明日3月22日に、“K-1 年間最大のビッグマッチ”とされる「K’FESTA.3」 ~K’FESTA.3~」が、予定通りさいたまスーパーアリーナで開催される。政府がイベントの開催について「リスクを判断して慎重な対応を」と発表した2日後にだ。
政府のコロナ対策本部では、小中高校の全国一斉休校の要請は春休みの終了後は解除する見込みだが、大規模イベントについては引き続き「リスクを判断して慎重な対応」を求めている。
- イベント開催慎重に 首相、学校再開に方針策定(日本経済新聞、2020年3月20日)
こうした要請にこたえて、サッカー、野球、バスケットボールなどが軒並み無観客試合としている。特に濃厚接触の可能性の高い格闘技では、相撲は無観客試合、全日本プロレスも試合中止とするなどの対応が当たり前だが、なされている。スポーツ界全体が、つらい思いをして、活動を中止・延期・無観客試合を決断し、早期のコロナウイルス収束に向けて頑張っているときに、屋内で、観客10000人を集めて、「K’FESTA.3」は、格闘技を開催するとのことだ。
まさに、政府の伝えるコロナウイルス感染の「発話」「気密」「密集」の3条件が、すべてあてはまる場所での開催ということだ。
K’FESTA.3は、1万人規模の観客来場が予想される大規模イベントだ。武尊、武居由樹をはじめ、K-1の看板選手が勢ぞろいする大会で人気が高く、中止のコストが巨額とはいえ、それだけの大規模な格闘技イベントを、そのまま実施すること自体、いかがなものだろうか。
リング上濃厚接触の選手のリスクはもちろんのこと、興奮した観客席でも、大声での歓声によって飛沫が飛び交い、ハイタッチやハグで濃厚接触が発生することは必至だ。多くの観客は若く健康な男性を中心で、全国から駆けつけてくる。この1万人が、症状の出ないステルス・キラーとなって、全国に散らばったら、どうなるのだろうか。10000人規模のクラスターのできあがりとなってしまう。
K-1サイトの「『K’FESTA.3』に関するお知らせ」には、コロナ対策として、サーモグラフィーによる体温確認により、発熱者は入場を断る可能性があるとされる。功を奏すればよいのだが、1万人の観客入場時にどの程度正確に確認できるのか、不安が残る。しかも発熱した人だけを排除すれば、入場自粛させてれば良いというわけにはいかない。現在、無自覚、無症状で感染している方がいることが明らかになっている。観戦している人たちの中で、無自覚、無症状で罹患している方がいないとは限らない。
米国では、CDC(疾病予防センター)が50人の集会を8週間、延期の勧告をしている。フランスでは、カフェやレストランが休業を余儀なくされている。このように世界的に、人の集まるイベントや行事を自粛してコロナウイルス感染をおさえようとしているさなかで、10000人を屋内で集めて格闘技の試合を強行するのは、まさに「反社会的」行為と言わざるをえない。
- 米CDC、50人以上が集まるイベントをキャンセル・延期するよう勧告(日本貿易振興機構HP、2020年3月18日)
- フランス、新型コロナで飲食店など休業に 「他に選択肢ない」(ロイター、2020年3月15日)
- 3月22日(日)さいたまスーパーアリーナ「K’FESTA.3」に関するお知らせ(K-1サイト、2020年3月19日)
それ以外には、会場入口でのマスク配布や、スタッフのマスク着用、手洗い・うがいのお願い、消毒液の設置、ミネラルウォーターの無料配布(定期的に飲むことが感染予防)、通常よりも多い外気取込、加湿器と次亜塩素酸水を使った空間除菌、飲食ブースでの飲食販売中止、撮影会・サイン会・握手会・休憩中のサインボール投げなどのイベント中止、一部物販ブースの会場外設置などが列記されている。思いつく限りの対策を並べたようだ。広い空間の中に、加湿器がどれほどの効果があるのか。
そのほか、発熱や咳、体調に不安、身近にコロナ感染者や可能性のある人は入場禁止としているが、自己申請に頼るということだろうか。体調不良でキャンセルした場合は、チケット返金に応じてくれるのだろうか。ホームページには一切その表示はない。
また、「咳やくしゃみなどの症状がひどく、他のお客様のご迷惑になると判断した場合」は入場を断ったり、退場させる場合もあるとしているが、咳をするまでは放置されるわけだ。
やはり、1万人規模の格闘技イベントを実施すること自体に、どうしても無理がある。
- K-1が週末イベント開催強行、入場チケットはマスク!?(SPAIA、2020年3月18日)
K-1のエースでスーパー・フェザー級王者の武尊の対戦相手の、ISKA世界ライト級王者アダム・ブアフフ(モロッコ)など、海外からの参加選手が来日できないことが報じられているが、問題はそこではないはずだ。
- 武尊、対戦相手来日できずセミファイナルに…K-1大会2日前に試合順変更(スポーツ報知、2020年3月20日)
クラスターが発生したときに主催者の責任を問うのはお門違いでしょう。
国は「要請」しただけであって禁止はしていないのですから。
政府が「1000人以上のイベントは禁止。そのかわりイベント中止に関わる損害はある程度国が補填する」というような方針を立てるべきだったと思います。
他の国は厳しく禁止しているかわりに国民の経済的損失に対して手厚い手当てが行われています。無責任な日本政府は今のところ何もしていません。
何かあった場合はあくまでも国の責任であり、そういう「極めて小さい政府=新自由主義」を選挙で容認して来た国民全員の責任と受け止めるべきではないでしょうか。