改憲勢力に与するのかどうか注目を集めている国民民主党だが、同党の玉木雄一郎代表は、7月25日にYouTubeで公開された番組「文化人放送局【緊急特番】吠えろ!玉木雄一郎!!+感想編」に出演し、「私は生まれ変わりました」「憲法改正の議論を進めていきますし、安倍総理にもぶつけます」などと、改憲勢力への鞍替えを匂わせる発言をした。
- 文化人放送局【緊急特番】吠えろ!玉木雄一郎!!+感想編(2019年7月25日)
改憲勢力に与するのかどうか注目を集めている国民民主党だが、同党の玉木雄一郎代表は、7月25日にYouTubeで公開された番組「文化人放送局【緊急特番】吠えろ!玉木雄一郎!!+感想編」に出演し、「私は生まれ変わりました」「憲法改正の議論を進めていきますし、安倍総理にもぶつけます」などと、改憲勢力への鞍替えを匂わせる発言をした。
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「吠える!玉木雄一郎!!」という、番組の冒頭で玉木氏は、次のように語った。
「参議院選挙も終わって、私、選挙期間中も色々な声を聞きました。それで、反省です。我々、モリカケ問題。これ、国会でかなりの時間を取りましたから、結果として国政の重要課題について議論する時間が少なくなってしまったこと、それを国民の皆様に示すことができなかったこと、これは本当に反省しなければいけないと思います。これは本当に、お詫びを申し上げたいと思います。
その上で、私ね、生まれ変わりました。安倍総理、たしかに総理の考えとは私は違いますけれど、憲法改正の議論はしっかり進めていきましょう」
さらに玉木氏は、番組MCをつとめる生田よしかつ氏(YouTube番組「報道特注」のMC)とともに、参院選を振り返りながら次のようなやり取りをしている。
玉木氏「個性をもっと前面に出した方がよかったかなと。色々な党があって、しかも野党で共闘すると、埋没するんですよね。特に野党第2党以下は。だから、『俺たちはこうなんだ』ということをね。仮に力を合わせるにしたって、『まず俺たちはこれをする』というところをバシッと出せばよかった」
生田よしかつ氏「もっと早く出ればよかったね」
玉木氏「こっちも、ほら、どうなのかなと思うし、皆さんから見ても、一緒くたに反対ばかりしている人たちという思いだったと思うんですけど、もうちょっと出てね」
生田氏「そう、独自性というのを出せばよかったですよね」
玉木氏「繰り返しになりますけど、やっぱり国会は議論をしなければだめだと思いますよ」
生田氏「いや、その通りですよ。その通り。それが一番なんだけど、メディアがちょっとね、切り取りをして曲げて伝える報道とかをするところはあるけれどもね。やっぱり国会できちっとした議論というのは大事ですよね」
玉木氏「改めて生まれ変わりました」
生田氏「おぉ~」
玉木氏「やっぱり国会をまともに議論できる場にしていくというのが、令和の時代の国会のあり方。(現状は)55年体制みたいに、とにかく野党は何でも反対、与党は何でも賛成なんですよ。だから、ビュッビュッと議論していくと。ガチンコの議論を国会で見せていくと。国会を変えていきたいですね」
玉木氏は、野党共闘で「埋没」しないよう、改憲の議論で「個性」を出していくつもりなのだろうか。
しかし、参院選前の5月29日に5野党・会派と市民連合が結んだ政策協定では、憲法について「安倍政権が進めようとしている憲法『改定』とりわけ第9条『改定』に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くす」と、合意したはずだ。
この合意のもとに他党からの協力を得たり、この合意を守るであろう、という前提で有権者も票を入れたのだから、選挙後だからといって、自分一人で「生まれ変わった」などと言って約束を反故にすることはできないはずだ。「個性」を出すなどというレベルの話ではない。
玉木氏と生田氏のやり取りは、次第に改憲について踏み込んだ内容へと移っていった。
玉木氏「我々は、オーソドックスに改革中道路線できたけれども、でも、真ん丸っこい状況でもだめだから、どっか尖らないといけませんからね。本来の我々の姿なんだけれども、もっと遠慮せずに、これからの日本に必要だと思うことは、バシバシ言えと。憲法の話もね。我々としても憲法改正の議論を進めていきますし、安倍総理にもぶつけますよ。だから、安倍総理にも受け取ってもらいたいんですよ。(国民民主党に)秋波を送ってくれているというのは新聞で見たんですけれども…」
生田氏「でも下手すると、秋波を送ってくれていて、一本釣りされちゃうよ」
玉木氏「ハハハ(笑)。だから、一本釣りされちゃ意味ないんですよ。我々は組織として一つの考えをまとめ、それをきちんと党と党として、最終的には党首と党首として、きちんと話をさせてもらいたいです」
