【特別寄稿】安倍総理応援団の櫻井よしこ氏と石崎とおる衆院議員に公職選挙法違反(虚偽事項公表罪)疑惑浮上!? 塚田一郎参院議員への応援で、対立候補の打越さく良氏を中傷するフェイク演説の疑い!? 2019.7.15

記事公開日:2019.7.15 テキスト
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(取材・文:フリージャーナリスト横田一)

 安倍総理に太いパイプを持つジャーナリストの櫻井よしこ氏は、法律(公職選挙法)違反をしても見逃されると思っているのだろうか?

 こんな疑問がふつふつと湧き起こってきたのは、参院選公示を9日後に控えた6月25日。「安倍・麻生忖度道路発言」で国交副大臣を辞任し、新潟選挙区での再選が危ぶまれている塚田一郎参院議員の支援集会に駆け付けた櫻井氏の応援演説を耳にした時のことだ。

▲塚田一郎参院議員(手前)の支援集会に駆け付けた櫻井よしこ氏(奥)(横田一氏提供)

 公職選挙法235条第2項(虚偽事項公表罪)は、特定の候補を当選あるいは落選させるために、虚偽の事実を公にしたり、事実をゆがめて公にすることを禁じている。しかし櫻井氏の演説は、勝手に争点を設定した上で相手候補の打越さく良氏が訴えてもいないことを実際に発言したかのように紹介したり、打越氏の記事を歪曲し、レッテル貼りをした上に現実認識能力への疑問呈示もしていた。少なくともそのように聞こえる演説だった。これは公選法違反ではないだろうか?

石崎とおる衆院議員は櫻井よしこ氏の演説を要約し、「相手候補(打越さく良氏)は天皇制を否定する。自衛隊を否定する。大変、赤い候補」と打越氏を中傷する発言! 「これを伝えることが選挙運動」とデマの拡散を呼びかけ!

 支援集会の締めは、櫻井氏や塚田氏ら関係者が一堂に介しての「勝つぞ」コール。関係者らが並ぶ会場前方に移動してカメラを構えた瞬間、発声役の石崎とおる衆院議員(新潟1区で落選して比例復活)が、次のような櫻井氏の演説絶賛の総括的挨拶をして、再びビックリ仰天した。

 「今日、いただいた櫻井先生のお話をまわりに伝えないと、選挙運動とは言えません。ぎゅっと凝縮いたしますと、『塚田一郎さんはどんな人なのか』と言われた時に『本当はいい人、塚田一郎さん』と広めていただきたいと思います。(中略)そして相手候補は天皇制を否定する。自衛隊を否定する。大変、赤い候補なのです。これをしっかり伝えていかなければなりません。

 残り少ない日数となりましたが、この度の参議院選挙、新潟選挙区は塚田一郎必勝のために、みんなで渾身を込めて戦い抜くことを誓って、勝つぞコールにいきたいと思います。それではいきます。『塚田一郎勝つぞ』(3回繰返し)」

▲石崎とおる衆院議員は「櫻井先生の話を広めていただきたい」と呼びかけた後、勝つぞコールをした(横田一氏提供)

相手候補への批判に根拠はあるのか!? 櫻井よしこ氏の大衆煽動選挙の巧妙な手法!

 櫻井氏と石崎氏の発言は、公職選挙法違反(虚偽事項公表罪)の疑いがあるのではないか。公選法違反の疑いがある櫻井氏の問題発言は「『自衛隊をなくして皇室をなくす』という打越さん」という以下の部分だ。

 「(参院選の)新潟の場合は塚田さんと打越さんの一騎打ちです。この(会場の)中で『自衛隊をなくして皇室をなくす』という打越さんがいいと思う人はいるはずがない。(参加者から『そうだ!』『負けてられないよ!』という声)。

 負けてられないけれどもお父さん、今ね、調査すると、打越さんの方が少し有利なのですって。恥ずかしくない? (参加者から『恥ずかしい!』との声)

 だから、これを一日も早く逆転しないといけない。逆転して、そして、さらに彼女に打ち勝って選挙の当日にはすごい票差でこっちが勝たないといけない。(拍手)皆さん、打越さんに聞きましょう。『あなたは皇室のことをどうなさるおつもり?』『自衛隊を解散するのですか?』。聞いて下さい。だって共産党が一生懸命支援をしている」

