新型コロナウイルス感染症の検査を希望するのは「心配しすぎ」? 国や自治体の不真面目な対応に不安を訴えるブログを公開した三重県在住のIWJ会員にIWJが直接取材! 2020.2.29

記事公開日:2020.2.29 テキスト
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(取材・文:永田由美・IWJ編集部)

 安倍政権の「後手後手」の対応で新型コロナウイルス感染症の実態がなかなかつかめず、日本国内で暮らす多くの人の間に日に日に大きな不安が広がっている中、IWJにある会員の方から1本のメールが届いた。

▲新型コロナウイルスのコンピューター画像(Wikipediaより)

 「三重県四日市市に住む白岩といいます。体験をブログに書きました。読んで下さい」

 IWJに連絡をくださった会員の白岩佳子さんは介護福祉士で、知的障害のある25歳の息子さん、次郎さんがいる。白岩さんは日頃から、投稿サイト「note」に次郎さんとの日々をブログで綴っている。2月26日の未明に白岩さんが投稿したブログは以下のような内容だった。


今朝

「あれ?」と寝起きの左目の違和感に気づいた。

実は、右目に1週間前くらい前から、ちょっとした違和感を感じてはいた。

けれど私は、アレルギーで、よく目の周りが痒くなったりするから、まあ何かのアレルギーが出たのか?と思っていた。

それが、今朝は、「左目にうつった。」と思ったのだ。うつる目の病気といえば、結膜炎などいろいろあるけれど、新型コロナウィルスも目の粘膜からうつると言われている。

中国では、眼科医が、新型コロナウィルスの警告をして、自らも感染し亡くなられている。医療関係者が亡くなる例があることも、新型コロナウィルスの怖い点だ。

私は、大した症状でもないし、医療機関にかかるような状態ではない。

けれど、そう思っているところに、次郎が、「コンコン」と軽い咳をした。
この軽い咳も新型コロナウィルスの特徴だ。

新型コロナウィルスは潜伏期間も長く、発症しない人も多いという。
そして、発症しても8割の人が軽症だということから、おそらく、私たちが、新型コロナウィルスにかかっていても、そのこと自体を怖がっているわけではない。

私たちが、他の人にうつすことが怖いのだ。

次郎が、喜んで通っている生活介護事業所は、この市で初めて医療の必要な人を対象とした事業所だ。スタッフも明るくて親切で、次郎も大好きな場所になっている。

もし、この事業所に新型コロナウィルスを持ち込んだら、と思うと、気が気でないのだ。

医療の必要な人の行動範囲は狭く、家と事業所の往復を送迎車でするだけの人も多いだろう。人との接触が少ない分、感染リスクも低い。

そこに、活発な次郎がウィルスを持ち込んだら?と思うと、心配なのだ。

私と次郎が、感染しているか検査が出来たら、自分の取るべき方法がわかるのに。

ラインに、厚生労働省のアカウントがあることを知り、友達追加した。
このアカウントは、質問をすればAIが答えてくれるというので、質問をしてみた。

「目からの感染を心配しています。検査出来ますか?」と入力した。

答えは「適切に感染防護具を着用して診察をした場合は濃厚接触に該当しないので、就業をひかえる必要はありません。※写真はこれ」だった。

答えになっていない答えだったけれど、少なくとも、「濃厚接触に該当しない」ことが、私を検査対象から外した理由とわかった。

そこで、市の保健予防課に電話する。

事情を話す。

係員が言う「渡航歴や、渡航者との接触はありましたか」。

肩の力が抜ける。

まだそんなことを言っているのか?そんな段階はとうに過ぎているというのに。

私は「市中感染も始まっているので、感染の可能性はあると思うのですが」と言う。

係員は「あー、まあ、稀にそんな例もあるようですけど」と言う。

私は聞いた「検査は受けられないですか?」

係員は答える「発熱や肺炎の症状はありますか?」

私は、答える「ないです。なので、検査は受けられないということですね?」

係員は言う「はい、そうです。」

私は聞く「では、私はどうしたらいいですか?」

係員は言う「眼科を受診してください。それで、眼科医が新型コロナウィルスの検査が必要と思ったら、保健所に連絡が来ますから」

私は聞く「もし、私が発症していないだけとしたら、感染しますよね。」

係員は言う「いえ、まだ、潜伏期間の感染については、わかっていません。」

え?潜伏期間に動きまわることが、感染拡大しているのではないか?