生田氏「下手すると、草刈場にされちゃってもね」
玉木氏「まあ、そういう報道がよくあるんですよね」
生田氏「そうそう。そのためにももう一回呼びかけましょう。『安倍総理!』みたいな」
玉木氏「私たちは憲法議論をしっかりやりますから。総理の改憲4項目には必ずしも賛成ではありません。ただ、憲法議論はやっぱり、国の最高法規ですから、(議論を)やりましょう」
生田氏「はい。楽しみにしております。期待しておりますので、よろしくお願いしたいと思います」
「一本釣りされちゃ意味ない」という玉木氏の発言は、国民民主党所属の議員個人ではなく党全体が、改憲勢力へ鞍替えすること狙っているようにも受け止めることができる。
岩上安身は7月26日、こうした玉木氏の改憲に関する発言を受けて、次のように手厳しいツイートをした。
「玉木代表が、独走して、改憲論議に加わり、さらには改憲発議に賛成に回ったら、おっしゃる通り、国民民主党は、政党として、『オレオレ詐欺』を働いたことになりますね。『オレ、オレだよ、玉木だよ、安倍の改憲には乗らないよ。だから国民民主に票を入れてよ』。これ、詐欺ですね、全くの詐欺」
一方、国民民主党の津村啓介衆議院議員は、「玉木国民民主代表『安倍首相と会談を』=改憲論議に前向き」という見出しの25日の時事通信の報道を受けて、「誤報であることを、祈ります」とツイート。
この津村議員のツイートを引用リツイートした国民民主党の原口一博衆議院議員は「国対方針は2019/07/24の総務会で私から報告して了承を受けています。国民民主党は私党ではありません。党の綱領と基本政策について草案を作り公式のものとなっています。立憲主義を毀損するいかなる試みも認められません」と投稿している。
さらに昨日26日、玉木氏が立憲民主党の枝野幸男代表と参院副議長人事で会談したあとのぶら下がり会見での玉木氏の弁明を受け、前出の津村議員は「国会議員が憲法に一家言持ち、日々議論するのは当然。ただ、立憲主義を軽視し、経済失政で日本社会に深い分断を生んだ安倍政権下では国民的議論の環境が整わない。参院選前の約束とも180度違う『総理との党首会談』などありえず、玉木代表も本日そのことを確認された。私はそう理解しています」と、ツイッター上で表明した。
記者会見の場で、ネット番組において「生まれ変わった」と発言したことの真意を問われた玉木氏は、「徹底的な政策論争をしていくという意味で、『生まれ変わります』と心構えを申し上げたのであり、今までと考え方を変えて憲法議論に参加しますと申し上げたものでは全くない」と、番組内で「生まれ変わります。憲法改正の議論をしましょう」とストレートに「生まれ変わり」と「憲法改正議論」を結びつけていたにもかかわらず、巧妙に発言を修正して弁明した。
さらに「党と党として、最終的には党首と党首として、きちんと話をさせてもらいたい」との発言については、党首討論や代表質問のことで、党首会談を申し込むことは想定していない、などと釈明した。
IWJは、玉木氏が25日公開の「文化人放送局」で語った改憲問題に対する玉木氏の姿勢について批判的なツイートをした国民民主党の津村啓介衆議院議員と、原口一博・国会対策委員長にFAXを送り、現在、回答を待っている。
玉木氏の改憲問題に関する一連の発言は、玉木氏と国民民主党に対する不信感を募らせることになっただろう。玉木氏は昨日26日、次のように釈明するツイートを投稿した。
「昨日の発言は従来の考え方を述べたまでです。まず積み残しになっている国民投票法改正法案について議論。国民民主党が提出している改正法案にあるCM広告規制の導入は不可欠。安倍総理の9条改憲案には明確に反対。我が党の改憲項目については党内でまとめ、党首討論などで安倍総理に論戦を挑んでいく」
国民投票におけるCM規制は重要であり、こうした点を与党に迫り、同時に世論を喚起することは大いに歓迎すべきだが、気がかりなのは改憲4項目のうち、9条改憲には明確に反対を述べながら、緊急事態条項の賛否についてまったく触れていないことだ。緊急事態条項が導入されれば、9条の改憲の有無など、吹き飛んでしまう。内閣による独裁が可能になるのだから。
「今回の選挙で全国を回って感じたのは、議論そのものを否定するような政治では無党派層や多数のサイレントマジョリティの共感を得ることはできないということです。特に若い世代。事実、山本太郎さんは経済政策論争をやっているのです。この点、私自身も反省すべきは反省して前に進みたいと思います」
