「核兵器禁止条約」を批准した国が50か国に到達! 唯一の被爆国日本が参加しないまま、いよいよ2021年1月22日に条約発効! ICANが「歴史的マイルストーン」として発表したニュース全文をIWJが翻訳、ご紹介する!! 2020.11.25

記事公開日:2020.11.25 テキスト
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(文・六反田千恵、編集・IWJ編集部 文責・岩上安身)

 2020年10月24日、「核兵器禁止条約」を50ヶ国が批准したことで、2021年1月に条約発効することになった。

 条約推進の業績によりノーベル平和賞を受けた核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の、日本の構成団体であるピースボートはこの批准を受けて、12時間特別番組を配信。核廃絶を訴える被爆者のサーロー節子さんなどが出演した。

 しかし現在、世界の核弾頭は1万3400発存在するうえ、核保有国は核兵器禁止条約を批准していない。唯一の戦争被爆国である日本も、いまだ条約を批准していない。

 ICANは24日、条約発効を「歴史的マイルストーン」と捉えた英文ニュースを発表。サーロー節子氏やICAN事務局長のベアトリス・フィン氏の言葉を引いて、条約の持つ意義と今後の取り組みについて訴えている。

 IWJでは、このICANによるニュース全文を訳出するとともに、批准国・加盟国の一覧をご紹介する。

▲「核兵器禁止条約」推進の業績でノーベル平和賞受賞後に来日したベアトリス・フィンICAN事務局長(IWJ撮影、2018年1月16日、討論集会「核兵器禁止条約と日本の役割」にて)

「核兵器禁止条約」を50ヶ国が批准し、2021年の発効確定!

 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が、2020年10月24日、「核兵器禁止条約」に批准した国が50ヶ国となり、2021年1月22日に「核兵器禁止条約」が発効すると発表した。発効要件となる50ヶ国目の批准国は、ジャマイカ、ナウルに続いて批准した、ホンジュラスだった。

 ICAN(International Campaign to Abolish Nuclear Weapons)は2007年に設立され、2017年に「核兵器禁止条約」の採択への功績で、ノーベル平和賞を受賞した非政府国際組織である。

▲「核兵器禁止条約」批准国が50ヶ国に達したことを伝えるICANのホームページ

記念の12時間特番にサーロー節子さんら出演!

 NGOの連合体であるICANを構成する日本の団体、ピースボートは25日、50か国の批准を記念して、YouTubeで午前9時から午後9時まで12時間連続の特別番組を配信した。

 番組にはカナダ在住の被爆者で、核廃絶を訴えて、ベアトリス・フィンICAN事務局長とともにノーベル賞の記念メダルと賞状を受け取り、受賞講演を行ったサーロー節子さんが電話出演したのをはじめ、被爆者や、条約の成立に貢献した世界の方々がかわるがわる出演した。

▲『【核禁】核兵器禁止条約「発効」確定おめでとう!12時間テレビ』には、サーロー節子氏が電話出演した。(同番組の配信画面から。中央はノーベル平和賞受賞講演時のサーロー節子氏)

IWJが報道してきた核兵器禁止条約とICANの活動! 日本はいまだ条約批准せず!

 IWJも、条約発効に必要な50ヶ国に達するまであと5ヶ国!と2020年9月23日に報じていたが、10月に入って批准する国が増加した。とうとう、唯一の原爆による被爆国である日本が参加しないままの条約発効となってしまった。

 2020年8月5日に、核兵器廃絶日本NGO連絡会が、ベアトリス・フィンICAN事務局長をオンラインで招き、開催した討論会「被爆75年、核兵器廃絶へ日本はいま何をすべきか」の報告も日刊IWJガイドで行っている。

 この時、フィン事務局長は「非人道的な核兵器の被害について被爆者の話を聞いている、唯一の戦争被爆国である日本は、被爆者のための活動を誇りに思うべきで、広島、長崎の皆さんの活動に感謝したい。ぜひ、核兵器禁止条約に日本にも加盟していただきたい。一緒に核廃絶に向けて歩んでいきたい」と述べたが、残念ながら日本政府は条約の批准を行わず、条約発効時に批准国として名を連ねようとはしなかった。

 IWJは2018年からICANに関する報道を継続している。ICANに関連する記事は以下のURLより、ぜひあわせて御覧いただきたい。

世界の核弾頭1万3400発! 保有国は核禁条約批准せず!

 ICANによると、世界の核弾頭は1万3400発に達しているということである。その大半はロシア(6375発)と米国(5800発)が保有しているが、それらに続いて中国が320発、フランスが290発、英国が215発。パキスタンが160発。インドが150発、イスラエルが90発、北朝鮮が30発から40発を有していると推定されている。

 その他、米国が核弾頭を配備している国として、トルコに50発、イタリアに40発、ベルギー、ドイツ、オランダにそれぞれ20発があるとされている。

 残念ながら、これらの国々は、核兵器禁止条約を批准していない。これら核保有国の条約批准が今後の大きな課題となる。批准国と加盟国はこの記事の末尾にご紹介する。

▲ICANはホームぺージに国別核弾頭保有数のグラフを掲載している。

ICANの英文ニュース「歴史的マイルストーン、国連核兵器禁止条約が発効に必要な50ヶ国の批准を達成」をIWJが和訳!~トランプ政権による条約批准国への圧力を告発!!

