沖縄県名護市の辺野古新基地建設のために、第二次大戦の沖縄戦での激戦地であった沖縄本島南部の土砂を採取する計画に対して、全国の県議会や市町村議会で中止を求める国への意見書の採択が進められている。
2021年8月19日、参議院議員会館で、「基地のない沖縄をめざす宗教者の集い」と「平和をつくり出す宗教者ネット」が、こうした意見書の採択に向けた集会を開催した。
集会では沖縄県在住の日本山妙法寺僧侶・鴨下祐一氏が「沖縄戦慰霊の地、遺骨が眠る地を守るために何ができるか」というテーマで講演を行った。
辺野古の埋め立てに使う土砂の採取場所として検討されている本島南部の土砂には、日本兵だけでなく、沖縄の住民や米兵、朝鮮半島から連れてこられた人たちの遺骨が残っていると考えられている。
沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんは、土砂採取の断念を求めて、沖縄や東京で繰り返しハンガーストライキを行っている。
鴨下氏は、ハンストを行う具志堅さんのもとに、たくさんの人が訪れたことを報告した。その中には、2018年に岩上安身がインタビューを行った、故・翁長雄志沖縄県知事の叔母、翁長安子さんの姿もあった。
鴨下氏は「この遺骨の問題で大事なのは遺族の方のお話。遺族の方がどういう思いで戦後を過ごされたのか、私たちは知るべきだ」と訴えた。
続いて鴨下氏は、各地の地方議会で意見書が採択された例や否決された例をあげ「意見書を通すということは、あらゆる会派の議員の人たちの了解、理解がないとなかなか通らないというのが実情だ。保守系議員が多い場合は、辺野古という文字を入れない場合もある」と説明した。
その上で鴨下氏は、今後の意見書採択に向け「急いで意見書を出すと失敗するので、各会派との調整が必要」と述べ、次のように訴えた。
「辺野古への言及を避けた、いわば採択のための最大限の譲歩の産物である意見書もあるが、辺野古新基地建設自体を止めるためには、いつまでも『辺野古』への言及を回避するわけにはいかない。
『辺野古新基地建設自体が許されない』との市民的合意を形成し、それを正面から示す意見書採択を実現するために、さらなる努力が必要だ。
意見書採択が実現した、あるいは逆に意見書採択が絶望的であることが判明した自治体でも、市民主導の勉強会や街頭宣伝などの取り組みを絶やさないようにしたい。
この問題の主題は、遺族の気持ちに寄り添うことと、死者への畏敬の念を日本人が取り戻すことだ」。
詳しくはぜひ、全編動画をご視聴いただきたい。