このように「従来の考え方を述べたまで」と釈明した玉木氏だが、少なくとも、国民民主党の議員個々人が改憲勢力に「一本釣り」される懸念を拭い去ることはできていない。しかし、IWJがコメントを求めた市民運動団体のある幹部は「玉木氏も反省しているので」と、コメントを拒否、共闘したある野党の事務方も「共通政策の合意内容が全てなので」と、コメントを拒否した。
ところが、ネットでは国民民主党の選挙対策委員長である岸本周平衆議院議員がテレビ番組で「市民連合とは約束していません。要望を受け取ったと言う受領証にサインしただけですから。政策合意ではありません」と発言した動画が拡散され、まとめサイトもできている。
岩上安身は26日、国民民主党が電気労連から支援されているため、低迷する政党支持率に対して潤沢な資金があることを問題視して次のようにツイートしている。
「連合の中心をなす右派は電機連合や基幹労連。どちらも国民民主支持。90年代以降、グローバリズムの波に乗って海外へ進出し、国内産業を空洞化して敗退した電機産業や、新興アジア勢力に敗退してきた鉄鋼などの重厚長大産業。敗北した産業の、リストラ続きの企業の組合は必死で会社にし」
「続き。電機連合や基幹労連は、必死で会社にしがみつき、財界と歩調を揃え、自民党・財界と言っていることが変わらなくなってしまった。ずーーっと経済敗戦を続けているというのに! 愚か過ぎて話にならない連合は解体して、純然たる労働組合となり、賃上げ要求だけして政治に口を出すな!と言いたい」
参院選中の7月13日、静岡新聞朝刊一面トップで報じられた、参院選静岡選挙区で立候補している国民民主党の榛葉賀津也(しんば かづや)候補を官邸が支援に回っているという疑惑がある。この疑惑について、テレビ朝日『報道ステーション』は7月17日に報じる予定だったが、放送直前になって、用意していた約6分のVTRが丸ごと削除されることになった。
「『報ステ』から消えた『6分』のVTR」について、記者クラブ所属のある新聞社の現役記者・伊藤直也氏(筆名)から、詳細なレポートがIWJへ寄せている。テレ朝内部の報道ステーション関係者からの証言にもとづいて書かれたスクープ記事である。ぜひ、以下のURLからご覧いただきたい!
フリージャーナリストの横田一氏やIWJ記者による国民民主党・玉木雄一郎代表への直撃取材の記事も、あわせてご覧いただきたい!
玉木氏は、25日公開の「文化人放送局」に出演の際、東京選挙区で国民民主党から新人として立候補・落選したJAXA職員、水野素子氏に触れる中で次のような発言をした。
「(水野さんから聞いて)これまずいと思ったのは、今日本では現行法の下では、有人ロケット飛ばせないんですよ。でも、中国は有人の(ロケット)飛行機飛ばしたり、バンバン。そして今度インドも行くでしょ。だからまずい」
「宇宙開発のことなんかは、中国に完全に水を開けられているんだけど、『はやぶさ2』はまさにJAXAがやっていたでしょ。ピンポイントでどっかに落とすっていう技術は日本が持っているんだって。全部はだめでもどっかコアな技術のところをぐっともっておけば。だから日本は科学技術の予算を持っておけば。だから国債発行してでも、1年間に5兆円くらいずつ付けてね」
他方、選挙期間中の7月19日に玉木氏は次のようなツイートを投稿し、「家計第一の経済政策」を強調している。
「やはり参院選の争点は消費税だ。確信した。#家計第一の経済政策 で #消費を軸とした好循環 に転換するために消費増税はナシだ。それと軽減税率は絶対に導入してはダメ。なぜ新聞だけ8%の軽減税率が適用されるのか。当事者の新聞は皆ダンマリ。税の公平性を歪める権力との癒着構造を許してはならない」
選挙中は「家計第一の経済政策」を訴えながら、選挙後には、科学技術の予算に年5兆確保する必要性を訴えている。本年10月、消費税を8%から10%に2%引き上げることによる増収分はちょうど5兆円だと言われている。「家計」から「宇宙開発」へ。選挙前後の主張の乖離に戸惑いを感じる有権者も少なくないだろう。
もはやこれは「生まれ変わり」などと表現するよりも、玉木氏の「手のひら返し」と言ったほうがしっくりとくるのではないだろうか。参院の国民民主党が、日本維新の会と統一会派を組むことを検討しているとのニュースを、27日付の日本経済新聞が報じている。
先の参院選では自公与党および維新を加えた「改憲勢力」が改憲発議可能な3分の2の議席を割り込んだ。選挙の結果、改憲を望まない有権者が多く、改憲発議をすべきではない、というのが民意のはず。それなのに、参院内で改憲発議に向けて多数派工作を展開する改憲努力を、それを受けて参院だけで維新と組んでしまおうとする国民民主党の一部の動きも、民意に背くものであろう。
他方、国民民主党の玉木雄一郎代表など衆院側は、維新と統一会派を組むことには反対だという。27日付の日経新聞は、「次期衆院選での立民などとの選挙区調整に障害になりかねないとみる」と伝えている。