「有事法制って、デニー知事は知っているのだろうか?」「『那覇軍港』の浦添移設反対が、各地の基地反対の闘いに加わった!」~2.23浦添西海岸の未来を考える会主催学習会「浦添西海岸を守ろう」―登壇:亀山統一氏(琉球大学助教) 2021.2.23

記事公開日:2021.3.1取材地: テキスト動画
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(文・木原匡康)

2021年2月23日、沖縄県浦添市社会福祉センターで、浦添西海岸の未来を考える会主催学習会「浦添西海岸を守ろう」が開催された。講師は、琉球大学助教の亀山統一氏である。

 沖縄県の那覇港内の米軍の港(通称:那覇軍港)は、1974年に日米両政府が移設を条件に全面返還に合意し、2021年で47年が経過。2020年10月、沖縄県議会は、隣接する浦添市のふ頭地区への早期移設と浦添市西海岸開発計画の早期実現を求める決議と意見書を賛成多数で可決した。しかし浦添移設に反対の声も根強く、2021年2月の浦添市長選に反対派の伊礼悠記氏が立候補したが、敗北。玉城デニー沖縄県知事は伊礼氏を支援したが、自身は民間港整備とセットで経済発展を見込めるとして移設を容認、選挙結果を受けて移設計画を進める考えを示した。那覇軍港は、ベトナム戦争や湾岸戦争終結後はほとんど使われず、県内に他の米軍港もあるとして、移設なし返還を求める意見がある。

 講演で亀山氏は最初に、「たいへんいい天気で、僕はマングローブとか研究しているものですから、昨日今日のような天気ですと、外に出かけたいな、皆さんもそんなふうにお考えじゃないかと思うんですけれども、やっぱり軍港というもの、海を埋め殺してしまうっていうことへの怒りが、こんなにたくさん、休日の昼、皆さんが集まってくださった理由じゃないかと思います」と、語り始めた。

 亀山氏ははじめに「まず知っておくべきこと」として、「那覇軍港移設案とは、那覇軍港を拡張される那覇港内部へ移設すること、つまり、浦添市の海域に米軍の新軍港を建設すること」と基本的認識を確認した。

 そして那覇軍港は、民用の那覇港の南端に位置し、移設先は那覇港北隣の同港拡張予定海域であるから、「那覇港内での施設の移動であり新基地でない」という形式的な議論が成立するが、「誰もそうだとは思っていない」と述べた。

 2020年10月に、玉城デニー沖縄県知事が加藤勝信官房長官に、那覇軍港が遊休化しているとして、日米両政府が返還条件とする浦添への移設の完了前の「先行返還」を要求した。

 しかし玉城知事は「民港と軍港のすみわけは必要」との認識を示しており、「軍港をつくって、民間港を守っていこうという認識のようだが、この知事の言い分は成り立つのだろうか?」と、亀山氏は疑問を投げかける。

 「那覇軍港を返してくれという要求は一致できる。その後、軍港を提供すれば、軍港しか使わないのだろうか? 有事法制って、デニー知事は知っているのだろうか?」と重ねて疑問を呈した。

 そして亀山氏は、次のようなポイントを示した。

・那覇港湾の拡張も浦添新軍港建設も、具体的な案はまだ何も存在していない。「海上ヘリポート」「軍民共用空港」など、次々具体案への民意が問われた辺野古とはまったく違う。

・軍港移設案は、那覇港拡張と不可分のものである。那覇港は県民の最重要インフラだから、那覇港と軍港のあり方について、県民全体の意思が問われる。

・県知事の発言の背景には、那覇軍港に着岸する兵員輸送船、那覇港に着岸する一般物資の輸送船が、もっぱら浦添新軍港を利用するという前提があるのではないか? しかし、遠征打撃群の揚陸艦など、ミサイル防衛関係の艦船、南西諸島にシフトしている自衛隊の艦隊が入港する可能性をどう考えるのか? 浦添新軍港は那覇軍港と一体化した施設となることをどう評価するのか?

 こうした認識のもと、海兵隊の海外移転によって、浦添市のキャンプキンザーが全面返還予定にもかかわらず、その前の海域を埋め立てて軍港が作られるという矛盾を指摘した。

 亀山氏は、2月の浦添市長選で伊礼候補が敗北したが、選挙戦では再選された松本哲治市長が軍港移転の争点化を避けたとして、「軍港については判断されなかった」と総括。辺野古に続いて浦添でも、「新基地ノー」「海を守れ」の住民運動が立ち上がり、オール沖縄が基地問題に向き合い始めて、辺野古・オスプレイ・地位協定だけだった運動の一致点を広げる一歩を踏みだしたという。

 さらに「翁長知事、デニー知事、城間那覇市長は軍港移設容認なのでは?」として、「首長の信念として、新しい軍港をつくってしまうことの重大さに無頓着なのは残念」だと批判。そのうえで、「住民自治」の観点から「オール沖縄支持の県民は、デニー知事の方針をすべて支持しなければならないものではない」との認識を示した。また、環境問題や感染症リスク、持続可能な経済などの観点、「住民投票」の持つ有効性と危険性の認識、自衛隊と米軍の現状など、多岐にわたるポイントを指摘した。

 亀山氏は最後に、佐賀や山口、種子島、宮古島、辺野古など、各地の基地反対の住民の動きに浦添も加わったと、現状を位置づけて講演を結んだ。

■全編動画

  • 日時 2021年2月23日(火)14:00~16:00
  • 場所 浦添市社会福祉センター(沖縄県浦添市)
  • 主催 浦添西海岸の未来を考える会(詳細)

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