自称「ジャーナリスト」の櫻井よしこ氏が、熊本・大分大地震のさなかに「緊急事態条項」創設を主張!熊本・大分大地震は「最初から国が前面に出て」「事態に対処することができたであろうと思われる」と大放言! 2016.4.28

記事公開日:2016.4.28 テキスト
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(文・原佑介、記事構成・岩上安身)

 最大震度7を観測した熊本・大分大地震。多くの被災者が、現在も避難生活を強いられている中、「ジャーナリスト」を僭称する櫻井よしこ氏が、白昼堂々と「緊急事態条項」創設を主張した。

 J-castニュースによると、櫻井氏は、2016年4月26日に都内で記者会見し、「緊急事態条項」の制定に向けた憲法論議を改めて要求。仮に緊急事態条項があれば、熊本地震は「最初から国が前面に出て」「事態に対処することができたであろうと思われる」と主張したという。

 さすがは日本会議とベッタリの、超のつく極右論者である。安倍総理や麻生副総理らが、国会で野党に質問されてもとぼけて中身について答弁しない「緊急事態条項」を、堂々と、ここまで白昼に持ち出してくるその神経のず太さ。参院選を前にして、安倍政権の真の狙いはどこにあるのか、雄弁に、あからさまに、語ってしまっている。

 櫻井よしこ氏といえば、2016年2月20日、横浜市の関内ホールで開催された「今こそ憲法改正を!神奈川県民大集会」で、戦前の皇国史観そのままの歴史観、国家観を披瀝した人物である。「日本書紀」に記された「神話」を持ちだして、「神話が国家になったのが日本である」とのたまい、現代においてそうした皇国史観を憲法改正する際の規範として考えるべきだと唱えた。もちろん、普通の手続きをとっていたら、何度選挙を繰り返しても、皇国史観にもとづく国家の実現などありえないだろう。9条2項を改正しただけでは、国民主権も基本的人権も三権分立も消えはしない。「国民主権」を打ち消すことは、ある種の「クーデター」でしか、実現しえない。

 しかし、「緊急事態条項」を用いて、現行憲法秩序を停止させてしまえば、連続的な国家改造手術によって、それは可能となる。「緊急事態条項」は、右からのクーデターを合法的に遂行する条項なのである。

▲自称「ジャーナリスト」の櫻井よしこ氏(2016年2月20日「今こそ憲法改正を!神奈川県民大集会」にて)

 櫻井よしこ氏の主張する、災害時に「緊急事態条項」が力を発するというのは、真っ赤な嘘である。災害をダシにして、合法的に「国民主権」の民主国家体制を転覆させようとする口実に過ぎない。災害支援の現場に精通し、机上の空論を完膚なきまでに論破する永井幸寿弁護士への岩上安身によるインタビューを、ぜひ、御覧いただきたい。

  現実には、国は被災地の現状を速やかに把握し、ニーズに適切にこたえることができない。 安倍総理は1度目の最大震度7を観測した14日夜の大地震を受け、翌15日午前、河野太郎防災担当大臣に対し、「現在、屋外で避難している全ての人を15日中に屋内の避難所に入れるよう」指示を出した。それに対し、熊本県の蒲島郁夫知事は15日、「現場の気持ちがわかっていない」と反発。そして16日未明、2度目となる最大震度7の大地震が発生し、それまでにダメージを受けていた建物などが次々と倒壊、多くの方が犠牲になってしまった。

▲被災した南阿蘇村の模様(2016年4月22日)

 もし、安倍総理や河野太郎防災大臣の指示通りに全員が屋内に待避していたら、犠牲者はもっともっと増えていたことだろう。屋外や車中泊していたことで、倒壊する建物の下敷きにならずにすみ、難をまぬがれた人がいたことは間違いありません。

 もし櫻井よしこ氏の言う通り、中央政府が、「緊急事態条項」を発し、有無を言わせぬ絶対的権力を手中にして、安倍総理や河野防災担当大臣の「指示」に強制力が伴っていたら、県知事はもちろん反論できず、被災住民は公権力に逆らうことができずに屋内待避を強制され、命を落としていたことであろう。「緊急事態条項」がどれほど危険で櫻井よしこ氏の主張がどれほど間違っているか、火を見るより明らかである。