▲櫻井よしこ氏(横田一氏提供)

 言っていることがムチャクチャである。櫻井氏の大衆煽動選挙の手法を整理しよう。1)参院選の争点が「自衛隊解散」や「天皇制廃止」であるかのように自ら設定、2)打越氏が自衛隊解散と天皇制廃止を主張しているかのように指摘、その理由として共産党の支持をあげる。3)リードを許している対抗馬の塚田氏への投票で逆転勝利をおさめようと呼び掛ける、というものだ。

打越さく良候補本人も否定、陣営関係者も聞いたことがない「自衛隊解散や天皇制廃止」発言!? 櫻井氏は「公選法違反でない」というなら打越氏が「自衛隊をなくして皇室をなくす」と発言した根拠を示す必要がある!

 もちろん実際に、自衛隊解散と天皇制廃止の是非が参院選新潟選挙区の争点となり、打越氏が自衛隊解散や天皇制廃止を訴えていれば、櫻井氏の演説は何の問題もない。しかし打越氏が発表した政策(公約)にも集会での演説でも、自衛隊解散や天皇制廃止の主張を見聞きすることはなかった。櫻井氏は「だって共産党が(打越氏を)一生懸命支援をしている」と強調したが、実際、共産党の国会議員が打越氏の集会で応援演説をしたのを聞いたが、その時にも自衛隊解散や天皇制廃止の主張が出ることはなかった。

 打越選対関係者に「自衛隊解散や天皇制廃止を訴えたことはありますか」と問い合わせたが、答えは「聞いたことはない」だった。打越候補本人にも確認したが、「自衛隊や天皇制の専門家でないので、自衛隊解散や天皇制廃止を訴えたことはありません」と答えた。

 ちなみに打越氏が出馬会見で明らかにした5本柱の政策は、1)格差と差別のない社会、2)地域経済の躍進、3)原発ゼロ、4)暮らしの安心・安全確保、5)新時代の平和政策、であった。

▲野党統一候補・打越さく良氏

 結局、櫻井氏は、打越氏が共産党を含む野党が支援する統一候補になった事実をベースに、自分の頭の中で妄想を膨らませて、現実には存在しない打越氏の発言政治思想(「自衛隊をなくして皇室をなくす」)を作り上げ、その自分の妄想を打越候補自身の発言思想であるかのように聴衆に思い込ませるデマ応援演説をしたのだ。

 櫻井氏が「公職選挙法虚偽事項公表罪違反にはならない」と反論するのなら、打越氏発言(「自衛隊をなくして皇室をなくす」)の日時や場所や状況など具体的根拠を示す必要がある。そうしない限り、嘘を垂れ流して特定の候補を落選あるいは当選させることを禁ずる公選法違反濃厚の疑いを晴らすことはできないだろう。「『ジャーナリスト』の肩書を使いながら嘘を垂れ流して安倍自民党候補を当選させようとする選挙運動家」と批判されても仕方がないだろう。

 7月14日に櫻井氏は二度目の応援演説を上越市で行って塚田氏への支持を訴えたが、その後に直撃して打越氏発言の根拠を聞いたが、櫻井氏は打越氏発言を口にしたこと自体を否定、具体的根拠を示すこともなかった。

▲櫻井よしこ氏直撃(動画提供:横田一氏)

さらに朝日新聞慰安婦報道問題で、慰安婦問題全体を朝日が捏造したと思わせる巧妙な話術で「打越さんは極めてリベラルで左。信用できない」と決めつけての中傷!