もしも、私が感染者だったら、眼科に来ている人にうつすではないか?

保健所の認識は、発症していなければ感染はないということなのか?
これが、全国で起こっていることなのか?

保健所で、「検査対象でない」と言われた人が、保健所の指導のもと、医療機関を受診し、感染拡大しているのではないか?

私は自分の目の病気を心配しているのではない。目からの感染を心配しているのだ。

私は、最後に言った。「私も私の子どもも、元気なので、そんなに心配はしていないのです。ただ、子どもがお世話になっている施設内には、体の弱い方がいらして、そこにウィルスを持ち込むわけにはいかないのです。だから、検査をしてほしいのです。」と。

すると、係員はちょっと同情したような声になって、「ご事情は、お察しします。ただ、今現在は、検査対象とはなっていません。」と言った。

「わかりました。」と、私は電話を切った。

夕方、次郎は、元気に生活介護事業所から帰ってきた。

連絡帳に「軽く咳をしていたので、マスクを付けていただきました」と記されていた。

ああ、やっぱり、次郎にも感染の可能性はある。

私は次郎と話しをした。

「次郎は、事業所のみんなが好きでしょ。」

次郎は「うん」と答える。

私は言う「お友達の中には、体の弱い人もいるよね。」

次郎はまた「うん」と答える。

私は言う。「今、流行っているウィルスは凄くて、毎日亡くなった人のニュースが流れているの知ってる?」

次郎は「うん。」と言う。

私は、「きっと、次郎も、お母さんも大丈夫だけど、お友達にうつしたら、大変だから、次郎はしばらく、お休みした方がいいと思うんだよね」と言った。

私は、次郎がここで、『嫌だ』と言うことを予想していた。

説得するのは、難しいと思っていた。

毎日、本当に楽しみにして、大喜びして、大笑いして通っている事業所。

大好きなスタッフさんが居て、次郎が来ることを楽しみにしてくれるお友達がいて、毎日、楽しく過ごしてきた事業所。

だから、『休むなんて嫌だ』と次郎は言うと思っていた。

なのに、すんなり、『わかった。連絡しておいてね。』と言ったのだ。

次郎、えらいよ。お母さんも頑張るよ。

一緒に公園行こうね。トランプしようね。それから、それから、、、、、

お母さんには、スタッフさんや、お友達が与えてくれた喜びも、楽しみも与えてあげることは出来ないけど、大好きな人の為に、今は、我慢することを教えてあげる。

今でも、検査してもらえず、苦しんでいる方がいることを思えば、私たちに起こったことは、ささやかな、取るに足りないことだ。

もちろん、検査さえすれば、安心というわけでもない。

私たちは、今後、しばらくは、人込みを避け、室内での集まりに参加せず、家もしくは、外で過ごす予定にした。

私の予想では、状況は悪くなることはあっても、良くなることはないと思う。

なにしろ、感染防止の対策が取られていないだから。

最悪を考え、最善を尽くそうと思う。

PS.もしも、次郎と公園で遊んでくださる方がいらしたら、大歓迎です。

たぶん、すぐに私は根をあげると思います(なにしろ、ずっと子どもと遊んでいることなんて、もう出来ませんから)。

どうぞ、応援よろしくお願いします。


 IWJは2月27日、白岩さんに電話で詳しい話をうかがった。

南米やアジアからの移住者も多い四日市の市民には、世界で起きている感染拡大のニュースも「他人事ではない」! それでも市の担当者は「心配しすぎでは」と言わんばかりの呑気ぶり!

