2021年6月17日(木)、午後3時30分頃より、東京・参議院本館にて、日本共産党志位和夫委員長の定例会見が行われた。
冒頭、志位委員長は、政府が都道府県に発令中の緊急事態宣言の解除を決定したことに触れ、「我が党として、少なくとも、現時点で、東京は解除の条件はないと思う」とし、「東京を解除することについては反対である」と述べた。
また、「十分な補償と支援の抜本的強化を今度こそしっかりとやって、それと一体に、宣言は継続すべきだというのが我が党の立場である。そして、今度こそ、ワクチン接種と一体に、大規模検査と両方をやって、封じ込めを果たす。その責任を果たすべきだということを求めたい」と発言した。
続いて、志位委員長と各社記者との質疑応答となった。IWJ記者は、会見の前日、6月16日の未明に、参議院で成立した「重要土地規制法」などについて、以下のとおり2つの質問をした。
IWJ記者「6月8日に、この法律に対する抗議集会があったのですが、その場で、沖縄の風・伊波洋一参議院議員が、『この法案は立法事実はないが、アメリカの戦略はある』と述べ、『台湾有事が前提となっている』と指摘しました。また、『今、日本列島にミサイル基地を1000カ所作れと(米国から)要求されている。法案でいう「重要土地」とは、「アメリカ軍が使う土地」であり、これは日本全体を戦争に巻き込む法案なのです』と強調されました。
この伊波議員の発言、特に『日本列島にミサイル基地を1000カ所』というのは事実なのでしょうか? 志位委員長のお考えをお聞かせ下さい」
この質問に対し、志位委員長は、以下のとおり回答した。
志位委員長「その『1000カ所』というのは、数字自体は私たちとしては、ちょっと、承知しているわけではないが、やはり今、米中が対立する構図の中で、日本をアメリカの、対中国の軍事戦略の中に組み込んでいこうと、特に、ミサイル等々の問題で組み込んでいこうと、そういう動きがあることは間違いのない事実であると思う。
そういうもとで、今回の、土地利用規制法案が強行された。これは、基地周辺の住民の皆さんに対する、人権侵害の法律であり、財産権を侵害する法律であり、私たちは、違憲立法であるから、これを廃止すべきであるということを強く求めている。
そして、これは質疑で明らかになったことだが、何もかもが全部政府に一任されている状況です。ですから、まったく、あの、立法府の関与しないところで、勝手な運用ができるという『白紙委任法案』でもあるという点からも、これはもう廃止するしかないと思っておりますが、やはり、この法案の危険性という点では、そういう日本を対中国の『軍事の盾』にしていくと。その流れの中に起こっている動きだということも言えるのではないかと思っている。
中国の様々な、尖閣諸島等々に対する、覇権主義的な行動については、我が党は厳しく、『国際法違反』だと、どの党よりも厳しく、与党のどの党よりも厳しく批判をしてきたわけだが、やはり、この問題の解決というのは、国際法にもとづく、外交的な解決を追求すべきであって、軍事の対応は一番まずいというふうに考えている」
2つ目の質問は、次のとおり。
IWJ記者「G7サミット直前の6月10日、フランスのマクロン大統領が記者会見の場で、『インド太平洋戦略の我々のアプローチは、誰とも連携しないことだ』と、これまでの姿勢を一変させ『私が提唱したいのは、中国の奴隷にはならず、この問題で米国とも連携しないという立場だ』と述べました。
米国に自発的隷従をして中国との戦争準備のために自国を犠牲にする覚悟で邁進しているのは日本くらいのものだと思うのですが、米国やかつてのソ連や中国共産党に対しても、彼らの覇権主義に反対して従属しなかった日本共産党として、フランスのマクロン大統領の、どちらにも与しないという方針・姿勢を、どのように評価されるのでしょうか?」
志位委員長「私は、中国が行っている覇権主義、あるいは人権侵害にどのように国際社会が向き合うか、という点で、2つ大事な点があると思っている。
ひとつは、やはり、『国際法にもとづく批判』で止めさせていくと。そして、よく、『同じ価値観であるものが』というセリフがありますね。そうじゃなくて、『国際法』ですよ。『国際法を守れ』というこの一点で、国際社会が協力していくと。そして、中国の覇権主義なり、人権侵害を抑えていくと。
これが何よりも大切であって、軍事で対応するというのは、私たちは反対です。これは、本当に、軍事対軍事の危険な悪循環をつくることになる。これが第一点だ。
それから、もう一つ私が強調したいのは、中国に対して、インクルーシブ(包括的)な対応が必要だということだ。つまり、エクスクルーシブ(排外的)な、つまり、中国を排除して、包囲網をつくっていこうという対応ではなく、中国も含んだ、インクルーシブな、包括していく対応が大事ではないかと。
たとえば、その点では、ASEANが実行しているやり方だ。ASEANというのはご承知のとおり、『ASEAN10』で、『TAC』という友好協力条約を結んで、そして、あらゆる問題を、平和的な話し合いで解決していく。そして、アメリカの側にも中国の側にも、与しない。自主的な立場を維持している。
このASEANが実行している『TAC』、これは実は『バリ宣言』というのが、2011年に結ばれており、東アジアサミットが全部賛成している。この東アジアサミットの中には、米国も入っている。中国、ロシア、日本も、韓国も入っている。オーストラリア、インドも入っている。
ですから、このASEANのような流れを、中国も含めて、アジア・太平洋全体に広げていく。そして、あらゆる問題を平和的な話し合いで解決する。
北東アジアについては、私ども、『北東アジア平和協力構想』というものを提唱している。これは6カ国、ないし7カ国で『TAC』を結んで、あらゆる問題を平和的な話し合いで解決するという構想だ。
中国も含めて、インクルーシブな塊の中に、中国も参加させて、そして、あらゆる問題を平和的な話し合いで解決する。ASEAN方式を広げていくというやり方が、私は、一番合理的だし、一番現実性もあるし、そして、対立の悪循環に陥らないやり方だと思う。
どんなやり方であっても、エクスクルーシブな関係を、中国の周りでつくろうとすると、例えば、クアッドのようなものをつくろうとすると、結局、軍事対軍事の新しいブロックをつくり、新しい冷戦体制をつくり、そして軍拡競争ということになっていく危険性があると思う。
そうではないやり方を、エクスクルーシブではなく、インクルーシブな対応を、対中国でやっていくことが大事だと、考えている」
志位委員長の冒頭報告、そして各社記者との質疑応答は、全編動画にてご確認いただきたい。