 櫻井氏の公職選挙法違反の疑いがある問題発言は、他にもあった。慰安婦報道についてスリカエ(入れ替え)論法を使って、打越氏の記事内容を歪曲、「極めてリベラルで左」というレッテル貼りと現状認識能力への疑問呈示もしていたのだ。

 二番目の問題発言部分は、次の通りだ。やや長くなるが、注目ポイントは、打越氏執筆記事中の「(全体的な)慰安婦朝日新聞捏造説」と、「吉田清治氏慰安婦報道の朝日新聞撤回・謝罪」のスリカエ(入れ替え)をしていることで、ここでも会場の参加者と掛け合いをするなど、大衆煽動選挙の手法を使っていた。

▲櫻井よしこ氏(横田一氏提供)

 「今度の参院選挙でも塚田さんは圧倒的に勝たないといけない。(拍手)打越さんという方、立派な頭のいい弁護士さんなのだと思うのです。私は、打越さんがどういうことを仰っているのかをやっぱりきちんと調べようと思いまして、彼女のいろいろ書いたもの、発信したものを見てみました。

 おかしなことが書いてあるのです。これは、2016年9月21日付のネットサイト『LAVE PIECE CLUB』というところに打越さんが書いてありますね。ここで慰安婦の問題について書いています。『かなりリベラルと信頼する友人たちからも“慰安婦って朝日新聞の捏造なのでしょう”と言われてビックリすることも多い』と彼女は書いています。これは、2016年9月21日のネットサイト『LAVE PIECE CLUB』に書いたものです。

 さあ朝日新聞といえば、慰安婦問題で大誤報をしました。で、『間違っていた』ということを彼らは認めましたよね、それが2014年8月5日と6日の紙面です。本当に、こんなに一面も二面も三面も使って大検証をしました。

 朝日新聞が報道した慰安婦関連記事、吉田清治さんという職業的詐欺師がいた。朝鮮半島に行ったことはないのに、息子さんがちゃんと言っています。『うちのオヤジは済州島なんか行ったことがありません』。にもかかわらず、『戦時中、軍に命令されて済州島に行って若い女性たちを慰安婦狩りをして、何百人も泣き叫ぶ女性たちを連れて行って慰安婦にした』という嘘を書いた人が吉田清治さん。

 朝日新聞がこのことを大きく取り上げた。そこから慰安婦問題に対する本当に深刻な誤解が始まったのです。朝日新聞はこの吉田清治さんに関する一連の記事の全てを虚偽であるとして訂正をして取り消しました。これが2014年8月5日と6日です。

 ところが打越さんの書いた先ほどの記事、これは2016年9月21日です。朝日新聞は2014年8月に取り消している。ところが彼女は、それから2年以上後に2016年9月になって、自分の友達が『慰安婦問題、朝日の捏造でしょう』ということを書いたのをビックリしたと言っている。でも2年以上も前に朝日新聞が大訂正をした。『慰安婦問題、吉田清治、嘘でした』と訂正したことに対して、彼女はどう思っているのでしょうか。『お友達が「朝日新聞の捏造でしょう」と言ったことにビックリした』と書いているのです。そんなこと(朝日新聞の捏造でしょう)は当たり前で、(打越氏が)ビックリしたことに私たちの方がビックリした。(参加者から『バカじゃないの』の声)

 打越さん自身がやっぱりすごくリベラルで左で、現実を見ることを拒否しているのかも知れないとさえ、私は思いました。

 いずれにしましても、この共産党を含めた野党が応援する打越さんの政治的立場というのはどこまで信用して良いのか。打越さん自身が極めてリベラルで左かかっている考え方を、どこまで私たちは支持できるのか。信用も出来ないし、支持もできないのではないかしら?(大きな拍手)」

▲櫻井よしこ氏講演(動画提供:横田一氏)

櫻井氏の打越氏批判は外形上の類似性を利用して実質的に異なるものを同じものと見せかけるスリカエ論法!?

 外形上の類似性を利用して実質的に異なるものを同じものと見せかけるスリカエ論法である。以下の二つの主張は一見、同じように見えて実際は異なるものである。

1)打越氏が驚いた「慰安婦は朝日新聞の捏造なのでしょう」というリベラル派友人の慰安婦朝日新聞捏造説

2)櫻井氏紹介の「吉田清治氏関連慰安婦報道の朝日新聞訂正謝罪」

 朝日新聞は吉田清治氏関連の慰安婦報道を訂正・謝罪したが、慰安婦報道全体を誤報と認めたわけではない。例えていえば、「朝日マンション」の一室が詐欺師集団に使われていたことを不動産販売業者が認めたとしても、全棟が詐欺師集団の拠点であるかのように決めつけられたら事実誤認の風評被害ということになるだろう。櫻井氏のやっていることはまさにそれである。