 白岩さんは2月18日頃から目に違和感を感じ、1週間ほどすると次郎さんも軽い咳をするようになったという。白岩さんは、テレビのニュースやネットの情報などから新型コロナウイルス感染症の症状に似たところがあると判断し、親子で検査を受けたいと考えた。

 白岩さんは、新型コロナウイルスに関する情報をテレビのニュースやインターネット等で独自に収集してきたという。平日朝に放送しているテレビ朝日の「モーニングショー」や、先日IWJで岩上安身がインタビューした上昌広・医療ガバナンス研究所理事長の話もしっかりチェックした、と話す。

▲上昌広医師(2020年2月16日、IWJ撮影)

 息子の次郎さんは、四日市市に昨年設立された生活介護事業所に通っている。次郎さんにとっては毎日楽しく過ごせる、とても気に入っている場所だということだが、この施設には基礎疾患を持った人、体の弱い人も多く集まるという。白岩さんは、次郎さんが感染していると施設に来ている他の人にも迷惑をかけることになるため、しばらく次郎さんの通所を控えることにした。

 「(白岩さん自身は)もともと花粉症ではなく、ハウスダストやカビ、化学物質などのアレルギーがあって、年中目じりがかゆくなったりするんですが、右目から左目に移るということは通常なかったんで、あれっと思って。それまでに触れていた情報で、新型コロナウイルスは『目からも感染する』というのがあったことや、春節の時期に中国から大勢人が来ていたという話もあり、『他人事ではない』と感じていて自分の身にも起こり得るなと思っていたところに、こうしたことが起こったので」と白岩さんは話す。

 白岩さん親子の暮らす三重県四日市市は、昭和の時代から稼働する「四日市コンビナート」でも知られる工業都市で、近年はブラジルなど南米諸国から働きに来ている住民が多い。白岩さんによれば、学校で中国やベトナムなども含めた外国籍の子供がクラスの3分の1程度を占めることもあるそうで、海外の動きが身近に感じられるという。そんなこともあり、白岩さんは今回の「異変」には特に敏感になったようである。

 白岩さんは「自分の手帳を見直して、いつどこでどんな接触があったかも確認しました」と話した。その際、一つ気になることが出てきたという。

 「2月12日だったんですけど、講演を頼まれて300人の高校生の前で喋ったんです。子供に障害があるので、障害者とどのように接したらいいのか、といったテーマの講演でした。高校の講堂で1時間くらい話し、その後40人の教室でまた1時間、びっしり生徒が詰めかけている教室で話をしました。『濃厚接触』があったとすれば、この時だった可能性もないとは言えないと思いまして。それで、不安を取り除く情報はないかと探し始めました」と、白岩さんは国や市に問い合わせを思い立った経緯を話してくれた。

 次郎さんについても、生活介護施設への通所前に必ず計っている体温が平熱より少し高かったり、ほこりや臭いで咳やくしゃみをするだけでも気になるようになってきたという。白岩さんも、このところの政府や厚生労働省の動きを見るにつけ「かえって不安を大きくしていて、私の中では信用はなくなってしまっている」としつつも、白岩さん親子が本当に感染していないかどうかを確認するために、まずは行政機関の見解を聴くことにしたそうである。

 ブログにもあるように、白岩さんは厚生労働省のLINEアカウントにアクセスし「目からの感染」を懸念していることを質問してみたが、AIによる回答は全く当を得ない内容だった。「中国で眼科医が感染して亡くなったというニュースが以前から出ているのに、いまだに厚労省のAIには『目からの感染』に関する質問には対応できていないのか」と白岩さんは感じたという。

 そこで、あらためて市の保健予防課に電話すると、市の担当者はあたかも「あなたは心配しすぎだ」と言わんばかりの口ぶりだったという。白岩さんが自覚なく周囲に感染を広げるおそれを指摘しても、担当者は「『まれに』そんな例もあるようだが」などと、とにかく「他人事」のような反応であった。「何を馬鹿なことを言ってるのか」と言われているかのような感じだったそうである。

