立ち上がったノーモアミナマタ裁判第二次新潟訴訟の原告とは、2009年に施行された水俣病特別措置法(特措法)の救済策に漏れた人々だ。

 2023年9月27日の大阪地裁判決では、原告128人全員を水俣病等認定、国と原因企業と国に275万円の損害賠償を命じた。しかし3月22日の熊本地裁は、原告144人のうち25人を水俣病と認定したものの、不法行為(発症から)から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」が経過したと判断。損害賠償の請求権が消滅しているとして、原告全員の請求を棄却した。

 そして今回の新潟地裁の判決ではすでに水俣病患者として行政認定を受けている2人を除く原告45人のうち、26人は水俣病に罹患している高度の蓋然性(がいぜんせい)が認められるとした。

 旧昭和電工に対しては、過失による不法行為責任を負うとして、この26人に対して1人当たり400万円の支払いを命じた。弁護士費用も含むこの金額は大阪判決の約1.5倍の125万円増額されている。

 しかし一方、健康被害が生じることを認識予見しえたとは言えず、国家賠償法上の違法はないとして、国の責任はないとの判断を示した。しかし、「差別・偏見などによって損害賠償の請求権の行使が困難な事情があった」と指摘。「除斥期間を過ぎて請求権が消滅したとすることはできない」と一歩踏み込んだ見解を示している。

 現行の公健法の認定制度では救済されない水俣病被害者がいまだ多数存在していることを大阪地裁・熊本地裁の二つの判決に続いて明らかにし、国の水俣病被害者切捨て政策を断罪し、原告らを含む水俣病被害者全員を救済する新たな仕組みをつくるよう示唆するものとなった。

 新潟の原告149名のうちすでに31名が亡くなっており、平均年齢も75歳を超えており、一刻も早い救済が求められている。しかしながら4月22日、同判決を受けた旧昭和電工は、不服とし東京高裁に控訴を決めた。

※参考:原告ら明暗、国の責任問えず、弁護団の意見は? 新潟水俣病訴訟判決
https://digital.asahi.com/articles/ASS4M1RPFS4MUOHB00MM.html
※新潟水俣病訴訟、旧昭和電工が控訴 約1億円の賠償命じた判決に不服(朝日新聞デジタル 2024.4.22)
https://www.asahi.com/articles/ASS4Q2G2WS4QUOHB004M.html

■全編動画

  • 日時 2024年4月18日(木)12:20~
  • 場所 新潟地裁前(新潟県新潟市)
  • 主催 ノーモア・ミナマタ第2次訴訟原告団、弁護団(詳細

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