 吉田証言を朝日は訂正した。しかし、従軍慰安婦問題の他の記事すべてを撤回したわけではなく、もちろん、従軍慰安婦の存在を否定したわけでもない。また、吉田証言を扱ったのは朝日だけでなく、産経なども過去に扱っていた。そして、吉田証言の記事をもって、慰安婦問題報道が始まったのではない。ひとつの誤報をもってすべてが間違っていると決めつけるのは、典型的なデマゴーグの手口のひとつである。

 1)の打越氏執筆記事中の「慰安婦朝日捏造説」は慰安婦報道全体を指しており、2)の「朝日新聞訂正謝罪」の対象は「吉田清治氏関連慰安婦報道」であるのに、櫻井氏は実質的には異なるものを入れ替えて同一視しながら「(全体的な慰安婦朝日捏造説否定の打越氏が)ビックリしたことに私たちの方がビックリした」と呆れてみせ、「すごくリベラルで左」というレッテルを貼った上で、「現実を見ることを拒否しているのかも知れない」と現実認識能力に疑問符をつけたのである。現実の認識に問題があるのはどちらだろうか。

 「一室が詐欺師集団の拠点であったことから『マンション全棟が詐欺師集団のアジトだ』と妄想(拡大解釈)する事実誤認の風評が広がっている」という現実を前にした時、打越氏のようにビックリする方が普通ではないか。打越氏がビックリしたことにビックリした櫻井氏の方こそ、「現実認識能力の乏しいすごい右(極右)」と指弾されても仕方がないのではないか。

慰安婦問題全体を捏造と聞こえたのは「あなたの誤解」!? 自らは「捏造」とも「慰安婦問題はなかった」とも口にせず、聴衆を印象操作する話術は公選法違反の疑い!?

 そんな櫻井氏を「勝つぞ」コールで集会が終わった後、直撃してみた。

横田一「今、慰安婦問題全体が(朝日新聞の)捏造のように仰りましたが、朝日新聞の…」

櫻井氏「いいえ、『誤報だ』と私は言いました」

横田「全体が誤報であるかのように、慰安婦問題が存在していないかのような…」

櫻井氏「違う。違う。ちゃんと聞いてください。彼女(打越さく良氏)がそのネットワークの中で、『自分のリベラルな友達が「朝日の捏造でしょう」と言ったと、そのことにビックリした』と言ったでしょう。彼女が書いていることです」

横田「それは慰安婦問題全体を意味して(捏造と)言っていることじゃないですか。朝日が誤報と認めたのは吉田清治さんの部分だけじゃないですか。全体が誤報であるかのように今のお話で聞こえたのですが」

櫻井氏「それはあなたの誤解です」

横田「そういうふうに聞こえるのではないですか?」

櫻井氏「聞こえません。私は言っていません」

横田「慰安婦問題全体は認めるのですか。存在は認めるのですか」

櫻井氏「慰安婦がいたことは認めますよ」

横田「そういう言い方をしていないじゃないですか」

(控え室の中に入ってドアを閉められ、回答を聞けず、質疑応答終了)

▲櫻井よしこ氏直撃(動画提供:横田一氏)

 櫻井氏は「あなたの誤解」と主張したが、実際には櫻井氏の話を聞いた参加者から「(打越氏は)バカじゃないの」の声が飛び出していた。打越氏は「慰安婦全体に対する朝日新聞捏造説」に驚いて批判的立場を明らかにしただけなのに、櫻井氏は反論材料になりえない「(限定的)吉田清治氏慰安婦報道の朝日新聞訂正謝罪」を引っ張り出して、見かけ上の類似性を利用するスリカエ(入れ替え)論法で論破したかのような印象を与えたのである。どちらが真実に近いのかは、櫻井氏の関連発言部分や直撃場面の動画や打越氏のネット記事を見ることで、判断することができる。

 櫻井氏は安倍首相の発言を自ら主宰するインターネット番組「言論テレビ」で紹介、月刊誌「Hanada」8月号でも「安倍総理、大いに語る」と題するロング対談もしているが、「ジャーナリストの肩書を使った大衆煽動家ではないのか」「事実にもとづいて論を展開するジャーナリストといえるのか」について、国民(有権者)は参院選前に見極める必要があるだろう。

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