 結局、「発熱や症状がなければ検査は受けられない」ということで、目の違和感であれば眼科を受信してほしい、というのが市の回答だった。この時白岩さんは「眼科医に行ってコロナウイルスのおそれがあると判断しても、おそらく保健所は検査をしないのではないか」と考えたという。

白岩さんの故郷・大分県では「感染者の情報を報告させてもらえない」という不穏な情報も? 介護職等の友人・仲間たちは口をそろえて「厚生労働省・政府は信用できない」!

 危機意識が本当にないのか、市民からの検査を受けたいという要望を極力受けないよう県や国から指示が出ているのか。これでは自身が感染しているのかどうかもわからず、一部では「2週間程度」ともいわれている潜伏期間を経過して症状が出なかった場合に、いつから外出してよいかどうかも自分で判断せざるを得ず、非常に当惑していると白岩さんは胸の内を明かす。

 また、白岩さんは出身地の大分県中津市に近々帰省する予定を立てていた。故郷には85歳の母親がいるが、万が一自分が感染していると高齢の母親に伝染するおそれがあることから、帰省も当面見合わせる方向で考えているという。

 職業柄、白岩さんは福祉・介護関係の知人が多く、こんな「口コミ」情報も教えてくれた。

(…会員ページにつづく)

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「新型コロナウイルス感染症の検査を希望するのは「心配しすぎ」? 国や自治体の不真面目な対応に不安を訴えるブログを公開した三重県在住のIWJ会員にIWJが直接取材!」への2件のフィードバック

  1. indy より:

    働いている娘が昨日より喉の痛みを訴え、今朝、37度9分の発熱がありました。
    当然会社は休ませました。
    心配なので、私が保健所に電話しましたが、私が知っている以上の情報の提示はありませんでした。

    「37度5分以上の熱が4日以上続き、かつ症状があれば、その時は保健所に連絡ください。心配ならまずはかかりつけ医へ行ってください。その際は、突然行くと相手が困るので、電話で行っても良いか聞いてから行ってください」という返事でした。
    娘の事も心配ですし、我々家族も、4日間も不安な気持ちで、感染を恐れながら看病しなければいけないという現実。
    「かかりつけ医でインフルエンザの検査をしていただき、陰性なら、インフルエンザではないということになりますね。」というアドバイスもあったのですが、、、、。

    もし4日以内で娘が回復した場合、治った!と思って娘が仕事に復帰するとしますよね。
    でも、もしかするとまだ保菌している可能性だってあるわけで。
    そうすると、娘から会社の人などに移してしまう可能性だってあります。
    可能性の問題としてはありうることなので、その辺りもお話しして、検査はできませんか?
    と保健所の方に聞いたのですが、上記の返答一辺倒でした。

    なんか腑に落ちないです。
    娘の症状が単なる風邪やインフルエンザであることを祈るばかりです。

  2. さとう より:

    やっと明日PCR検査です。それまで症状が出てから11日経ちました。幸い熱はないですが、11日間ずっと倦怠感と呼吸のしづらさがあります。日ごとに胸部の圧迫感のような、ヒリヒリするような痛みが出てきています。普通の風邪とは明らかに違います。症状は軽くてもこれが長く続くのは苦痛です。「自分がコロナかもしれない」と引きこもりを決めていますが、これもいつまで続ければよいか分からないのが苦痛です。こうなった理由は3月中旬に、東京に行ったことです。そのころには、きっと「誰が感染しているか分からない」状況だったのでしょう。個人的には心当たりがないわけではないですが、「これだ」というものがありません。今発症している東京の人たちは、すでに私が東京にいるころには感染していたのだと思います。潜伏期間が長いための怖さだと思いますが、検査までが長すぎます。重症化したら数時間で悪化すると言うのに、ここまでちんたらされたら怖いです。

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