復興五輪はどこへ!? 復興を出しに五輪開催を進めてきたが復興はまだまだ道半ば! 政府が見せかけだけの復興を急ぐ一方、被害者は、経済優先の棄民政策とコロナ禍とで二重、三重の苦境に!

記事公開日:2020.7.23 テキスト
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 東京五輪は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて延期されたが、本来なら7月22日には、大会の火蓋を切るソフトボールの試合が福島県で行われ、24日には開会式が行われる予定であった。コロナ感染拡大の現状を考えると、とても五輪を開催できる状態にはなく、延期は当然の判断といえる。

 

震災・原発事故を「出し」に招致した復興五輪! しかしいまだ復興は道半ば

 2020年の東京五輪は「復興五輪」の名目を掲げ、東日本大震災や原発事故による被害を「出し」にして招致したもの。しかし、福島県で聖火リレーやソフトボールの試合が行われるほかに被災3県に直接的な恩恵はほとんどない。

 五輪が被災地域の救済にならないことは招致の時点ですでに指摘されていたが、東京での開催が決まってからは、被災地の復興にむしろ悪影響を与えているとも言える。

総理の認定により推進される復興特別措置! 鉄道の運行再開が「先行」され住民の帰還はまばら

 2017年5月には福島復興再生特別措置法の改正により、「将来にわたって居住を制限する」とされてきた帰還困難区域内に、避難指示を解除し、居住を可能とする「特定復興再生拠点区域」を定めることが可能になった。

 しかし、避難や帰還の可不可を決める基準は年間積算線量20ミリシーベルトであり、これは国際放射線防護委員会(ICRP)や日本国内の原子炉等規制法が定める「一般公衆の線量限度」の年間1ミリシーベルトの20倍となる、とんでもない数値。

 また、特定復興再生拠点区域は、地域の市町村長が策定した計画を「内閣総理大臣が認定し、復興再生に向けて計画を推進」するものとされ、官邸の意向が反映される。今年3月には再生拠点区域のうち、双葉町、大熊町、富岡町の一部地域が先行解除されたが、この3地域にはいずれも全線再開を目指していたJR常磐線の駅がある。

 経産省が発表した、先行解除して常磐線の運行を再開した地域の線量調査結果によると、測定結果は最大で毎時1.52マイクロシーベルト。環境省は毎時0.23マイクロシーベルトが年間1ミリシーベルトの被ばく線量に当たるとしており、1.52マイクロシーベルトは6.6倍もの値となる。

 このように年間20ミリシーベルトを下回れば避難解除が行われるが、一般公衆の線量限度である年間1ミリシーベルトを超える地域で安心して生活できるという住民はほとんどいない。実際、多くの住民は戻らないまま、避難解除という行政上の措置だけが進んでいく。

 新たに避難解除された区域に限らず、この二重基準の狭間にある地域からの避難者は自主避難者(避難指示区域外からの避難者)とみなされる。そして、自主避難者への支援は徐々に打ち切られており、住宅提供が終了して退去を求められたり、家賃を増額されたりすることで困窮する問題も起きている。

 避難者・被害者を置き去りにして国主導の表面的な「見せかけの復興」が進む一方、河北新報は被災地域の市区町村の首長にアンケートを行っている。

 河北新報によるアンケートは、東日本大震災による津波被害を受けた東京電力福島第一原発事故に伴い、避難区域が設定された被災3県の42市町村(岩手12、宮城15、福島15)の首長を対象として実施されたもの。そして、アンケート結果によると、「復興五輪」の理念を「明確である」と評価する首長は38%(16人)しかいない。

 さらに同アンケートによると、2020年度末までに「復興が完了する」と答えた首長は31%(13人)にとどまった。

コロナ禍は被災地・被害者をも襲う! ジャーナリスト・青木美希氏は現地を取材し、IWJに寄稿!

 復興の途上にある被災地にとって、世界中を襲っている「コロナ禍」の影響は、他の地域よりも重くのしかかる。コロナ禍の影響で支援団体などによる高齢避難者の見守り活動が休止されたり、対面での対応が難しくなったりしたことで異変に気づきにくい状況が発生しており、災害公営住宅へ入居していた避難者の孤独死も発生している。

 朝日新聞に勤務するジャーナリスト・青木美希氏は、こうした現状に警鐘を鳴らし、自身のツイッターで、震災や原発事故の避難者を襲う窮状について情報発信を続けている。青木氏は現在、朝日新聞社内の異動で報道の一線から外れているが、休日には被災地を訪れ、被災者・避難者に寄り添う取材を続けている。

 なお、原発汚染水の海洋放出問題については、経産省資源エネルギー庁が意見(パブリックコメント)募集を行っている。コロナ禍のドサクサに紛れるように4月16日に募集を開始したものの、締め切りは3度延長されて7月31日までとなっている。

 また、現在も多くの方々が避難生活を続けているところに、さらにコロナ禍が追い打ちをかけている現状について、問題を把握し、支援につなげるため、被害の完全賠償や暮らしと生業の回復、事故の責任追及等を目標とした活動を行っている「福島原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)」による「コロナ災害緊急アンケート」もある。

 こちらのコロナ災害緊急アンケートの締め切りも、7月31日までとなっている。

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