 ICANのホームページには、「歴史的マイルストーン、国連核兵器禁止条約が発効に必要な50ヶ国の批准を達成」と銘打った英文のニュースが掲げられている。以下に全文を翻訳する。

 「歴史的マイルストーン、国連核兵器禁止条約が発効に必要な50ヶ国の批准を達成

 2020年10月24日、ジャマイカとナウルが批准を提出してから、ちょうど1日後にホンジュラスが批准し、国連核兵器禁止条約は発効に必要な50の締約国に到達しました。 90日以内に、核兵器が最初に使用されてから75年後、核兵器類の禁止を確実にする条約が発効します。

 これは、この画期的な条約の歴史的マイルストーンです。TPNW(Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons、核兵器禁止条約)が採択される前は、核兵器は、それらがもたらす壊滅的な人道上の影響にもかかわらず、国際法で禁止されていない唯一の大量破壊兵器でした。今、条約の発効によって、核兵器とは何であるかを明言することができます。『化学兵器や生物兵器と同じように、禁止された大量破壊兵器』であると。

 ICAN事務局長ベアトリス・フィン氏は、歴史的な瞬間を歓迎しました。 フィン氏は『これは核軍縮の新しい章です。何十年にもわたる活動は、多くの人が不可能だと言ったことを達成しました。核兵器は禁止されました』と述べました。

 広島原爆の生存者であるサーロー節子氏は『私は核兵器廃絶に人生を捧げてきました。私は何も持ち合わせていませんが、私たちの条約の成功のために活動してくれたすべての人に感謝します』と述べました。

 節子氏は核兵器がもたらす人道的影響についての認識を高めるために、自身が直面した恐ろしい物語を、何十年も共有してきました。長年にわたって象徴的なICAN活動家であった節子氏にとって、この瞬間は特別に意義深いものでした。

 『これは私たちが認知された最初の国際法です。私たちはこの認識を、核実験による、ウラン採掘のために、秘密の実験のために、放射能の害に苦しむ世界中の被爆者たちと分かち合いたいと思います』。世界中の、原子力利用と実験の生存者たちが節子氏とともに、このマイルストーンを祝いました。

 最も新しく批准した3ヶ国は、このように歴史的な瞬間に参加できたことを誇りにしています。50ヶ国すべてが、核武装国からの、批准しないようにという、かつてないレベルの圧力に直面しながら、核兵器のない世界を実現するための真のリーダーシップを示してきました。

 AP(Associated Press)がこの式典のほんの数日前に入手した最近の書簡では、トランプ政権が条約批准国に、条約から撤退するように、他国が条約に参加するように奨励することを控えるようにと、条約下における批准国の義務とは真っ向から対立する圧力を直接かけてきたことを示しています。

 ベアトリス・フィン氏は『この歴史的な条文が完全な効力をもたらすために参加した国々は、真のリーダーシップを発揮してきました。これらのリーダーによる核軍縮へのコミットメントを弱めるための、悪足掻きは、この条約がもたらすであろう変化に対する、核武装国の恐れを示すだけのものです』と述べました。

 これはまだ始まりにすぎません。条約が発効すれば、すべての条約参加国は、条約下における積極的な義務を履行し、その禁止事項を遵守する必要があります。条約に参加していない国々も、条約の影響力を感じることでしょう。私たちは、企業が核兵器を生産することを止め、金融機関が核兵器製造企業への投資を停止することを期待しています。

 どうやってそんなことが分かるのでしょうか?

 なぜなら、私たちはこの条約と、核兵器に対する規範を推進していく、100ヶ国以上にわたる600近くのパートナー組織があるからです。あらゆる場所の人々、企業、大学、政府は、この兵器が禁止されたことを知ることになります。そして、今こそ、みなが歴史の正しい側に立脚するときなのです」

50ヶ国の批准国・加盟国一覧

 批准国と加盟国は以下である(アルファベット順)。

1 アンティグア・バーブーダ
2 オーストリア共和国
3 バングラデシュ人民共和国
4 ベリーズ
5 ボリビア多民族国
6 ボツワナ共和国
7 クック諸島 (加盟)
8 コスタリカ共和国
9 キューバ共和国
10 ドミニカ国
11 エクアドル共和国
12 エルサルバドル共和国
13 フィジー共和国
14 ガンビア共和国
15 ガイアナ共和国
16 バチカン
17 ホンジュラス共和国
18 アイルランド
19 ジャマイカ
20 カザフスタン共和国
21 キリバス共和国
22 ラオス人民民主共和国
23 レソト王国
24 マレーシア
25 モルディブ共和国
26 マルタ共和国
27 メキシコ合衆国
28 ナミビア共和国
29 ナウル共和国
30 ニュージーランド
31 ニカラグア共和国
32 ナイジェリア連邦共和国
33 ニウエ (加盟)
34 パラオ共和国
35 パナマ共和国
36 パラグアイ共和国
37 セントクリストファー・ネービス
38 セントルシア
39 セントビンセント及びグレナディーン諸島
40 サモア独立国
41 サンマリノ共和国
42 南アフリカ共和国
43 パレスチナ
44 タイ王国
45 トリニダード・トバゴ共和国
46 ツバル
47 ウルグアイ東方共和国
48 バヌアツ共和国
49 ベネズエラ・ボリバル共和国
50 ベトナム社会主義共和国

※これは日刊IWJガイド2020.10.26号~No.2965号に掲載された記事を加筆・修正したものです。

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