2月23日の天皇誕生日の一般参賀は、新型コロナウイルスの感染拡大を避けるために中止された。国民の健康を優先する英断である。ところが、こうした考え方は、社会的に共有されていないようなのだ。
中国政府は2月19日、飛沫感染より感染範囲が広い「エアロゾル感染」の可能性を認め、発表した。
新型コロナウイルスの感染は人が集まることで拡大されるが、多数の観客が集まる各種スポーツの会場は、最も感染リスクが高い場所である。スポーツ観戦に熱狂的な応援や声援はつきもので、飛沫が飛びかわないはずはない。
IWJでは、この観点から、2020年2月18日、各スポーツイベントの主催団体に新型コロナウイルスの対応について直撃取材した。東京マラソン、ボクシング、総合格闘技のRIZIN、高校野球、競馬、プロ野球などである。
しかし、特に野球や相撲などメジャーなスポーツの団体が、対策を考えていないことが明らかになる中で、新日本プロレスや打撃系格闘技のK-1の運営団体が、感染の問題を考えて自らの考えを公表していたのが対照的だった。しかし実は、そこにも見過ごせない問題が残っていた。
▲東京マラソン2011(銀座)(Wikipediaより)
東京マラソンは、観客対応は「発表できる段階ではありません」
一般ランナーの参加中止を決めた東京マラソンの主催団体である一般財団法人東京マラソン財団の広報・石黒誠氏は、沿道の観客への対応について「現在検討中で、発表できる段階ではありません。正式に決まりましたらプレスリリースします」と回答。
また、参加費を返金しないことについては、募集要項の中の「エントリー規約13」により、返金不可としたとのこと。規約には以下のように記載されている。
13. 積雪、大雨による増水、強風による建物等の損壊の発生、落雷や竜巻、コース周辺の建物から火災発生等によりコースが通行不能になった結果の中止の場合、関係当局より中止要請を受けた場合、日本国内における地震による中止の場合、Jアラート発令による中止の場合(戦争・テロを除く)は、参加料のみ返金いたします。なお、それ以外の大会中止の場合、返金はいたしません。
IWJはこの中の「関係当局より中止要請を受けた場合」に当てはまるのではないかと質問したところ、「当局からの中止要請は受けておらず、こちらで判断したことなので当てはまりません」とのことだった。
さらに、東京マラソンは東京オリンピックの代表選考も兼ねていることから、エリート選手のみの出場となっている。IWJ記者が選手への対応をたずねたところ、「今回、全面中止の意見もあったのですが、東京オリンピック選考会も兼ねているので開催にふみきりました。出場選手への感染対策については、検討している最中です。現時点で、出場予定のエリート選手から辞退の連絡はございません」との答えだった。
野球や相撲などメジャースポーツ団体のお寒い現状