 また、15日から熊本県庁内の対策本部で政府と被災地の連絡調整を担っていた松本文明内閣府副大臣は、食事として差し出されたおにぎりに対して「こんな食事じゃ戦はできない」と文句を言い、物資配送の滞りについて、「物資は十分に持ってきている。被災者に行き届かないのは、あんたらの責任だ。政府に文句は言うな!」と地元自治体の職員に怒鳴り散らした。被災地だけでなく、国民の怒りが爆発。松本氏は20日に交代となったが、事実上の更迭であるとみられている。

 「緊急事態条項」は、総理大臣が「地方自治体の長に対して必要な指示をする」ことができ、国民は「国その他公の機関の指示に従わなければならない」と義務づけている。櫻井よしこ氏のように、もし、今回の震災時に緊急事態条項が適応されていたとしたら、今回の松本文明副大臣のような、傲慢で、強権的なふるまいをする閣僚がいても、「緊急事態条項」のもとでは、中央政府が独裁的な強権をふるうのが当然なのですから、更迭もされないであろう。そもそも情報が統制され、国民に事実が伝えられる可能性はきわめて低くなる。仮に報道があっても、政府批判はできなくなる。何人たりとも、公権力への従属を強いられるのだから。自由も人権も圧殺されてしまう。

 櫻井よしこ氏のような人物は、現実が見えていないか、普通の人々の自由と人権が圧殺される世界が望ましいと本気で思い込んでいるか、どちらかなのだろう。ぜひとも、被災地の現実を直視した上で、緊急事態条項の危険性を多くの方々に知っていただきたく思います。

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「自称「ジャーナリスト」の櫻井よしこ氏が、熊本・大分大地震のさなかに「緊急事態条項」創設を主張!熊本・大分大地震は「最初から国が前面に出て」「事態に対処することができたであろうと思われる」と大放言!」への1件のフィードバック

  1. あのねあのね より:

     最近、伊豆諸島の群発地震で体育館に避難していた人から直接話を聴くことができた。屋内避難は家がつぶれたり、体育館といえども天井からモノが落ちるおそれがあって怖いとのことでした。報道される地震も10回に1回くらいとのことで、ずっと揺れているまさに群発地震であったとのことでした。また、体育館への避難では、夜間消灯はされず、仮設トイレは臭いの問題で離れたところにあるために、トイレが近い年寄りが(被災者の言葉のままです)オムツをするのを非常に嫌がるのだそうです。島でもブロック塀が倒れ、倒れた塀の家ではない近所のお子さんが無くなり、双方の家族が居辛くなって島を出て行かれたそうです。被災他への自衛隊の支援も一ヶ月で終わったそうで、ボランティアは手癖が悪い人がいるので健康な被災者をまず災害復興に使うべきだそうです。
     安倍晋三や櫻井よし子はパニックに乗じて、一気に自分たちや仲間の支配を強める制度に改変するショックドクトリンを行おうとしているだけだ。『大分大地震のさなかに「緊急事態条項」創設を主張!』というのはショックドクトリンそのもので、人心の不安が大きいほど効果は大きい。いつ終わるかもしれない地震は絶好のチャンスととらえている筈だ。『悪者』を作り上げターゲットにして大勢で批判するというのも手口だが、今回は自民党政権なので早速民進党の議員をターゲットにした。これも、典型的な手口ではある。
     《神話が国家になったのが日本》で負け戦を続けたのが戦前の日本だ。昭和天皇は生きていて人の形をしている神様である現人神とされ、日本は神国なので負けないとされていた。日本軍に於ける上官の命令も現人神である昭和天皇自信の命令とそれていた。その“神話が国になった神の国の神様の命令で負けたのである。”櫻井よしこ氏が主張する、《最初から国が前面に出て》《事態に対処する》というのは、負け戦が続いた第二次大戦時の大日本帝国の大本営による現実を無視したやり方そのものである。負けたという“嫌なこと”は無かったこととして認めずに、勇気有る精神論で勝とうとしたイカレた戦法をとったのが当時の大本営で、弾が飛んでこない本土の楽な所で戦場に縁が無いエリートが“勇ましい”命令を下したのだ。
     安倍晋三や櫻井よし子がやろうとしていることは、戦前の日本を復活させて国連の敵国条項を適用させようとしているとしか考えられない。さらに負け戦となり何度負けても同じ過ちを繰り返して負け続けた故事に習った《神話が国家になったのが日本》復活で今度は本格的に国を滅ぼすのが目的のようだ。

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