坑道のカンテラが照らす現代日本の闇!~「作兵衛さんと日本を掘る」上映後 豪華ゲストを招いて〈ゴットン・トーク!〉熊谷博子(監督)・永田浩三(元NHKプロデューサー・武蔵大学教授) 2019.7.25

記事公開日:2019.7.29取材地: テキスト動画
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※2019年8月5日、テキストを追加しました。

 2019年7月25日のポレポレ東中野にて、「作兵衛さんと日本を掘る」上映後 豪華ゲストを招いて〈ゴットン・トーク!〉熊谷博子(監督)・永田浩三(元NHKプロデューサー・武蔵大学教授)が行われた。

 作兵衛さんとは、福岡県筑豊炭田の炭坑夫の山本作兵衛(1892‐1984)で、自分の人生を描くようにして炭坑夫の多くの記録画を残した人物である。この熊谷博子監督の作品、「作兵衛さんと日本を掘る」は、作兵衛さんの記録画や彼にまつわる人々のお話を通じて、現代日本のあり方に一石を投じた映画となっている。本作品の作兵衛の当事者性あふれるメッセージにふれるならば、暮らしの中の歴史の意味について改めて思いをはせることができるだろう。下記では、本トークショーの模様を記していく。

 冒頭、熊谷監督よりあいさつがあった。制作期間に7年間を要したことについて熊谷監督は次のように述べた。

 「赤ちゃんからお年寄りにいたるまで、何も言えずに亡くなっていったたくさんの方がいらっしゃると思います。ここであきらめてしまうと、そういった方たちの思いとか労働とかを伝えられないような気がして、その方たちに背中を押されるような気がして、何とか完成させることができました。(若くして国際的評価を受けていた現代美術家の)菊畑茂久馬さんが作兵衛さんの絵と出会ってから20年間何も描けなくなったとおっしゃってましたけど、いつも茂久馬さんと比較するのはそんな、と自分で思いながら、何度も茂久馬さん状態に陥りました。その度に、こういう方たちの思いや労働がこの日本という国を支えてきて、私たちの生活を支えてくれたんだと思いまして、何とか最後まで行きつくことができました」

 この日のトークショーには、作兵衛さんの孫の緒方惠美さんの娘で、ドイツ在住のバイオリニスト・緒方ももさんも参加した。作兵衛さんについての思い出を、ももさんはこう述べた。

 「ひいおじいちゃんが亡くなった3年後に私が生まれたので直接は会ったことがないんですけど、母や親戚から時々話をうかがうことがありまして、やはり劇中にもありましたように、ひいおじいちゃんのとなりには必ず一升瓶。お酒を飲みながら、お客様と酒盛りをしながら、というイメージがすごく強いです。生きていたら日本酒を飲みながらゆっくりお話をしたのかな」

 熊谷監督から本作品の感想を求められたももさんは、「一貫して私たちひ孫の世代、その先の世代が、どうやって炭坑の歴史、また山本作兵衛のこと、山本作兵衛が遺した作品のことを遺していけるのかと」自問自答し、「やはり非常に難しい面があると思うのですけれども、私自身もひ孫の立場で作兵衛じいちゃんのこと、その作品のこと、また炭坑のことを伝えていけたらと思いながら」この映画を見ていたと答えた。

 元NHKプロデューサー・武蔵大学教授永田浩三は、このトークショーの末尾で、現在の政治状況を踏まえて、こう語った。

 「われわれはどういうふうに歩んできて、今日あるんだろうと思いますよね。今、徴用工のこととか、慰安婦問題とか、ことさらに朝鮮半島との関係をありえないくらい貶めるような語り方を今の政府はしていて、選挙でお灸を少し据えられているはずなのに、むしろ逆に常軌を逸したような形で逆ギレしている。

 そういう中で、炭坑の歴史を見てみようよ。それはそんな簡単なものではないし、いかに搾取とか差別とか様々なものが貼りついている。その中で日本の産業、豊かさ、あるいは戦争というものが行われてきたんだと。そのことをちゃんと知っていて、あなたはしゃべっているんですか。そんな気がしますね」

 現政権の対韓・北朝鮮外交や歴史認識の問題点を指摘した永田氏の発言は、この作品が、それを見る私たちの闇をカンテラ(携行ランプ)で照らしていると気づかされる発言だった。

 この点について、名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟(2018年11月29日韓国最高裁で原告勝訴判決)で弁護団事務局長を務めた岩月浩二弁護士が、「韓国の徴用工訴訟の加害企業に麻生セメントなど、麻生財閥の関連企業が名を連ねていることは極めて象徴的である。(麻生太郎財務相のように)今、日本を支配している政治家のトップは、植民地や傀儡国家の人々の血と汗を吸い上げて巨大な利益を上げた者たちの子孫(※)なのだ」とIWJへの寄稿で述べている。あわせてご覧いただきたい。

(※)麻生財閥は、麻生太吉が福岡県飯塚市で1872年に始めた石炭採掘の麻生鉱業を手始めに、セメント事業などに、事業を拡大。九州で有力財閥となった。麻生太郎副総理兼財務相は政界転身までグループ企業の中核、麻生セメント株式会社の社長だった。
 麻生鉱業における朝鮮人労働者が、1944年以降にあたる狭義の「徴用」とそれ以外にあたるのかといった区別など、詳細の解明は今後の資料発掘にもとづいた検討を待たなければならないが、米国立公文書館より「麻生鉱業報告(Aso Mining Report)」が発掘されたことで、朝鮮人・中国人労働者だけでなく連合国軍の捕虜が麻生鉱業で強制労働を強いられていたことの裏付けが得られた。この文書は、2009年2月6日に当時民主党所属の参議院議員であった藤田幸久氏が、国会議員会館で開かれた「麻生鉱業捕虜使役問題に関する報告会」で発表したことでよく知られることとなった。

以下に基本的な二次文献を掲げる。

・横田一「麻生一族の過去と現在―首相側近が語る『強制連行否定論―』」『世界』第786号(2009年1月)90-98頁
・西成田豊「朝鮮人強制連行と麻生鉱業」『世界』第788号(2009年3月)120-125頁
・Fukubayashi Toru, “Aso Mining’s Indelible Past: Verifying Japan’s Use of Allied POWs Through Historical Records,” The Asia-Pacific Journal, 7-33-2 (August 2009), pp. 1-8

 歴史の事実を無視するような動きが、目立っている。8月1日から10月14日まで続く、愛知県の名古屋市や豊田市など複数の会場で行われている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、企画展の一つ、「表現の不自由展・その後」が、開催3日目の8月3日限りで中止になった。「平和の少女像」展示に「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」との脅迫まであった。詳しくは下記URLよりご覧いただきたい。

■ハイライト

  • 日時 2019年7月25日(木)12:30の回上映後〜
  • 場所 ポレポレ東中野(東京都中野区)
  • 詳細 ポレポレ東中野HP

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